Kankawa Nagarra - Photograph: Australian Music prize
働きに出された牧場でカントリーミュージックやロックンロールを知り、ストリートミュージシャンの演奏を偶然聴いてブルースに恋に落ち、40歳でギターを始めた、オーストラリアのワルマジャリ族の長老であり、ブルースミュージシャンの
カンカワ・ナガラ(Kankawa Nagarra) 。現在80歳の彼女が2024年にリリースしたデビューアルバム『Wirlmarni』が、ニック・ケイヴなどを抑えてオーストラリアの最高音楽賞<オーストラリアン・ミュージック・プライズ(AMP)>を受賞しました。賞金5万豪ドル(約500万円)を手にしています。
AMPは「芸術的価値に完全に焦点を当て、その年に最高のアルバムをリリースしたオーストラリアのミュージシャンに金銭的報酬を与え、露出を増やすこと」を目的としています。今年で20年目を迎えるこの賞は、オーストラリアで最も権威のある音楽賞とみなされており、ミュージシャン、評論家、業界関係者からなる審査委員会によって選考されます。過去の受賞者には、コートニー・バーネット、アヴァランチーズなどがいます
“オリーブ・ナイト”や“バンダラル・ンガドゥ・デルタの女王”としても知られるナガラは、オーストラリア先住民のブルース、カントリー、ゴスペルを歌うワルマジャリ族の長老であり、教師、人権擁護者、環境活動家としても知られています。
彼女は親元から引き離され、キリスト教の宣教施設で聖歌隊とともに賛美歌を学び、その後に働きに出された牧場でカントリーミュージックを聴き、そしてある日、蓄音機から流れてきたロックンロールを知ります。そして、ストリートミュージシャンの演奏を偶然聴いてブルースに恋に落ちました。初めてのギターを購入したのは40歳になってからでした。
彼女はワルマジャリ語と英語の両方で歌い、ヒュー・ジャックマンの「バック・オン・ブロードウェイ」公演のツアーを含め、世界中で演奏してきました。
デビューアルバム『Wirlmarni』は、西オーストラリア州北部の僻地にあるワルマジャリ族のコミュニティでライヴ録音され、夜の虫や鳥の鳴き声などの自然の音や人々の音をバックに奏でられるアコースティックギターとヴォーカルによる12曲のトラックが収録されています。
AMPの受賞をナガラは「感激し、誇りに思う」と語りました。
「私は人里離れた(西オーストラリア州の先住民コミュニティである)Wangkatjungka出身で、過去には否定的な側面ばかりが注目され、人々は、私の故郷の美しいポジティブな側面を見る機会がほとんどありません。この賞はWangkatjungkaの人々、特に私がロールモデルとなることを願っている学校や子供たちに大きな誇りをもたらすでしょう。
私は音楽には責任が伴うものだと感じています。自然を大切にすることは責任であり、文化を守ることも、その全体的な健全性を保つための責任です。これらすべてはつながっており、私はそれをライフワークとしています」
音楽以外では、ナガラは1960年代にワルマジャリ語辞書の開発に携わり、また、先住民コミュニティにおける若者の自殺や薬物乱用、特に胎児性アルコール・スペクトラム障害に対する認識を高める活動も行っています。
AMPには今年、Amyl and the Sniffersの『Cartoon Darkness』、Nick Cave and the Bad Seedsの『Wild God』、Grace Cummingsの『Ramona』、Dirty Threeの『Love Changes Everything』、Dobbyの『Warrangu; River Story』、Hiatus Kaiyoteの『Love Heart Cheat Code』、Audrey Powneの『From the Fire』、のRowena Wiseの『Senseless Acts of Beauty』もノミネートされていました。
■パフォーマンス映像
VIDEO
■『Wirlmarni』
VIDEO