
Oasis Credit: Simon Emmett
アラブ首長国連邦、インドネシア、イスラエル、ベルギー、フランス、イタリア、カナダ…オアシスのトリビュート・バンドは世界中に存在し、本物の再結成で、ビジネスは急成長中だという。英ガーディアン紙は、世界各地の「リアム」「ノエル」らにインタビューしています。
■ベルギー・リエージュ Maine Road
マッテオ・“リアム”・テルツィ(39歳)
結成は2018年。バンド名は、オアシスが1996年にマンチェスターのメイン・ロードで行った象徴的なライヴにちなんで名付けた。昼間はチョコレート工場で働いている。リアムになりきることは、かなり自然にできているよ。歌っていない時は、完全に動かないで観客を見つめている。ドキュメンタリー『Supersonic』で、彼は人々が熱狂しているのを見るのが大好きで、“自分はこの一部になる必要はない”と考えて、ただ音楽に集中していると言っている。ベルギーではフランス語かフラマン語を話す人が多く、地元のアーティストは妥協案として英語で歌うことが一般的。僕はイタリアで育ち、僕たちのノエルはベルギーで育ったた。オアシスの曲を歌う時、言語は関係ない。感情や情熱が、あの独特な繋がりを生み出すんだ。
■フランス・マルセイユ Osiris
アレックス・“リアム”・ランキュレル(37歳)
2020年に結成した。ベース奏者は、1993年にマルセイユでチャンピオンズリーグを制した元サッカー選手のエリック・ディ・メコ。彼は他の友人たちとバンドを組んでいたが、AC/DCのようなものが多く、オアシスのバンドを始めたかったんだ。僕の声はリアムほど腹を立てているようには聞こえないと思うよ。仕事で毎日英語を話さなければならないので、歌詞を覚えるのは難しくない。
クリス・“ノエル”・チェザーリ(41歳)
ノエルはいつも僕のアイドルだった。彼のギターパートは複雑ではないが、声がかなり高音なので、そちらの方が難しい。オアシスが再結成しても、予約はそれほど増えていない。おそらくフランスではブリットポップがそれほど人気がないからかもしれれない
■イタリア・ミラン The Boys in the Bubble
マット・“ノエル”・オルシーニ(36歳)
僕たちは、3つのオアシスのカヴァーバンドの残党から結成したので、今ではイタリア全土をカバーするベスト・オブ・バンドのような存在なんだ。
クロード・“アラン・ホワイト”・デヴィ(47歳)
イタリアではトリビュートバンドは曲名や歌詞から名付けられることが多い、例えば“Supernova”や“Columbia”など。The Boys in the Bubbleは『Don't Believe the Truth』の1曲目“Turn Up the Sun”の歌詞から取っている。ポール・サイモンから名付けたわけではないよ!
