ジューダス・プリースト(Judas Priest) は37年前の1988年に、当時カイリー・ミノーグやリック・アストリーなどを手がけてチャートを独占していたプロデューサー・チーム、ストック・エイトキン・ウォーターマン(SAW)とコラボレーションしました。レコーディングを行いましたが、この録音は結局リリースされず、お蔵入りになっています。SAWの一人、ピート・ウォーターマンはデイリー・スター紙の新しいインタビューの中で、録音した曲を「僕たちが手に入れることのなかった最大のヒット」と呼び、楽曲が日の目を見ないことを「今でも悲しく思う」と語っています。
プリーストは1988年にフランスのレコーディングスタジオでSAWと手を組みました。このコラボレーションで録音されたのは、スタイリスティックス「You Are Everything」のカヴァー、SAWが書いた楽曲「Runaround」「I Will Return」の計3曲だったと言われています。
これらの楽曲は公式にリリースされたことはありませんが、YouTubeにはプリースト版の「You Are Everything」とされる音源が投稿されています。
ウォーターマンは新しいインタビューの中で、プリースト版「You Are Everything」を「僕たちが手に入れることのなかった最大のヒット」と呼び、こう続けています。
「マネジメントは、僕たちがアーティストを支配するのではないかと非常に心配していた。これは世界中でナンバーワンになるだろうが、ジューダス・プリーストを殺すことになる、とね。ジューダス・プリーストのセッションは素晴らしかっただけに、今でも悲しいよ」
ロブ・ハルフォード(Rob Halford) は2022年の自伝『Biblical』の中で、SAWの楽曲を「素晴らしい」と称賛し、「ポップとメタルの素晴らしい出会い」と表現しましたが、最終的にはバンドはリリースを望まなかったという。
「もし、最も筋金入りのメタルファンたちが、俺たちが“ポップな駄作”を作っていることに嫌気が差して、俺たちのライヴに来なくなったら、それは俺たちのキャリアにとって致命的な打撃となっていただろう。俺たちは結局、怖気づいてしまったんだ。
もし35年近く経った今、俺たちがそれらの曲をリリースしたら、最も筋金入りのメタルファンたちも“知ってるか?あのSAWの曲は本当に素晴らしいぞ!”と言ってくれるんじゃないかと俺は思いたい」
また、ハルフォードは2024年、英ガーディアン紙のインタビューの中で「コラボレーションは誰のアイデアだったのですか?」という質問に、こう答えています。
「俺がゲイであることを前面に押し出したものだった。ストレートな男だったらあり得ないような、俺のアイデンティティに由来するものがある。そのひとつがストック・エイトキン・ウォーターマンとの冒険だった。
俺がプリーストが好きなのは、決してノーと言わず、常に挑戦すること。パリに数日間行ったんだけど、SAWがどうやって音楽を作っているのかを見れたのは特別なことだった。スタイリスティックスの“You Are Everything”や、彼らがその場で作ったのを何曲か演奏した。俺たちは存分に楽しんだが、戻ってきたときには、疑念ではなく、保全の気持ちが芽生えていた。あの時、もしこれらの曲を出していたら反発を受けただろうし、そうなってほしくなかった。ピート・ウォーターマンは今でも金庫のどこかに隠している。ヘヴィな曲だったが、ストック・エイトキン・ウォーターマンのトレードマーク的な雰囲気があった」
VIDEO