
drafts of Mr Tambourine Man lyrics - Photograph: Julien's Auctions
ボブ・ディラン(Bob Dylan)がゴミ箱に捨てた「Mr. Tambourine Man」の歌詞の初期の草稿がオークションに出品され、50万8000ドル(約8000万円)で落札されました。落札予想価格は40万ドルから60万ドル(約6300万円~約9500万円)でした。
1964年3月、ロック・ジャーナリストのアル・アロノヴィッツが目を覚ますと、ボブ・ディランがソファで眠っており、ゴミ箱には「Mr. Tambourine Man」の歌詞がくしゃくしゃに丸められて捨てられていました。
22歳のディランはアロノヴィッツの自宅で一晩かけてポータブル・タイプライターで新曲を書き、推敲を重ねた後、その初期の草稿を捨て、友人のソファでくつろいでいました。
それから61年。アロノヴィッツがゴミ箱から救い出し、子供たちに渡したこの歌詞の初期の草稿も出品されるオークションが1月18日に米テネシー州ナッシュビルにて、ジュリアンズ・オークション主催で開催されました。当日は、ディランが所有した60点のアイテムが出品され、この草稿はそのうちの1点でした。
2005年に亡くなったアロノヴィッツの書類、写真、オーディオテープの250箱を三年間かけて調べた結果、2024年にこの歌詞の初期の草稿を発見した息子のマイルズ・アロノヴィッツは、発見の経緯について、英ガーディアン紙にこう話していました。
「父は何も捨てなかったし、僕たちは“Mr. Tambourine Man”のストーリーを知っていたんだけど、父はそれを失くしてしまった。父にとってとても大切なものだったんだけど、どこにあるのか分からなくなっていたんだ」
アロノヴィッツのアーカイブにあったこの曲の3つの草稿を見ると、ディランが「bootheels」を「feet」に、「magic」を「priceless」に置き換えていることが分かります。また、歌詞を削除したり短くしたり、新しい節を後の草稿に挿入したりもしています。
マイルズはこう続けています。
「意識の流れがそこにあるように感じます。草稿からは、それぞれの言葉がいかに慎重に練り上げられていたかもわかります。草稿に書き入れられたり、消されたりしたディランの言葉を目にすると、まるでアーティストが曲を作っている時に肩越しに覗き込んでいるような気分になります。ボブ・ディランの頭の中で何が起こっていたのかを感じることができるのです」