2年前に重度の脳卒中を患ったが「音楽をしない人生なんて考えられなかった。もうギターは弾けないだろうと言われても耳を貸さなかった」と音楽への情熱を持ち続けた男性。ギターを片手で弾くことを独学で習得し、音楽活動を再開させる。2024年に復活ライヴを行い、2025年にはさらなるライヴを計画しています。英BBCが特集しています。
スコットランドのインヴァネス在住の男性で、4児の父であるトニー・ロメイン(49歳)は以前から地元で定期的にライヴを行っていました。2022年、体調不良を感じながらも、彼は数回のライヴを強行しました。
「ライヴの翌日は休養日だったので、ソファに座ってテイクアウトを注文した。テイクアウトの料理が届いた時には、体を動かすのが難しくなっていたけど、ただ疲れていて体調が悪いだけだと思っていた。まさか脳卒中とは思いもしなかったよ。
みんなが寝る時間になったとき、僕はもう少しそこにいると言って横になった。次に気づいた時には、まったく動けなくなっていた。声を上げようとしたけど、声も出ないことに気づいた。一晩中そこに横たわっていて、目は覚めていたので“一体何が起こっているんだ?”と思っていたんだ」
翌朝早く、トニーの妻が夫を発見し、すぐに救急車を呼びました。しかし、医師たちは脳卒中の原因となった脳幹の血栓を取り除くことはできないと家族に告げました。
「僕が入院した日、家族は医師から、僕が明日はここにいないかもしれないと言われたそうです。僕は呼吸困難に陥り、チューブが体に出し入れされていた」
トニーの脳卒中は非常に深刻な状態であったため、数週間にわたり、インバネスのレイグモア病院で集中治療室(ICU)と脳卒中病棟で治療を受け、チューブで栄養を摂取しなければなりませんでした。その後、RNIコミュニティ病院に移り、さらに5ヶ月間のリハビリと理学療法を受けました。
リハビリの当初の目標は、再び歩けるようになることだけでしたが、彼自身はすでにギターを弾く方法を考えていました。
「理学療法士が最初に僕に言ったのは、とにかく起き上がれるようになってほしいということだった。僕は“どうすればいいのかわからない”と言うと、彼女が手伝ってくれて、最終的にはベッドの端に座れるようになった。それが始まりだった。でも正直に言うと、入院した初日から音楽のことを考えていたんだ」
「音楽をしない人生なんて考えられなかった。もうギターは弾けないだろうと言われても耳を貸さなかった。自分の中には“君たちが間違っていることを証明してやる”という気持ちもあったかもしれないが、とにかく演奏を再開しなければならなかったんだ」
その後、体の回復が進むにつれ、まだ左手と腕が動かなくなっていたにもかかわらず、ギターをどう弾くのか考えるようになったという。
「どうやったらできるのか、まったく見当もつかなかった。ギターの先生に習うわけにもいかなかったけど、いくつかのテクニックを理解すると、あとはそれを練習するだけなので、楽になった」
最初に再学習した曲は、ビートルズの「Eleanor Rigby」で、自分にとって演奏しやすいようにアレンジをシンプルにしたという。ほどなくトニーは昔の曲を覚え直すだけでなく、新しい曲にも取り組み、2024年8月には「Standing Stone」という曲をストリーミングサービスでリリースしました。同じ月には、インヴァネスにあるローズ・ストリート・ファウンドリーで30分間のステージに立ち、2年ぶりにライヴを行いました。
「本当に疲れたよ。最後に車椅子から立ち上がったとき、足が震えていた。でも、体力はどんどんついている。次のライヴでは、1時間半、あるいは45分を2セットに分けて行いたいと思っているよ」
トニーは今後のライヴは、他の人々を支援することも目的としているとも話しています。脳卒中後のリハビリを支援してくれたチェスト・ハート・アンド・ストローク・スコットランドのために、今後数か月にわたって募金活動を行う予定で、次のライヴの収益は同市の慈善団体Oxygen Worksに寄付する予定です。
「入院中、諦めてしまった人たちを見て、とても悲しくなった。気持ちはよく分かる。辛い経験だけど、誰にも諦めてほしくない。この状況を乗り越えられることを知って欲しいんだ」
以下はパフォーマンス映像ほか