Stereophonic - Theo Wargo/Getty Images for Tony Awards Productions
フリートウッド・マック(Fleetwood Mac)『Rumours(邦題:噂) 』のプロデューサーは、以前から「フリートウッド・マックの物語との類似性」を指摘されていた、受賞歴のあるミュージカル『Stereophonic』の制作者を訴えています。このプロデューサーは自身の回想録の「核心」となる部分をコピーし、かなり似たものを作ったと主張しています。
『Rumours』のプロデュースを手がけたひとり、ケン・キャレイは2012年に共著者のスティーブン・スティフェルと共に、フリートウッド・マックに関する回想録『Rumours』を出版しました。
フリートウッド・マックのメンバーは『Rumours』の頃、人間関係の破綻や葛藤を経験しており、それがアルバムの感情の深さや内省的な歌詞に影響を与えました。
今年トニー賞を5部門で受賞したミュージカル『Stereophonic』は、1970年代を舞台に、架空の男女混合の英国系アメリカ人バンドがアルバムを制作する過程で生じるさまざまな緊張関係に焦点を当てています。この作品は、ブロードウェイでの公演開始以来、2000万ドル以上の収益を上げています。
以前からフリートウッド・マックの物語を彷彿とさせると指摘されており、英ガーディアン紙のライターはこの作品を「フリートウッド・マックを思わせる作品」と評し、また米Vultureのライターはこの作品を「フリートウッド・マックと『Rumours』の苦難の誕生の反響描写」と表現しています。
キャレイとスティフェルは訴状の中で、『Stereophonic』は、劇作家のデヴィッド・アジャミが彼らの作品の「核心」となる部分をコピーし、実質的に類似したものを作ったと主張しています。
訴訟では、このミュージカルが、サウンドエンジニアというバンドの外からのキャラクターの視点で進行することを指摘。また回想録には、キャレイが指示を受けてギターをテイクから消したところ、怒りを買ったという記述があるのですが、彼はその逸話もミュージカルでコピーされたと主張しています。
アジャミはミュージカルの成功により、この作品の映画化も計画しているようで、キャレイとスティフェルは、それにより、この本の将来の映画化に悪影響を及ぼしていると主張しています。
キャレイとスティフェルは『Stereophonic』の「コピー、出版、リリース、放送、上演、その他の利用」の差し止めと、損害賠償を請求しています。
先月、キャレイの主張が表面化し始めた際、アジャミはニューヨーカー誌のインタビューでその件について尋ねられました。彼はこう話しています。
「『Stereophonic』を執筆する際、私は複数の情報源から着想を得ました。その中には、私の人生における自伝的な詳細も含まれています。非常に個人的なフィクション作品を作り上げるためにです。ケン・キャレイの素晴らしい本との類似点は、意図的なものではありません」
また、Deadlineのインタビューでインスピレーションについて尋ねられた際、アジャミは次のように答えています。
「なぜ人々が“ああ、フリートウッド・マックの話だ”と言っているかは理解しています。でも私はフリートウッド・マックを知りません。彼らに会ったこともありません。言っている意味が分かりますよね? フリートウッド・マックの物語には始まりも終わりもありません。この演劇は独自の考案から生まれたものなのです」
訴状でキャレイはこう主張しています。
「この劇とフリートウッド・マック、およびアルバム『Rumours』との関連性はあまりにも明白であり、複数の報道機関が多くの類似点を指摘している。簡単に言えば、『Stereophonic』がフリートウッド・マックと『Rumours』を題材にしたものではないと主張するアジュミ氏の話は誠実さに欠けます」
英ガーディアン紙によると、アジャミは2015年、彼の番組『3C』をめぐって著作権侵害で訴えられたことがあります。この時は1970年のシットコム『Three's Company』をコピーしたと訴えられましたが、裁判官は「フェアユース」であると主張し、アジャミに有利な判決を下しました。