劇場やコンサートの世界では、最前列の席の価格を最も高く設定し、そのアーティストの熱心なファンに早期に販売し、その後、キャッシュフローを最適化してリスクを減らすために安い席で満席にするという収益モデルが古くから知られています。ゲームや映画の世界でも似たようなモデルを使っています。
しかし、レコード業界はその逆で、アルバムがリリースされると、アーティストの音楽はすべてのストリーミングサービスですべての加入者がすぐに利用できるようになるため、熱心なファンが高価な選択肢を自分で選ぶ余地がなくなります。これは大きな機会損失であると、Spotifyの元チーフエコノミストで、起業家/弁護士/Pressing Businessの共同設立者であるフレッド・ゴールドリングは米ビルボード誌に寄稿したコラムで述べています。
ゴールドリングは、レコード業界がより収益性の高い、熱心なファン中心の未来を切り開く方法の一つはアナログレコードに目を向けることだと主張しています。ゴールドリングは、ストリーミング利用者がレコードレーベルにレコード購入者と同じだけの価値をアルバムから提供するためには、顧客ごとに5,000回以上再生ボタンを押す必要があると述べています。
現状、多くのレコード・アルバムは、最初のストリーミング配信から何カ月も経ってからリリースされています。レコードは近年、膨大な生産量に直面し、需要が供給をはるかに上回っていましたが、しかし、ゴールドリングは、小規模なレコード製造工場の台頭により、遅延時間とバックログは大幅に減少したと主張。そして、こう述べています。
「レコード業界は、後付けではなく、早期入手の機会としてレコードの先行販売を始めるべきだ。ストリーミング配信前のレコード・リリースは、希少性、独占性を生み出すことができ、その結果、音楽をいち早く聴いたり、限定ヴァージョンを所有するチャンスに飛びつく熱心なファンから追加収入を得ることができる。これはアーティストにとってもクリエイティブな面でメリットがある。アーティストの意図通りにキュレーションされた(そして、より良い音で)アルバムを作品として真に評価する可能性が最も高いのは熱心なファンだからだ。
音楽がストリーミングの海に投げ出されると、しばしば海で迷子になり、すべての利害関係者は価値あるものを失う。レコード業界は、目に見えないところに隠れているレコードの先行者利益を受け入れる時が来たのです」