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AIが生成したスティーヴ・マリオットのヴォーカルの「新録音」を計画 スティーヴの子供たちとバンドメイトらが反対の声明に署名

2024/05/09 13:24掲載
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Steve Marriott (Credit: Dina Regine)
Steve Marriott (Credit: Dina Regine)
スモール・フェイセス(Small Faces)ハンブル・パイ(Humble Pie)での活躍でも知られるスティーヴ・マリオット(Steve Marriot)。現在、彼の遺産を管理するマリオット・エステートは、人工知能 (AI) が生成したスティーヴのヴォーカルの「新録音」をリリースすることを計画しているようで、これに対して、スティーヴの子供たち、そしてロバート・プラント、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモア、ピーター・フランプトン、ブライアン・アダムスなど多くのアーティストがリリースの反対を支持する声明に署名しています。米Varietyが特集しています。

Varietyによると、マリオット・エステートは、スティーヴが亡くなる2年前に結婚した3番目の妻、トニ・マリオットによって運営されており、トニはAIによる録音を許可しています。トニはスティーヴ没後に再婚しています。

リリース反対を支持する声明に署名しているのは、スモール・フェイセスのケニー・ジョーンズ、ハンブル・パイのピーター・フランプトンとジェリー・シャーリーという、かつてのバンドメイトのほか、ロバート・プラント、デヴィッド・ギルモア、ポール・ウェラー、ポール・ロジャース、ブライアン・アダムス、グレン・ヒューズらで、スティーヴの娘モリー含む4人のきょうだいも署名しています。

娘のモリーは声明でこう述べています。

「マリオット・エステートは、父スティーヴの新旧の曲を収録したAIソロ・アルバムをリリースする予定です。悲しいことに、遺された家族である、Lesley、Toby、Tonya、そして私のきょうだいたちは、遺言書がなかったため、エステートとは何の関係もありません。エステートは、父が亡くなる前の2年間だけ一緒にいて、その後再婚した継母によって管理されています。

私たちは、ハンブル・パイやスモール・フェイセスのバンドメイトとともに、父の名を汚すことになるこのアルバムの発売を阻止したいと考えています。私たちの世代で最も偉大なヴォーカリストのひとりとして知られ、生々しいヴォーカルを聴かせてくれた父が生きていてこのことを知ったら、絶対に心を痛めるでしょう。これはお金のためであって、芸術や鑑賞のためではありません。

亡くなったアーティストには何の権利もなく、AIの登場によって、創造性や芸術を含め、この世界のあらゆる自然が本当に滅びようとしています。これは、このようなことに反対するキャンペーンの始まりなのです」

ロバート・プラントは声明のなかで「これは、僕たちがこの素晴らしい音楽の世界に旅立ったときに夢見ていたものとはかけ離れている。このような事態を傍観することはできない」と述べています。

マリオット・エステートでマネージング・ディレクターを務めるクリス・フランスは、Varietyの取材にこう答えています。

「現時点では、スティーヴ・マリオットの声をAIレコーディングする予定は確認されていません。だからといって、提案されているうちの1つとの契約が成立しないという意味ではない。(モリー・マリオットの)意見は私や彼のエステートには何の関係もありません」

スティーヴは遺書を残さずに亡くなったため、英国の法律では、スティーヴの遺産は子供たち(それぞれ母親が異なり、トニ・マリオットの子供はいない)ではなく、トニ・マリオットにすべて相続されることになっています。報道によると、両者は長年にわたって対立関係にあるという。

ハンブル・パイのジェリー・シャーリーによると、スティーヴの死後、彼の元マネージャーたちの型破りなビジネス取引が少なからず影響し、スティーヴのビジネス関係は手に負えない状態でした。しかし、その後、トニの指示のもとで、マリオット・エステートのクリスがスティーヴの資産を健全な状態にし、主にアーカイヴ盤のリリースとストリーミングによって確実に収益を上げるようになったという。

ジェリーがVarietyに語ったところによると、昨年末にロサンゼルスを拠点とするクレオパトラ・レコードからメールを受け取り、ハンブル・パイについての契約の中に、AIに関する新たな条項があったという。

ジェリーは、AIが生成したスティーヴのヴォーカルを確かめるために、クレオパトラに、レイ・チャールズによって有名になった「eorgia on My Mind」のAIヴァージョンを試すよう提案しました。その結果を、スティーヴが実際に1960年代に録音した未発表のラフ・レコーディングと比較したところ、AIの録音は「ひどいものだった」という。「誰かがスティーヴ・マリオットのような声を出そうとしているように聞こえた」。同社は彼に別の試みも送りましたが、そちらは「悪くないソウル・シンガーのようだった。スティーヴのようには聞こえなかった」という。

Varietyの取材に対し、クレオパトラ・レコードの担当者は電子メールで次のように述べています。

「スティーヴ・マリオットのAIプロジェクトに関して、私たちは彼のエステートと話し合い、彼の未完成のデモの一部をAI技術の助けを借りて完成させることにしました。しかし、私たちは最終的に、これらの録音を今のところオリジナルの形でリリースすることを選択しました。『Steve Marriott - Get Down to It 1973-1977』『Steve Marriott - Poor Man’s Rich Man 1978-1987』『Steve Marriott - Out of the Blue 1987-1991』がそれです」