スティーリー・ダン(Steely Dan)の
ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)に“ヨットロック”(日本でいうAOR的な音楽)について尋ねるのはやめた方がいいようです。新しいドキュメンタリー『Yacht Rock: A Dockumentary』のために監督がこのジャンルについてのインタビューを依頼しましたが、フェイゲンは「くたばっちまえ!」と言って電話を突然切ったそうです。監督は米Peopleの取材に、電話を切られたことは「100%本当」だと認めています。
『Yacht Rock: A Dockumentary』は、ヨットロックのミュージシャンやプロデューサーにスポットライトを当て、彼ら自身の視点から、そのサウンドの起源、進化、衰退について描いた新しいドキュメンタリー。この作品は米ケーブルテレビ放送局HBOで11月29日に放送される予定です。
監督は『Woodstock 99: Peace, Love, and Rage』、『Daisy Jones & the Six』、『Love, Antosha.』のギャレット・プライス。
プライスは、フェイゲンにインタビューを依頼した時のことを、こう振り返っています。
プライスはフェイゲンに「このジャンル」について語ってくれないかと尋ねました。
フェイゲン:「ジャンルはなに?」
プライス:「えーと、ヨットロックです。」
フェイゲン:「ああ、ヨットロックね。じゃあ、こうしよう。くたばっちまえ!」
そして電話は突然切れました。
プライスは、この会話と電話を切られたことは「100%本当」だと主張しています。
このような劇的な終わり方にもかかわらず、フェイゲンのマネージャーはすぐにプライスに電話をかけ直し、このドキュメンタリーでスティーリー・ダンの楽曲6曲を使用する許可を与えたとのこと。
プライスはこう振り返っています。
「フェイゲンのあの派手なリアクションは、ウィンクだと思う。“わかってるよ。この(ヨット・ロック”という)名称が自分たちの音楽にとってどれほど重要なのかは理解している。でも、僕がそれについてどう感じているかは、はっきり知らせておくよ”という感じ。それが彼らしさなんだよ」
『Yacht Rock: A Dockumentary』は、1970年代のソフトロック(AOR)の隆盛と、ここ10年間の再評価を追ったもので、
マイケル・マクドナルド(Michael McDonald)、
スティーリー・ダン(Steely Dan)、
ケニー・ロギンス(Kenny Loggins)、
TOTO、
クリストファー・クロス(Christopher Cross)など、このジャンルの主要アーティストのプロフィールも紹介しています。
このドキュメンタリーには、先述のバンドやミュージシャンが出演するほか、サンダーキャット、クエストラヴ、マック・デマルコ、デ・ラ・ソウルのプリンス・ポールなどや、音楽プロデューサー、ジャーナリスト、評論家のインタビューも収録されています。
以下は公式のあらすじより
「この映画は、ヨットロック・シーンのミュージシャンやプロデューサーにスポットライトを当て、彼ら自身の視点から、そのサウンドの起源、進化、衰退について詳しく説明しています。このサウンドは、その高品質なプロダクション、ソウルフルなヴォーカル、そして爽やかでエモーショナルな歌詞で高く評価されました。
マイケル・マクドナルド、クリストファー・クロス、ケニー・ロギンスなど、当時を代表するミュージシャン、そしてロックジャーナリストや学者たちは、この音楽はジャズ、ファンク、R&Bの影響を受けたものであると定義し、そのクロスオーヴァーの起源と広がりを説明しています。
MTVの登場と洗練されたミュージックビデオの出現により、このジャンルは衰退しましたが、1990年代にはヒップホップ・アーティストがヨットロックをサンプリングし始め、この音楽は新たな聴衆を獲得し、その優れたソングライティング技術の高さが再評価されるようになり、またコメディアンたちによる遊び心のあるからかいの対象ともなりました。
この映画は、その時代のサウンド、レコーディングセッションやパフォーマンスの貴重なアーカイブ映像、ユーモアに富んだ内省的なインタビューで満ち溢れており、そのシーンの主要人物たちと、彼らが自分たちが創り出していることすら知らなかったそのジャンルを愛情を込めて取り上げています」
以下はトレーラー映像