ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)が自分のヴォーカル能力に疑問を持ち、自身のバンドを結成することに躊躇していた時、ソロ活動をするように説得したのは、ペダルエフェクターの名門メーカー、エレクトロ・ハーモニックスの創設者であるマイク・マシューズだったという。マシューズ本人が米Guitar Worldの新しいインタビューの中で語っています。
2人が出会ったのは、ブレイク前のヘンドリックスがカーティス・ナイト&ザ・スクワイアーズで演奏していたときで、マシューズはロングアイランドのライヴハウス、Highway Innでのライヴの宣伝を行っていました。
マシューズはチャック・ベリーをその会場にブッキングしていましたが、ベリーのエージェントはザ・スクワイアーズも出演させるよう強く主張したという。マシューズはこう振り返っています。
「彼らが何者なのか、知りませんでした。チャック・ベリーは一晩に2回の公演を行い、最初の公演の後、私が入場料の集計のために中に入ると、カーティス・ナイト&ザ・スクワイアーズが演奏していました。
チャック・ベリーのバックを務めていたギタリストのスティーヴ・ナップは私のところに駆け寄ってきて、“おい、このギタリストを聴いてみてくれ。こいつは本当にすごいんだ。ジミー・ジェームズ(※若き日のジミ・ヘンドリックスが名乗っていたステージネーム)っていうんだ”と教えてくれました。彼の演奏が気に入りました」
2人はその後、友人となり、マシューズは定期的にニューヨークのヘンドリックスを訪ねたという。ヘンドリックスは「安宿ホテル」に滞在していました。マシューズは、こう続けています。
「彼はピンクのカーラーで髪をセットしていて、2人でバンドのドラマについて話していた。彼のライヴを見に行った時、 休憩中に彼が私のところにきて、“マイク、もうやめるよ。自分のバンドを作りたいんだ。自分の書いた曲を演奏したいんだ”と言っていた」
マシューズは「自分の書いた曲を演奏するなら、君が歌わなきゃだめだ」と重要なアドバイスを返したという。
それに対してヘンドリックスは「それが問題なんだよ、マイク。僕は歌えないんだ」と答えたという。
マシューズは考え直すよう彼を促し、こう言ったと振り返っています。
「ボブ・ディランやミック・ジャガーを見てみろよ。彼らは歌わないが、素晴らしい“フレーズ”を奏で、人々から愛されている」
そして「マイク、君の言うとおりだ」とヘンドリックスは答えたという。
ヘンドリックスはその後、マイクの前に立ち、ロック史上最も重要なアルバムのいくつかをレコーディングしました。マシューズの励ましが、彼を成功へと駆り立てたのかもしれません。