
The Rock and Roll Hall of Fame and Museum
誰がどうやってロックの殿堂入りアーティストを決めているのか? ロックの殿堂財団の会長を5年間務めるジョン・サイクスは米ビルボード誌の新しいインタビューの中で、投票プロセスについて語っています。
選考委員会は30人で構成されており、経営者、アーティスト、批評家からなる多様なメンバーが参加しています。各委員は年に2組の推薦を行うことができます。一部重複はありますが、サイクスは年間40~50組のアーティストが推薦されると説明しています。選考委員会の委員長リック・クリムは、会議前にすべての委員に連絡を取り、各委員が推薦を検討しているアーティストを把握し、会議であまり重複しないようにしているという。
選考委員会では、推薦されたアーティストを対象にした投票が行われ、最も多く票を得た14組のアーティストがパフォーマー部門のノミネート者となります。
その後、投票権を持つメンバー約1,200人による投票が行われ、7組の殿堂入りアーティストが選出されます。
サイクスによると、選考委員会も投票権を持つメンバーも、年月を経て進化してきたという。サイクスはこう話しています。
「私が毎年、投票権を持つメンバーを見る際に重視しているのは、進化し続けるロックンロールのサウンドを反映しているかどうかです。
音楽が変わり、アーティストが変わり、サウンドが変わったため、今日の投票権を持つメンバーたちは、ロックの殿堂が最初に設立された1986年当時とは異なるものでなければなりません。候補に挙がっているアーティストを理解している投票者の集まりが必要なのです。
(殿堂入りの)資格を得るには、少なくとも25年前に曲をリリースしていなければなりません。2000年です!2000年にリリースされた音楽を理解している投票者の集まりが必要なのです。過去5年間、選出対象のアーティストを反映させるため、多くの投票者を入れ替えました。
(その“多くの”の具体的な数字を求められれたシークスは)100人を超えています。
今年の投票でアウトキャストが非常に高評価を得たのは、その結果が表しています。サウンドガーデンやホワイト・ストライプスも同様です。これは、選考対象のアーティストを反映した良い選考ができている証拠です。もっと良くしなければなりません。ロックンロールは決して止まらないので、進化し続ける必要があるのです。
同時に、ジョー・コッカー、チャビー・チェッカー、シンディ・ローパーも選出された点で、非常にバランスが取れていると感じています。私たちが目指しているのは、特定のロックンロールのスタイルに偏らないバランスの良い投票体制を維持することです。…ロックンロールを構成する多様なサウンドを理解している投票体制が必要なのです」
サイクスによると、現在の選考委員会のメンバーの約70%が、彼が5年前に就任した当時から委員会に在籍しているという。任期に関して厳密なルールはないという。
一方、投票権を持つメンバーは、歴史家、殿堂入りメンバー、音楽業界の関係者で構成されています。サイクスによると、投票権を持つメンバーは5年前と比べて若年層、女性、有色人種の割合が増えているという(ただし、米国外出身者は増えていない)。
過去に殿堂入りしたアーティストも投票権を持っています。サイクスは、1,200人の投票メンバーのうち何人がロックの殿堂入りメンバーなのかについては明言を避けましたが、「過去40年間で約400人が殿堂入りしています。その多くが今も投票権を持っています。アーティストにとっては、これは同業者の集まりです。私たちは、こうしたアーティスト自身が投票することが投票体制の基盤であるべきだと考えています」と述べています。なお、投票権を持つメンバーは、2年連続で投票しなかった場合、リストから削除されるという。
毎年、ファンはロックの殿堂入りしてほしいノミネート者に投票できます。今年はファン投票の上位7組のうち5組がロックの殿堂入りを果たしました。ただし、ファン投票で1位だったフィッシュや3位のビリー・アイドルは選ばれませんでした。
ファン投票は本投票とは別物ですが、ファン投票上位のアーティストには、約1,200人の投票権を持つメンバーによる殿堂入り投票の際に「ファン投票」として1票投じられます。ファン投票は全体の1,200票のうちのたった1票に過ぎませんが、それでも重要な理由があります。サイクスはこう話しています。
「時には10票や20票の差がアーティストの殿堂入りを左右することもあるので、その1票が重宝されることもあります」
また、ファン投票の結果は委員会メンバーに影響を与える可能性があります。「私たちは常にファン投票の結果をノミネート委員会と共有しています」とサイクスは話しています。
ただ、サイクスはファン投票に過度の重きを置きたくないと考えています。
「一般の意見を反映させる素晴らしい方法ですが、強力なファンクラブや活発なサポーターグループを持たない、価値のあるアーティストもいます。ファンクラブのロビー活動によってロックの殿堂に選出されることを私たちは望んでいません。
私たちは慎重に選ばれた選考委員会と、投票権を持つメンバーのグループを持っており、最もふさわしい殿堂入り候補を選ぶ責任を負っています。それがこのシステムです。…最終的には、ジャーナリスト、アーティスト、経営者、専門家たちが、これらのアーティストが文化に与えた影響や、それに続くアーティストたちに基づいて決定しています」