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チープ・トリック『In Color』の幻の97年再録音版、録音に参加したスティーヴ・アルビニが生前最後のインタビューで逸話を語る

2024/05/13 21:29掲載
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Steve Albini
Steve Albini
チープ・トリック(Cheap Trick)は1997年、スティーヴ・アルビニ(Steve Albini)を迎えて1977年アルバム『In Color』を再レコーディングしましたが、この再録音版が正式に完成&リリースされることはありませんでした。アルビニは、生前最後のインタビューのひとつで、この幻の再録音版についても話しています。アルビニが亡くなった数日後に公開された米stereogumのインタビューより。

■Cheap Trick’s In Color Re-Recording Session (ca. 1997)

「僕は長年のチープ・トリックのファンなんだ。

彼らとの最初の交流は10代の頃。彼らが(アルビニが住んでいた米モンタナ州)ミズーラに来ることになったんだけど、ツアー中のロックバンドを受け入れるのに十分な大きさのホテルが町にはひとつしかなかったんだ。僕はそのホテルに電話して“チープ・トリックのリック・ニールセンに伝言をお願いしたいのですが”と言ったら、その人は“その名前で登録されている人はいません”と言うので、僕は“じゃあ、チープ・トリックのリック・ニールセンにメッセージを残しておくから、もし彼がそこに登録したら、このメッセージを伝えてほしい”と言った。僕は、町に面白い古いギターを売っているギターショップがあるという伝言をホテルに残した。彼がギターを集めているのは知っていたからね。町のギター・ショップに57年製のストラトキャスターがあったんだけど、誰かがボディに黒いオート・プライマーを吹き付けていた。とても珍しいコレクターズギターだったんだけど、酷使されていたから、コレクター価格では売られていなかったんだ。

僕はライヴでハイになっていたから、家に帰るよりも、きょうだいの家に泊まるつもりだったので、そっちの電話番号を残しておいた。そして、僕の作戦は見事成功した。

朝の4時に電話が鳴ったので出てみるとリック・ニールセンからだった。彼にこのギター・ショップのことを話した。...後で知ったんだけど、彼らのツアー・バスがこのギター・ショップの前に停まり、彼はバスを降りて店に入り、壁からギターをつかみ、500ドルか何かを男に渡して、それを持ってドアから出て行ったそうだよ。すべての取引は30秒くらいで終わったから、彼は結局、僕の情報をもとにその店でギターを買ったんだ。僕はいい気分になった。このセッションをやる前に彼と会ったとき、当時のことを話したよ。そのやりとりの一部始終を話したんだけど、彼はまったく覚えていなかった(笑)。

レコーディングされた後、廃盤になったアルバムがあった。彼らはレコード会社の変更、マネージメントの変更を経験していた。リハビリ施設にいたこともあった。いろいろなことが重なって、彼らは僕たちがレコーディングしたアルバム全部を棄した。公平に言えば、それは彼らのキャリアのハイライトではなかっただろうね。僕たちが(1977年の2ndアルバム)『In Color』のリメイクをやった後のことだった。バンドに確認したことはないけれど、当時バンドの周りで起こっていたことに基づく僕の直感では、彼らはマネージャーとの関係やレコード会社との関係から抜け出している最中だったと思う。アルバム『In Color』には、彼らのヒット曲のほとんどが収録されていた。だから、そのアルバムをリメイクすることで、自分たちが完全に所有するヴァージョンを作り、それを使用し、ライセンスを得て、すべての収益を得ることができた。これは後にテイラー・スウィフトや他の人々たちも使った戦術だった。彼らはかなり早くから、そのようなことをしていた。

それはとてもクレイジーなアイデアに思えた。そしてそれは、彼らのその後の作品がそれほど良いものではないということを暗黙のうちに認めているようにも思えた。僕は悪い考えだと思ったし、そう言った。でも、彼らの演奏が始まった瞬間から、僕は座って聴いていてこれ以上楽しいことはないと思ったし、彼らがやってくれて本当に良かったと思っている。彼らのライヴを見たことがあるなら、それが彼らのサウンドだ。彼らはエネルギッシュなハードロック・バンドで、スタジオ盤ではそれがあまり伝わってこなかったんだ」

※このセッションでレコーディングされた音源はネットに投稿されています。


また同じインタビューの中で、アルビニが手掛けたザ・ストゥージズ(The Stooges)の2007年アルバム『The Weirdness』についても話しています。

■The Stooges’ The Weirdness (2007)

「僕の仕事の最高の喜びのひとつは、自分のヒーローである人たちに会って、一緒に楽しむことができることだ。イギー・ポップと1ヶ月間一緒に過ごすことができた、最高だったよ。“イギー・ポップに、どうなってほしいんだ?”って感じだった。僕が“まずはシャツを着ないこと。それから、信じられないくらい下品で、踊りながら手拍子を鳴らし続ける”と言うと“ああ、わかった。そうしよう。よくやっている”と言っていた。

彼はシャツを着て現れ、シャツを脱いで演奏を始めた。彼は一日中踊って、手拍子をして、みんなをやる気にさせた。昼食にはタマル(※メキシコ版ちまき)をむさぼり、夜には赤ワインを手に入れて、豪華な宿泊施設で過ごす。ストゥージズ、特にイギーと一緒に過ごすのは素晴らしい経験だった。この体験は何物にも代えがたいよ」