ロックの殿堂が「ロック」をより広義に定義するなら「音楽の殿堂」に名称を変更すべきだという意見に殿堂の会長は改めて否定　その理由は？

ロックの殿堂が「ロック」の解釈をより広義に定義するようになった今、その名称を「ミュージック・ホール・オブ・フェイム（音楽の殿堂）」と変更すべきだという声が大きくなっています。ロックの殿堂のジョン・サイクス会長はvultureの新しいインタビューの中で、名称変更を改めて否定しています。

「それはロックンロールの意味を理解していない人がいるからだと思います。50年代の原点に戻れば、それがすべてでした。ミッシー・エリオットが言うように、それはガンボ（※アメリカ南部発祥の料理。ヨーロッパやアフリカなど様々な文化圏から移民としてやって来た人々によって融合した料理、一つの鍋にいろいろな文化と歴史が詰まった料理）だった。それがロックンロールと呼ばれるようになっただけです。ですので、“音楽の殿堂に変えるべきだ”と言われても、ロックンロールはすでにその領域をほぼすべてカバーしています。名称を変更するよりも、ロックンロールがどこから来たのか、そしてそれが本当に何であるかを人々に伝えるのに役立っています。一度その話を聞けば、彼らは理解してくれます。

このことを伝えるのに最もふさわしい出来事は、数年前に私の親友であるジェイ・Zが殿堂入りを果たしたときのことでした。私はとても興奮しました。しかし、彼は私にこう言ったのです。“ロックは死んだ。ヒップホップ殿堂と呼ぶべきだ”と。私は“ヒップホップはロックンロールだ”と言うと、彼は“いや、そうではない”と言いました。私は“もっとうまく説明しなければなりませんね。リトル・リチャード、オーティス・レディング、チャック・ベリーといったアーティストたちはロックンロールの礎を築きました。長年にわたるサウンドを振り返ってみると、これらのアーティストは結局のところヒップホップに影響を与えたのです”と言いました。ジェイ・Zはためらいながらも、授賞式には出席しました。それによって、ロックンロールはすべての人に開かれていることを伝える役割を果たせたと感じました」

またvultureはサイクス会長に、まだロックの殿堂入りを果たしていないミュージシャンについて、具体的に尋ねています。

●The B-52's

「名前が挙がったことがあります。アーティストとして乗り越えなければならないハードルが2つあります。まず、30人のノミネーティング委員会のメンバーを通過しなければなりません。次に1,200人の一般投票者に支持してもらわなければなりません。彼らはただの街角の人々ではありません。ボノが投票し、ポール・マッカートニーも投票します。彼ら自身が殿堂入りを果たしています。非常に豪華な殿堂入りの顔ぶれです。彼らの殿堂入りを熱心に訴える声は耳にしていますが、まだ候補者リストに載っていません。しかし、いつか実現すると思います」

●ソロアーティストとしてのフィル・コリンズ。

「彼はミーティングで何度も話題に上りました。フィル・コリンズのような素晴らしいアーティスト、他にも4人か5人挙げられますが、彼らに何が起こっているかというと、委員会が“彼はすでにジェネシスで選出されている”と言うことがあるのです。ソロ・アーティストとしても素晴らしいフィルが候補者リストに載らないのは、何らかの形で選出されていない人物がいるためで、載せるべきアーティストが山ほどいるからです。

私は、それはフィル・コリンズを入れない言い訳にはならないと思っています。彼は素晴らしいアーティストです。2回選出されているアーティストは27人います。オジー・オズボーン、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ポール・サイモン、ビートルズ全員です。私は投票者ですが、スティングはソロアーティストとしても選出されるべきだと強く思っています。私は何度も彼を推薦し、私は委員長も務めています。これは、一部の人間だけで決定される組織ではないことを示しています。人々はこうした投票に一生懸命取り組み、激しく戦います。フィルはふさわしいと思いますよ」

●アル・ヤンコビック

「会話の中で話題に上ったことがあります。彼は天才です。素晴らしいヴァージョンを作ってきましたが、正直に言うと、彼が候補者リストに近づいたことは一度もありません」

●ピクシーズ

「話題に上ったことがあります。ピクシーズに情熱を持っているグループがいます。ウォーレン・ジヴォンも同じで、実際、ある年に候補者リストに載りました。私はウォーレンに熱い思い入れがあるし、彼もいずれ入るでしょう。ピクシーズも多くの支持を集めています」

●ジョー・コッカー

「多くの人が推薦していますし、私も支持していますが、一度も選ばれたことのないアーティストの1人です。彼は殿堂入りを果たせていませんが、私は彼が殿堂入にふさわしい人物だと思っています」