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TOTO「Don't Stop Me Now」にマイルス・デイヴィスがゲスト参加した経緯 スティーヴ・ルカサー語る

2024/11/13 17:55掲載
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Miles Davis
Miles Davis
TOTOの1986年アルバム『Fahrenheit』に収録されている「Don't Stop Me Now」にはマイルス・デイヴィス(Miles Davis)がゲスト参加しています。このコラボレーションはどうようにして実現したのか? その経緯についてスティーヴ・ルカサー(Steve Lukather)は2018年の『Rock Candy』誌のインタビューで語っていました。MusicRadarはその記事を紹介しています。

マイルスは1985年アルバム『You’re Under Arrest』の制作に取り組んでいた際、TOTOのキーボード奏者スティーヴ・ポーカロ(Steve Porcaro)が共作した、マイケル・ジャクソン「Human Nature」をレコーディングする計画を立てていました。

マイルスは、ポーカロとデヴィッド・ペイチ(David Paich)が「Human Nature」で使用したシンセサイザーのサウンドをどのように作り出したのかを知りたがっていました。そこでマイルスはシンセサイザーの音を学ぶためにペイチの家を訪問しました。そこでポーカロ、ペイチ、ルカサー、そしてジェフ・ポーカロ(Jeff Porcaro)と会いました。

「マイルスはポップ・アルバムを作っていた。彼は“Human Nature”が大好きで、自分のヴァージョンをレコーディングする前に、ペイチとスティーヴにしか作れないシンセサイザーの音を学ぶためにペイチの家にやってきたんだよ。

もちろん、僕たちは皆、恐ろしいマイルス・デイヴィスの神話を聞いていた。怖いマイルス・デイヴィスのね。でも、彼は最高にクールな男だった。彼は僕たちを気に入ってくれた。痩せっぽっちの白人少年たちをね!

僕とペイチが書いた“Don't Stop Me Now”という曲があるんだけど、それは(1960年のマイルスの名盤)『Sketches of Spain』のような感じの曲だった。だから、もし彼にこの曲を聴いてもらえれば、もしかしたら演奏してくれるかもしれないと思ったんだよ。

ペイチは自宅にグランドピアノを2台置いていたので、それでマイルスのために曲を演奏したんだ。ペイチが1台のピアノで、僕がもう1台でね。演奏が終わると、マイルスはただ一言、“いいね”と言ったんだ」

その後、マイルスがジェフ・ポーカロのホーム・スタジオに彼らと一緒に行ったときに契約が成立したという。

「ジェフが持っていた奇妙な絵をマイルスが目にして、“欲しい”と言ったんだ。ジェフは“その絵をあげるから、僕たちの曲で演奏してよ”と言うと、マイルスは笑ってOKと言ったんだよ。

そして、彼は演奏してくれた! 俺たちのために演奏してくれた! 曲の終わりまで演奏し続けてくれた。僕たちは“録音を止めるな! 録音を止めないでくれ!”と言った。だから、最後のほうでフェードアウトしている部分に、マイルスがビバップを少し演奏している部分があるんだよ。

マイルスが僕らの音楽を気に入ってくれたのは、僕らにとって驚きだった。

そのあと、そのアルバムを聴いた後、マイルスは僕に電話をかけてきて、自分のバンドに参加してほしいと頼んできたんだ。僕は思ったよ。“まじかよ、マイルス・デイヴィスだぞ!”ってね。

僕は“マイルス、明日ツアーに出発するんだ。それに、なぜ僕なんだい? ジョン・マクラフリンとか他にも素晴らしいギタリストが沢山いるのに”と言うと、彼は“彼らは素晴らしいけど、俺は君のロックンロールが気に入ったんだ!”と言っていたよ。

でも、断らざるを得なかった。自分のバンドを裏切るわけにはいかなかった。マイルスには“お電話をいただき光栄です。このことは墓場まで持って行きます”と伝えたよ」