Billy Joel / The Stranger
ビリー・ジョエル(Billy Joel) の50年近く前の曲「Vienna」が現在、Z世代の女性たちの間で人気だという。30歳未満の女性たちがTikTokなどで倦怠感/退屈な気分を表現するのに使っていると、英ガーディアン紙が特集しています。
あるユーザーは3月に投稿した動画に「10代の女の子はみんな、この曲に説明のつかない感情的な思い入れを持っている。理由は誰も知らない。少女時代を象徴する曲なのよ」というコメントを付け、その動画は195,000回以上も「いいね」されました。
また別の動画には「ビリー・ジョエルが“Vienna”を書いたときほど、20代の女性を理解している人はいない」というコメントが付き、424,000回以上も「いいね」されました。
この曲は1977年のアルバム『The Stranger』に収録されている曲で、シングル「Just the Way You Are」のB面曲。リリース以来数十年にわたってファンの間で愛されてきました。Spotifyで5億8200万回以上再生されたこの曲は、ジョエルの楽曲の中で3番目に多く再生された曲です。「Uptown Girl」と「Piano Man」には及ばないものの、「We Didn’t Start the Fire」や「She’s Always a Woman」を上回っています。ジョエル自身、この曲をベストのひとつと考えています。
「Vienna」がZ世代の女性たちの間で人気を博した一因について、Mel誌は以前、ジョエルのヒット曲とは異なり、この曲は何度も繰り返し流れされることがなかったため、陳腐だと思われないことが挙げられると説明。評論家のティム・グリアソンは「この曲は、私たちの人生にずっと押し付けられてきたわけではない。“Vienna”は自分で発見し、自分のものだと主張することができるものに感じられるのです」と書いています。
ガーディアン紙は「slow down, you’re doing fine(ゆっくりでいいんだ、君はうまくやれてるよ)」という歌詞は、Z世代特有の倦怠感を和らげ、ソーシャルメディアの即時性や絶え間ないニュースサイクルの中で育った若者たちに、一歩引いて考えることを思い出させてくれていると書いています。
ジョエル自身は、この曲への支持についてどう思っているのか? ジョエルはかつて、この曲の支持は、2004年に公開されたジェニファー・ガーナー主演のロマンティックコメディ『13 ラブ 30 サーティン・ラブ・サーティ』の重要なシーンで曲が使用されることに起因すると指摘しています。この映画は、13歳の少女が突如として30歳の女性になったことから巻き起こる騒動を描いたもの。「Vienna」は、両親と子供の頃の家の安らぎを求めて街を逃げ出す際に流れます。
ジョエルは、この曲はリスナーに「20代や30代で成功しようと必死になったり、アメリカン・ドリームを実現させようと必死になったり、競争に勝ち残ろうと必死になったりして、自分を追い詰める必要はない。あなたにはあなたの人生があるのだから」ということを思い起こさせるものだと語っており、ジョエルは「この映画は女の子に人気のある作品で、この曲への熱狂のほとんどは女の子から来ている。“ゆっくりでいいんだよ”という青春の歌なんだ。だから若い人たちの心に響くんだと思う」とも語っています。
ガーディアン紙は20代の女性に話しを聞いています。
「この曲はとても個人的なものだけれど、どんな理由であれ、弱さを感じている人なら共感できるはず」(20歳)
「Z世代には独特の悩みがあり、ある意味、世界はかつてないほどひどいと感じることもある。“Vienna”は何十年も前に書かれたもので、このような思いをしているのは私たちだけではないという事実を再確認させてくれる。Z世代の多くの人たちがこの曲に共感し、また私たちの親世代も共感していることを知ることは、孤独に対する解毒剤のような気がします」(23歳)
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