Miles Davis & Mike Stern (Image credit: Clayton Call/Redferns/Getty Images)
ジャズ・ギタリストの
マイク・スターン(Mike Stern)は1980年代初頭、
マイルス・デイヴィス(Miles Davis)のバンドに抜擢されて注目を集めました。スターンはリック・ベアトの新しいインタビューの中で、デイヴィスのバンドに参加することになった経緯、そしてデイヴィスの楽曲にスターンのあだ名に由来したものが生まれた経緯について語っています。
デイヴィスは、サックス奏者の
ビル・エヴァンス(Bill Evans)からスターンのサウンドを紹介された後、彼をバンドに迎え入れることを決めました。
スターンは、デイヴィスでの最初の出会いについて、こう話しています。
「マイルスはギタリストを探していた。僕はその日、ビリー・コブハムと(ニューヨークの名門クラブ)ボトムラインで一緒に演奏するために街にいた。ライヴを始める直前にビル・エヴァンスが公衆電話から僕に電話をくれたんだ。
彼は“今夜、君の演奏を聴かせるために、ある人を連れて行くつもりだ”と言っていた。僕は“マイルスじゃないよね?”と尋ねると、彼は”そうだよ、マイルスを連れてくるつもりだ”と答えたんだ。
僕はただ、できる限り最高の演奏をしただけ。僕はずっと下を向いていたんだけど、彼は僕の演奏をとても気に入ってくれた。
僕らが曲を演奏している最中に、彼はビリーを呼んだ。マイルスは楽屋に行って“ビリー、こっちへ来い。ギター奏者に明日、コロンビア・レコードのスタジオBに来るよう伝えてくれ”と言った。ビリーがそのメッセージを伝えてくれて、僕は“マジかよ”と思ったよ。
僕はスタジオに行って演奏した。彼はすでに出来上がっている曲にギターを加えるために、僕をレコーディングスタジオに迎えたんだ。彼は“ただ乗っけてくれればいい”と言っていた。僕は演奏を始めたけど、“マイルス、僕には(ギターが必要なようには)聴こえない。もう完成しているように感じる。君は余計なものをたくさん入れたくないよね。本当に無駄がないから、いじくる必要はないよ”と言った。すると彼は“わかった”と言った。
翌週、彼は別の曲を持っていて、僕が弾いたギターソロを気に入ってくれた。言うまでもなく、僕はとても怯えていた。
彼はギターソロをとても気に入ってくれて、それを“Fat Time”と呼んだ。それは僕のあだ名だった。初めて彼に会った時、彼は“Fat、Fatty、Fat Time!”と言っていた。当時僕は太っていたから、彼はそう呼んでいたんだ。それに、彼は僕の時間の使い方と雰囲気を気に入ってくれて、僕のグルーヴがすごくいいと言ってくれた。
録音後、ビルから電話があって“彼はとても気に入っている。この曲を“Fat Time”にするつもりだ”と言っていた。僕は“なんてこった、最高の褒め言葉だ”と思ったよ」