今回のアルバムは、芸術に対する彼女の綿密なアプローチに沿って、数年にわたり洗練されてきたものだ。最も古い曲である「Are You Mine?」と「Wish I Was」は、彼女がピクシーズの 「Lost Cities」ツアーを終えてロサンゼルスに移った直後の2011年に作曲され、元々レコーディングされていたものである。『Nobody Loves You More』のための最後のレコーディングは、伝説的なエンジニアであり親友でもあるスティーヴ・アルビニと共に2022年11月に行われ、彼はシカゴにある自身のElectrical Audioスタジオでアルバムの最後を飾る曲「A Good Time Pushed」を手掛けた。また、作品制作の過程では、ブリーダーズの過去から現在にかけてのメンバーである、マンド・ロペス、双子の妹のケリー・ディール、ジム・マクファーソン、ブリット・ウォルフォードから、ティーンエイジ・ファンクラブのレイモンド・マッギンリー、ザ・ラカンターズのジャック・ローレンス、サヴェージズのフェイ・ミルトンとエイス・ハッサンまで、さまざまなコラボレーターを迎えている。『Nobody Loves You More』はマルタ・サローニ(レディー・ガガ、ビョーク、デヴィッド・バーン、ブラック・ミディ)がミックスを担当し、ヘバ・カドリー(坂本龍一、ビョーク、ビッグ・シーフ、長谷川白紙)がマスタリングを担当した。
フロリダでの両親との冬の休暇についての「Summerland」、ウェディング・バンドによる「Margaritaville」のカヴァー「Coast」、母親の認知症についての「Are You Mine?」など、どの曲にもストーリーがある自伝的な作品であると言えるだろう。全体を通して、このアルバムはディールの比類なき芸術性を讃えるものであり、オルタナティヴ界の伝説的なバンドである、ピクシーズやアンプス、ザ・ブリーダーズにおける彼女のキャリアのハイライトを物語るだけでなく、カート・コバーンからオリヴィア・ロドリゴのような世代を超えたミュージシャンにも影響を与えた、キム・ディールの音楽の歴史における確固たる重要性を示していると言えるだろう。
■『Nobody Loves You More』
01 Nobody Loves You More 02 Coast 03 Crystal Breath 04 Are You Mine? 05 Disobedience 06 Wish I Was 07 Big Ben Beat 08 Bats in the Afternoon Sky 09 Summerland 10 Come Running 11 A Good Time Pushed