ブルースの伝説的ギタリスト、
バディ・ガイ(Buddy Guy/88歳)は、ライアン・クーグラー監督&マイケル・B・ジョーダン主演による話題のホラー映画『Sinners』の終盤に、高齢のブルースミュージシャンとして登場します。ガイは米Varietyのインタビューの中で、重要なカメオ出演のオファーを受けた経緯を明かしています。
「彼らがシカゴの僕のクラブに来たんだ。驚いたよ。彼らは“サミーという役を演じて欲しいんです”と言ったんだけど、僕は“ええっと”と返した。僕は高校の教育を受けていないので、長い脚本を読むのは得意じゃない。読み書きは覚えたよ、B.B.キングみたいなもので、速くはないけど、時間をもらえれば覚えられる。でも年を取ると、覚える力は衰えるからね。ブルースを生かし続けるために役立つことなら、何でもやるし、何でも試すよ。僕は“自分がその役に十分かどうかわからないけれど、やってみる”と言った。うまくいけばいいし、だめでも少なくとも試したと言えるからね。
映画についてはあまり詳しくない。15年ほど前にトミー・リー・ジョーンズと少しだけ映画を作ったことがある(2009年のミステリー・スリラー映画『エレクトリック・ミスト 霧の捜査線』)。こういう機会が巡ってきたら、ブルースのためにやるんだ。
今では衛星放送以外でブルースを流すラジオ局はほとんどない。僕が学んだ年配のミュージシャンたちはもうこの世にいない。僕が若かった頃は、AMラジオ局では、みんなのレコードが流れていた。ゴスペルやジャズ、ブルースがあって、みんなライトニン・ホプキンスが誰なのか知っていた。でも今は、教えなければ誰も知らない。“誰?マディ・ウォーターズって誰?”って感じだよ。僕の孫たちも21歳になるまでブルースについて何も知らず、僕がクラブにいるときに初めて聴いて“おじいちゃん、そんなことできるなんて知らなかったよ!”と驚いていたよ。
だから、次の世代の白人や黒人の子どもたちがブルースを聴いて、今あるいろんな音楽やイギリス発のブルースロックとは違う、ずっと前に生まれたブルースのことをもっと知ってもらえるように、僕は100%サポートしようとしている。マディ・ウォーターズやB.B.キングは生前に“もし俺より長生きしたら、ブルースを生き残らせるように努力しろ”と言っていた。
だから、ブルースのことを少しでも多くの人に伝える何かがあるのを見ると、とても嬉しくなる。君がインタビューの依頼をくれたとき、僕は“ぜひやろう”と即答した。ブルースを生かし続けるためにできることは何でもやりたいと思っている。僕はそのためにいるんだ」
Q:この映画は、新しい世代にブルースを生き残らせるというあなたのミッションをさらに推進するものになりそうですね。あなたはその役割を立派に果たしています…
「そういう言葉を他の誰かから聞けるのは特に嬉しい…誰かが“なかなかいいと思うよ”と言ってくれるとね。
B.B.キングがジョン・リー・フッカーと一緒に曲を作った話を思い出す。1テイクで終わったそうで、ジョン・リーは椅子から飛び上がって“これだ!”と言ったそうだよ。でも、僕はそうは言わない。自分が良い仕事をしたかどうか分からないから。今でもライヴで演奏するとき、時々こう言っている。“僕は町で一番じゃないけど、一番になるまで頑張るよ”と。僕は観客の顔を見る。もし眉をひそめていたり、僕の演奏で心が動かなければ“良い仕事はできなかった”と自分に言い聞かせている。時にはちょっとしたテクニックを駆使して、笑顔を見かけると“いい音を出せたんだな”と思うんだ。
今も僕より上手いギタリストはたくさんいる、正直に言っているんだ。時々、若い人たちが新しいフレーズを弾いているのを見ると、“70年もギターを手にしてきたのに、どうしてキングフィッシュ(クリストーン・“キングフィッシュ”・イングラム)やジョニー・ラングのような若い子たちがやっているあのフレーズを見つけられなかったんだろう?”と思うことがあるからね。
僕はこの音楽を生み出した人たち、ソン・ハウスやフレッド・マクダウェルなどから学んだ。彼らは音楽を愛して演奏していただけで、まともな生活を送れていなかった。中には日雇いの仕事をしている人もいた。僕自身もそうだった。1967年には、シカゴで夜に音楽を演奏しながら、昼間はレッカー車を運転していたんだ」
Q:シカゴのクラブでたくさん演奏していますが、昨年はフェアウェル・ツアーを終えたんですよね?
「いやいや、“フェアウェル・ツアー”と入れたけど、僕は、ちょっと延期されたフェアウェル・ツアーみたいなものをしている。今年が終わったらそう言うかもしれないけどね。でもまだ大きなフェスティバルには出ている。ボビー・ラッシュやウィリー・ネルソンと僕は“89歳と90歳の現役の最後の世代”と呼ばれていて、それが僕に“そこに戻ってもう少し演奏した方がいいよ、自分よりも年上でまだ立っている人は誰もいないんだから”と言わせているんだ。B.B.キングは亡くなる4、5年前から車椅子だったけど、僕はまだ松葉杖も使っていない。だから、せめてもう1年は続けたいと思っているんだ」
Q:今、自分が映画スターだと受け入れられますか?
「自分から“映画スターだ”なんて言わない…でも、君のような人からそう言われるたびに、鳥肌が立つよ」