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現代のヒット曲 メロディはよりシンプルになったが音符の密度は劇的に増加 最新研究結果

2024/07/06 19:57掲載
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listening to music
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新しい研究によると、現代のヒット曲はメロディはよりシンプルに、より反復的になったが、「音符の密度」、つまり1秒間に詰め込まれた音符の数は劇的に増加しているという。この研究の共同執筆者であるロンドン大学クイーン・メアリー校のマデリーン・ハミルトンは「音楽の他の側面がより複雑になり、バランスを保つためにメロディがよりシンプルになってきている」ことや音楽消費の状況の変化を指摘しています。論文は学術誌『Scientific Reports』に掲載されています。

ハミルトンと共著者のマーカス・ピアース博士は、1950年から2022年にかけて米ビルボード誌の年間シングル・チャートでトップ5にランクインした曲を対象に調査しました。その中には、エルヴィス・プレスリーの「Heartbreak Hotel」、ビートルズの「Hey Jude」、マドンナの「Vogue」、レディー・ガガの「Poker Face」、ビヨンセの「Irreplaceable」などが含まれています。

研究チームは、メロディのピッチとリズム構造に関する8つの特徴を分析しました。その結果、メロディの平均的な複雑さは時間の経過とともに低下していることが明らかになりました。とくに1975年と2000年は大きく低下した「メロディ革命」の年で、また1996年にも小さな低下が見られました。

ハミルトンは、一つの説明として、さまざまなジャンルの台頭を挙げており、最初の低下(1975年)はスタジアム・ロックやディスコ・ミュージックが人気を博した頃に起きたと述べています。続けて、「2000年前後の落ち込みは、少なくとも部分的にはヒップホップの台頭によるものでしょう。それらのメロディは非常に特徴的だからです」と付け加えています。

ハミルトンはまた、1996年ごろの減少について、ヒップホップとも関係があるかもしれませんが、もうひとつ考えられるのは、デジタル・オーディオ・ワークステーションの台頭であると主張しています。デジタル・オーディオ・ワークステーションでは、曲の中のセクションやフレーズを簡単にループさせることができます。これによって「メロディの繰り返しの増加につながっているのではないかと考えています」と述べています。

また研究によると、チャート上位の曲は、特に2000年以降、「音符の密度」、つまり1秒間に詰め込まれた音符の数が劇的に増加していることが明らかになりました。

ハミルトンは「1秒間にたくさんの音符がある曲の場合、メロディの複雑さは制限されてしまいます。そうでない曲は、より予想外のメロディを歌ったり、より大きなジャンプをしたりすることができます」と述べています。

ハミルトンは、メロディがよりシンプルになったことについて、いくつかの可能性を提示しています。

ひとつは、以前の音楽は一握りの楽器で作られていたので、複雑さはヴォーカルによって加えられる傾向があったのに対して、現代の楽曲は多くのレイヤーや音のテクスチャーを含んでいるため、メロディはバランスを保つためにシンプルにしなければならなくなったと指摘。それは、シェフが特定の味を輝かせるために料理のスパイスをトーンダウンする方法に似ているという。

また、もうひとつの可能性として、音楽消費の状況の変化も指摘しています。ストリーミングやソーシャルメディアが普及し、リスナーが数秒だけ聴いて次の曲にスキップできる時代には、瞬時に注目を集めるフックを作らなければならないというプレッシャーが高まっているのかもしれません。結果、覚えやすく、一緒に歌いやすい、よりシンプルで繰り返しの多いメロディが好まれる可能性があるという。