アンディ・“リアム”・ローラ(33歳)
リアムになるには、声、服装、スタイル、ツイート、態度がすべて。英語を話すのは簡単ではないけれど、リアムの真似をすればいいだけなので、英語で歌うのはそれほど難しくない。
■カナダ・トロント Parklife
ディーナ・“リアム”・ペットコフ(28歳)
女性にしてはかなり声が低いので、“She's Electric”のキーを変えただけ。リアムもライヴでは歌わない曲ですしね。心配だったのは、誰かを殴らなきゃいけないかな?ってことでした。みんな面白がって、ステージで本当にリアムになりきってると思ってくれています。オアシスが好きな女性もいますが、彼らは完全に兄弟バンドです。観客の約75%はバケットハットをかぶった男たちで、ガールフレンドを連れてきています。
アレックス・“トニー・マッカロール”・スピアーズ(28歳)
オアシスのドラムパートには過小評価されている部分がいくつかある。“Wonderwall”はクールだけど、ほとんどの曲はリンゴ・スターっぽい感じ。ライヴでは、リアムのタンバリンが主役になる。まあ、ドラマーは本質的に使い捨てだからね。ノエル・ギャラガーも早くダンスバンドに入りたいと言っていた。ドラムマシンをセットするだけで済むからね。私たちがブラーのカヴァーバンドじゃないことに誰かが腹を立てる日が来るのを、まだ待ってるよ。
■アラブ首長国連邦・ドバイ Faux-asis
フィル・“リアム”・ハンソン(41歳)
バンドを結成したのは2017年。マンチェスター出身だけど、ドバイには11年住んでいる。外国人コミュニティは大きいし、イギリス人もかなりいるんだけど、音楽シーンはあまり盛り上がっていない。インドやフィリピンのバンドがヘヴィメタルを演奏しているか、商業的なハウスバンドが“Sweet Child o’ Mine”をやっていたり、ブルーノ・マーズををやっていたりしている。僕らのお客さんは、20代、30代、40代のイギリス人で、少し飲みすぎてブリットポップを懐かしむためにやってくる。リアムはまさに自然の力のような存在なので、ただその流れに身を任せるだけだよ。衣装を着てサングラスをかけると、さらに気分が乗ってくるんだ。
アダム・“ノエル”・オニール(31歳)
最初のライヴは20人の観客だった。1年後には、ドバイセブンズで5万人の観客を前にヘッドライナーを務めた。ギターはノエルと同じものを使っているけどれ、歌っていないときは口を閉じるのを忘れないようにしないといけない。僕はグラスゴー出身なので、彼のようには歌えないから。
■インドネシア・ジャカルタ MagicPie
ガマル・“ノエル”・ナセル(42歳)
僕はミレニアル世代だけど、僕たちの観客はZ世代。ノエルのB面曲、例えば“(It’s Good) To Be Free”の歌詞をすべて歌い、リアムの“sunshiiines”を真似する子供たちを観れるのは素晴らしいよ。元々は1997年のライヴDVDにちなんでThere and Thenという名前だったんだけど、発音が難しかったので、インドネシア語の発音を反映し、Mejikpayに変えた。今は英語の発音でMagicPieだよ。ブリットポップはストーン・ローゼズ、パルプ、ブラーと共にインドネシアの音楽シーンに入ってきた。オアシスは兄弟の対立とブラーとの対立で観客を奪った。僕はブラーも好きだけど、グレアム・コクソンのように演奏するには高い技術が必要。僕たちは“Magic Pie”も演奏しない。それもまた難しすぎるから。
■イスラエル・テルアビブ Oasisrael
マイケル・“リアム”・リブマン(39歳)
僕たちの初めてのライヴは2018年のショッピングモールだった。みんな大興奮だった。彼らは僕たちがオアシスをカヴァーしていることに気づかず、僕たちのオリジナル曲だと思っていたからね。リアムになりきる秘訣は“どうでもいい”という気持ちを持つこと。ヘブライ語に“ āraś”という言葉があって、これは“威勢の良さ”と訳せるかもしれない。僕たちの直前のライヴは、トリビュートバンドのフェスティバルで2000人の前でやった。主催者に“観客にビールを投げてもいい?”と聞いたら、“好きなようにやっていいよ”と言われたよ。オアシスが再結成を発表した日、ラジオ局やテレビ局からインタビューの依頼が殺到した。本当にすごかった。今、この勢いは止まらない。まるでセックスみたい…みんなが本物を待つ中、僕たちは前戯のようなものだよ。
アサフ・“ノエル”・エヤル(40歳)
初めて『(What’s the Story) Morning Glory?』を聴いたのは10歳の時で、それ以来大ファンになった。みんなは単に曲を聴きに来るのではなく、ショーを見に来る。ノエルの服、例えば赤と白のペンフィールドのジャケットなんかを真似している。同じギターやストラップも持っているし、『Definitely Maybe』の地球儀もある。マイケルはリアムそっくり。彼はいつもリハーサルに遅れてくる。彼が覚えていなければならないのはタンバリンだけなのに、たいていそれも忘れてしまうんだ。