オリジナル・メンバーがいないのにバンド名の旗を掲げていることが多い中、80年代のキング・クリムゾンを演奏する新バンド
BEATは
キング・クリムゾン(King Crimson)の名称を使用していません。実際、
エイドリアン・ブリュー(Adrian Belew)は「その名前を使おうと考えたことすらなかった」という。それはなぜか? Guitar Worldの新しいインタビューの中で語っています。
「僕はロバート(フリップ)ことをとてもよく知っている。彼はキング・クリムゾンを自分のものだと考えているし、それは当然のことだ。でも、ロバート抜きではキング・クリムゾンではないと気づくまでには何年もかかったけどね。
彼がリーダーシップやビジョンという面でバンドにもたらしたもの、そして、サウンドスケープや高速ピッキング、ガムラン・ギター、爆発的なソロ・サウンドなど音楽的な貢献をすべて考えた場合、彼はバンドのとても大きな役割を担っている。僕はそれをやろうとも思わない。
“今は僕たちがキング・クリムゾン”と言うのは、そのブランドを少し冒涜することになると思う。でも、こう言えるだけの力はある。“見てよ、バンドの半分がここにいるから、これは正当なものなんだ”ってね」
トニー・レヴィン(Tony Levin)は名称について考えることさえしないという。「まず第一に、キング・クリムゾンとして活動しているときでさえ、キング・クリムゾンとは何かなどと考えないんだ(笑)。それは他の人に任せている」
ステージには登場しないものの、
ロバート・フリップ(Robert Fripp)の熱意、そして積極的な協力は、このプロジェクト全体にとって不可欠なものだという。
BEAT結成のきっかけとなったのは、40周年を迎えた『Discipline』でした。ブリューは2009年以降はキング・クリムゾンのメンバーではありませんでしたが、なぜクリムゾンは、このアニヴァーサリーにあわせ、過去のしがらみを振り払い、バンドを再集結させないのか?と疑問を抱いていました。
フリップは丁重に断りましたが、ブリューが好きなように舵を切ることを祝福しました。さらに彼はバンド名を提案しました。
「ロバートが言ったんだ。“僕はDisciplineという名前をいろんなことに使っている。レコードレーベルにもね。君とトニー、それにパット・マステロットは、13年前から毎年8月にやるバンド・キャンプにThree of a Perfect Pairという名前を使っているよね。じゃあ、Beatと呼ぶのはどうだろう?”とね」
スティーヴ・ヴァイ(Steve Vai)はフリップの協力についてこう話しています。
「ロバートはとても寛大で、とても親切で、とてもよくコミュニケーションをとってくれた。僕たちは、さまざまな興味深いことについて、何度も意見を交わした。例えば、僕が“In Neurotica”の様々なヴァージョンについて“ある時はこうで、ある時はああで、とやっているよね。そのことについて少し教えてほしい”と言ったら、彼はとても寛大ですべてを説明してくれた。でも最後に“どれもやらないでくれ。君のをやって!”と言ったんだよ。素晴らしいよね。
メールでやりとりをし、何度か会った。彼に会いに出かけたのは2日ほど。僕は彼の音楽的な才能が本当に大好きなんだ。もちろん、彼という人間、彼の個性もすべて好きだよ。僕らは2人ともちょっと風変わりなところがある。彼は先日、とても美しいことをやってのけた。僕らは変則スケールの素晴らしさについて話していたんだけど、彼が使っている美しいスケールを送ってくれたんだ。
変則スケールを使えば、通常のスケールではできないコードの特定の使い方が可能になる。彼は、その理論の裏付けをすべて説明しながら、まさにフリップらしい変則コードへのアプローチを説明してくれた。
あの人は魔法使いだよ。ロバートがデモ演奏をしてくれたプライベートな小さなビデオがある。それは“Neurotica”で使うコードなんだけど、僕はヴァイらしい方法で滑らかにするつもりだ。彼は、この音楽が再解釈され、ブレンドされ、喜びを持って演奏されることを本当に望んでいる。そうしたくないミュージシャンがいるだろうか?」
ブリューはフリップの協力についてこう話しています。
「とても大きな意味を持っている。何年も前にどうして始まったのかはわからないけど、僕とロバートが不仲だとか、あれこれと噂されていた。一つ一つ遡って、言われたことのすべてに異議を唱えることができる。人々は信じたいことを信じればいいが、ロバートと僕は33年来の親しい友人だ。彼はかつて僕の家に住んでいたこともある。ある年には109日間もここに住んでいた。僕は毎日起こったことをすべてカレンダーに記録している。僕たちの親密さは、多くの人が経験する以上のものだよ」