Sometimes When We Touch - The Reign, Ruin and Resurrection of Soft Rock
“ヨット・ロック”(日本でいうAOR的な音楽)の新しいドキュメンタリー『Yacht Rock: A Dockumentary』が米ケーブルテレビ放送局HBOで11月29日に放送されました。米テレビ局ABCは、監督や関係者に取材し、ヨット・ロックを特集しています。
この映画で監督のギャレット・プライスは、ヨット・ロックのアーティスト、ヨット・ロックのファンである現役ミュージシャン、そして2005年にこのジャンルの名称を考案したパロディ・ウェブ・シリーズの制作者へのインタビューを組み合わせています。
プライスはこう話しています。
「この音楽は、僕たちが望もうが望むまいが、僕たちの生活のサウンドトラックなのです。食料品店、薬局、診療所、エレベーター、両親の車など、僕たちの生活のあらゆる場所で流れています。この音楽はそこにあるのが当たり前なので、それを当然のことのように思っていました。僕は、そういった人々がこの音楽を再発見してくれることを期待して制作しました」
では、具体的に誰がヨット・ロックは作ったのでしょうか? この映画の専門家たちは、TOTO、マクドナルド、ケニー・ロギンス、ドゥービー・ブラザーズ、クロス、スティーリー・ダンが「ヨット・ロックの始まりの原初のうねり」であると主張しています。クリストファー・クロスの「Ride Like the Wind」、スティーリー・ダンの「Reelin’In the Years」、TOTOの「Rosanna」などの曲を思い浮かべてください。
映画製作者たちによると、少なくともイーグルス、ホール&オーツ、ジミー・バフェット、フリートウッド・マックなどは、定義に完全に当てはまらないため、ヨット・ロックではないと主張しています。
もう少し具体的な定義はどうでしょうか。『Quantum Criminals: Ramblers, Wild Gamblers, and Other Sole Survivors From the Songs of Steely Dan』の著者アレックス・パパデマスは、「ヨット・ロックを聴いているかどうかを判断するひとつの方法は、マイケル・マクドナルドの声が聴こえるサウンドかどうかだ」と説明しています。
またクエストラヴは、アル・ジャロウ、ポインター・シスターズ、ジョージ・ベンソンなどのアーティストを挙げ、ヨット・ロックの定義をより制限のないものにする扉を開き、このジャンルは白人アーティストに限定されていないと主張しています。
ヨット・ロックは1970年代後半にチャートで一時期人気を博しますが、このドキュメンタリーでは、その衰退にはMTVが大きく影響したと主張しています。ヨット・ロックのアーティストたちは、視覚的な空間へと移行することができず、またその意思もありませんでした。
その時代が終わると、ヨット・ロックは嘲笑の的となり、映画やドラマ、アニメと、あらゆる作品で揶揄されるようになりました。一例として、映画『40歳の童貞男』では、登場人物がマイケル・マクドナルドの曲を延々と繰り返し流して、家電店の同僚たちを困らせています。
プライス:
「ポップカルチャーの中で常にジョークのネタだったと思う。僕は“楽しい映画を作りたいが、誰かをからかうような映画にはしたくない”と心に決めていました」
監督はこの映画のために、スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンに、このジャンルについてのインタビューを依頼しましたが、フェイゲンは「くたばっちまえ!」と言って電話を突然切ったことがありました。
プライス:
「映画はほぼ完成していた。スティーリー・ダンの音楽を除いてはね。数か月間、映画は放置された状態だった。“この音楽が手に入らなければ、この物語をどうやって伝えればいいのかわからない”と思っていた。驚いたことに、ついにドナルド・フェイゲンから連絡があって楽曲使用の許可が下りたんだ。彼と直接会ってインタビューをしたら、この瞬間を迎えられているかどうかわからないよ」
この音楽がヨット・ロックという名称で呼ばれるようになったのは、ずっと後のことです。現在はThe Yacht or Nyacht Podcastを率いているJ.D.ライズナーとスティーヴ・ヒューイによるコメディ・シリーズの短編映画によって、この名称が急速に広まり、定着しました。
ヒューイ;
「ある種の内輪ネタのジョークが、突然世界的な広がりを見せたようなものなんだ。根底にあるのは僕たちがこの音楽を愛しているということ。僕たちは確かにこの音楽をからかっているけれど、同時に、人々にこの音楽が、本当に本当に素晴らしく、しっかりとした、よく練られた音楽なんだということを知ってほしいとも思っている」
ライズナー:
「ヨットで聴くと良い音がするからヨット・ロックと呼ばれているのではなく、確かにそうなんだけど、最高級のヨットのように、巧みに作られているからヨット・ロックと呼ばれているんだよ」
このドキュメンタリーでも指摘しているようにヨット・ロックは今でも笑いを誘うことがありますが、忘れてはいけないのは、新世代のリスナーが見過ごされていた名曲を再発見するのに役立った、ということでsy。米ビルボード誌は「ヨットロックのジョークはもう古い」と断言しています。
以下はトレーラー映像
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