ザ・フー(The Who)『Who's Next』のジャケット・カヴァーに登場する、謎のモノリス、そびえ立つコンクリート壁はどこにあるのか? 英ダービーシャー・タイムズ紙によると、長年言われていた場所ではなかったという。ジャケットを撮影した著名なアメリカ人写真家イーサン・ラッセルのドキュメンタリーを制作しているニューヨークの撮影スタッフがその場所を訪れており、ようやく最近になって正確な位置が特定されています。
このジャケットは1971年に撮影。突き出た大きなコンクリート壁にメンバーが放尿した後、ズボンのファスナーを上げているところが写されています。この写真を撮影するアイデアは、メンバーが映画『2001年宇宙の旅』について話していたことから生まれたと言われています。
ラッセルのドキュメンタリーを制作している撮影スタッフは、『Who's Next』のジャケットが撮影されたロケ地を特定できる数少ない人物であるジョン・ハーストに会いました。
ジョンはここ数年、実はこのジャケットがテンプル・ノーマントンの近くで撮影されたという真実を広める使命に燃えているという。テンプル・ノーマントンはイングランドの中央部分に位置するダービーシャー州のノースイースト・ダービーシャー地区にある町です。
ジョンは地元の新聞ダービーシャー・タイムズ紙の取材に応じて、こう話しています。
「アルバムが発売された当時、私はクレイ・クロス市議会で働いていたのですが、オフィスにいたザ・フーの大ファンが、この写真が撮影された場所を知っていると言っていました。彼はマンスフィールドから来る途中、毎日その前を車で通っていました。
私は車に小さなカメラを積んでいたので、3人でそこに行き、彼が(『Who's Next』を)持って立っている写真を撮りました。私はその後、すぐに結婚して近くに引っ越しました。それから数年間、周りが埋め立てられるにつれて、その物体がなくなるまで写真を撮り続けました」
※ジョン・ハーストが当時撮影した、同僚が『Who's Next』を持ってコンクリート壁の近くに立っている写真(Photo: John Hirst)
※ジョン・ハーストが当時撮影した、コンクリート壁が埋め立てられた後の写真(Photo: John Hirst)
ザ・フー『Who's Next』のジャケット・カヴァーに登場する、そびえ立つコンクリート壁は、ダービーシャー地区の炭鉱Bond’s Main collieryの残土の山に地滑りを防ぐために設けられた土留めでした。
現在はこの地域は農場になっており、周囲は埋め立てられ、現在見えるのはその最上部だけです。
※現在の様子(Photo: John Hirst)
※現在の様子(Photo: John Hirst)
ジョンはこう続けています。
「何年も何年もこれらの写真を見てきましたが、時々、(撮影されたのが)まったく違う場所だというファンの話を聞きます。インターネット上では、(ダラム州の)イージントンの近くだと書かれています。私がウィキペディアを変えたとしても、誰かが元に戻してしまうのです。
もう一人の昔の同僚は、最初の写真を撮ったときにそこにいたのですが、そのことを友達に話しても誰も信じてくれませんでした。
イーサン・ラッセルが出版した本にイージントンがロケ地として紹介されていたことも、それを広める要因になりました。私はロックダウン中に彼に連絡することにしました。その場所にはもう簡単には行けませんが、急いでそこに行き、残っている写真を撮り、古い写真と一緒に彼に送りました。彼に話を聞いてみると、彼はその写真がどこで撮影されたのか見当もつかないことがわかりました。彼はバンドと一緒に、あるライヴから別のライヴへと移動していただけでした」
ジョンの主張は、写真の日付がザ・フーがシェフィールドとレスターで行った公演の間であることを特定した調査によって裏付けられました。
ジョンはこう話しています。
「イーサンは、どうにかして記録を訂正したいと言って、その後、巨大なギャラリーで私の写真を見せました。そして3週間ほど前、映画製作者から突然連絡があり、インタビューと現場訪問をさせてもらえないかと頼まれました。
今は私有地なので、許可を得るために所有者を探して電話をかけ始めました。結局、何人かの農場主の間を回されましたが、私が説明するとみんなアルバムのジャケットを覚えていました。
ようやく、その農場を管理している地主に連絡がつきました。彼はその畑を見て、とても素晴らしいと言って電話をくれました。
コンクリートの塊がこれほどの熱狂を引き起こすとは思わないでしょう。写真を撮った当時は高さが14フィート(約4.2メートル)ほどあったはずですが、今は18インチ(約45cm)ほどしかありません」