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米国 ギターを購入する女性が急増 メーカーや楽器店も女性層を意識した展開を行う その理由を特集

2024/12/11 14:39掲載
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Taylor Swift
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ギター界は長年にわたり男性優位の世界で、女性にとってはあまり魅力的なものではなかったと、女性ギタリストたちは語っていましたが、その構造は変わりつつあるという。ギターを購入する女性が急増しており、メーカーや楽器店もここ数年、女性層を意識した展開を行っています。米ビルボード誌は女性プレイヤー増加の理由を特集しています。

特集によると、米国の楽器店に女性がいると「男たちからいつも冷たい視線を浴び、そこに女の子がいることは、ナンパされたり、(そこ違う、そこも違うとか)ダメ出しされる運命にあった」(ギター奏者/ベーシストのシャーリーン・ケイ談)という。

ヘイルストームのギタリストであるリジー・ヘイル(Lzzy Hale)は、16歳の時に男性の先生からレッスンを受けようとした時、その先生は彼女の母親に「君の娘を教えたいが、伝統的に女性はギターを続けようとしないので、時間を無駄にしたくない」と言ったと振り返っています。(ヘイルによると、母親は彼を叱りつけたという)。またブルース・ギタリストのスー・フォーリーが80年代にバイカー・バーでキャリアをスタートさせた頃は「男たちが“おっぱいを見せろ!”と騒ぐだけだった」と振り返っています。

しかし、全米楽器商協会のジョン・ドラックによると、「歴史的にギター演奏の世界は男性が中心でした。しかし、パンデミック以降、その数字は急速に変化しています」と述べています。

新型コロナウイルスのパンデミックの間、自宅に閉じ込められていた人々の中でギターを弾きたいと思った人たちは、オンラインで新しいギターを購入するようになり、これは業界の売り上げを押し上げました。また、実店舗では誰にも相談できず、いわゆる「ダサい男たち」に絡まれたり、適切な対応も受けられなかった女性たちもギターをオンラインで購入するようになりました。

Fender Playアプリによると、2020年の新規プレイヤーの45%が女性で、2019年から15%増加しました。2023年はその数が49%に増加しました。

300店舗を展開する米国の楽器小売チェーン「ギター・センター」は、カタログや店舗のウィンドウで女性プレイヤーを特集したり、女性を前面に押し出したイベントを数多く開催するなど、企業文化の改善に取り組んでおり、ギター・センターのコンテンツ、アーティスト、イベント、ソーシャルメディア担当ディレクターであるマリア・ブラウンは「ギター・センターは、スキルレベルや性別に関係なく、すべての人を対象としたお店です。お客様が何を試奏や購入しようとしているかをサポートするオープンな環境である必要があります」と語っています。

フェンダーもギブソンも最近のキャンペーンでは女性を起用しており、H.E.R.やスーザン・テデスキ、セイント・ヴィンセント、ミランダ・ランバートなどは近年シグネチャーモデルを発表し、ギブソンは2022年にリジー・ヘイルを初のブランドアンバサダーに任命しました。

そして、何よりも常に圧倒的な存在感を放っているのはテイラー・スウィフトです。ギター弦メーカー、ダダリオ社の創設者兼取締役会長であるジム・ダダリオは、彼女の影響で「多くの若い女性たちがギターを手にするようになった」と述べています。

楽器販売データの分析を行っているThe Music Tradesの編集長ブライアン・T・マジェスキーによると、テイラー・スウィフトに影響を受けた女性ギタリストは、「ここ10年間で女性ギタリストの数が増加傾向にあることを示す豊富な事例証拠」の一部であるという。

ソーシャルメディアの影響も大きいという。オンライン楽器販売会社Reverbのシニア・ソーシャルメディア・マネージャーであるマロリー・ニーズは「今はYouTubeやTikTokの動画、信頼するクリエイターを通じてテクニックを向上させることができます。こうしたエコシステム全体がオンライン上に匿名で存在しており、基本的に批判されることはありません。私がギターを学んでいた当時は、決してそうではありませんでした」と述べ、ギブソンの最高マーケティング責任者であるエリザベス・ハイドは、多くの女性がYouTubeやInstagramをギター演奏のための「安全な場所」と捉えているのに対し、楽器店は「威圧的な要素」があると付け加えています。