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何千もの“失われた”録音が何十年もの間、人知れずに保管されたままになっているのを変えるアーカイブ・マッチング・サービス始動 ジミヘン等の音源発見

2024/04/16 15:45掲載
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Master Tape Rescue
Master Tape Rescue
何千もの“失われた”録音が、何十年もの間、古いスタジオや屋根裏部屋、図書館、倉庫などに人知れず、聴かれることなく保管されたままになっている事実をなんとかしたいと思った業界のベテランが立ち上がる。“失われた”録音物をカタログ化し、権利者とテープ所有者を審査して結びつける、一種のアーカイブ・マッチング・サービスを開始しています。名称は「マスター・テープ・レスキュー(Master Tape Rescue)」。これまでにジミ・ヘンドリックス、ザ・フー、ビリー・ホリデイなどの“失われた”音源が発見されています。

以下、「マスター・テープ・レスキュー」のプレスリリースより。

「マスター・テープ・レスキューはシンプルなアイデアです。

何千もの“失われた”録音が、何十年もの間、古いスタジオや屋根裏部屋、図書館、倉庫などに人知れず、聴かれることなく保管されたままになっています。

これらの録音は、誰かがマスターテープの返還を求めてきた場合に備えて保管されています。しかし、テープがまだ存在していることを誰も知らないため、そのような電話がかかってくることはめったにありません。非常に多くの場合、アーカイブは古いテープのため、訪問者に見せるにはちょっとクールなものとなってしまいます。スタジオの建物は長い年月の間に何度も所有者が変わることがありますが、テープの保管場所は所有者が変わっても敷地内に残っています。そのため、テープは永遠に知られず、引き取り手もなくそこに置かれています。

問題は、テープを保管しているアーカイブと、それを見つけたいと思っている人の間にある情報のギャップであることで、そのため録音は宙ぶらりんのままなのです。アーカイブはテープを捨てたくありませんが(所有権がないことが多い)、所有者を探してテープを返却する労力は金銭的に割に合いません。MasterTapeRescue.comでは、紛失したテープを探しているレーベル/プロデューサー/アーティストと、そのテープを所蔵しているアーカイブをつなげたいと願っているだけです。

MTRの解決策はこのページにあります。これらの様々なアーカイブの所蔵を単純に一覧表示し、その内容を検索可能にし、それらの録音の権利者が利用できるようにします。各アーカイブの所在は一般には匿名のままですが、テープに関する信頼できるリクエストは、リクエストに応じて各アーカイブに伝えることができます。

私たちのミッションについては、ニューヨーク・タイムズ紙をご覧ください」

米ニューヨーク・タイムズ紙では、この「マスター・テープ・レスキュー」を特集しています。

「マスター・テープ・レスキュー」を立ち上げたのは、ハリウッドの老舗スタジオ、サンセット・サウンドで働いていたブライアン・ケヒュー(キーヒュー/Brian Kehew)と音楽業界のベテランであるダニー・ホワイトの2人。

ケヒューは、過去30年にわたり、何百ものアーカイブ・レコーディング・プロジェクトでテープの転送やミックスを手がけています。また、フィオナ・アップルのアルバム『Extraordinary Machine』のプロデューサーであり、モーグ・シンセサイザーの専門家でもあります。

ホワイトは、スタジオのオーナーであり、レコーディング・コンソール・メーカーであるサウンドテクニクスの社長でもあります。

ケヒューは2020年後半、サンセット・サウンドで、ザ・フー『The Who by Numbers』のオリジナルのマルチトラックと、そのセッションでの未発表音源を見つけます。

ケヒューによると、「バンドは何年もテープを探していたのですが、ここは彼らがチェックしようとは思わなかった場所でした」という。ケヒューはこの件によって、重要なテープがレコード会社の金庫やアーティストのアーカイブといった本来の場所ではなく、「誰かの屋根裏部屋や納屋や地下室に眠っているかもしれない」という事実を浮き彫りにしたと思ったという。彼は「これらのテープを適切な人の手に戻すための障害は、常に時間と労力でした。しかし、面倒な手続きや煩雑な手続きを必要とせずに、簡単に皆をつなぐ方法があるとしたらどうだろう?」と考えて、ダニー・ホワイトと共に「マスター・テープ・レスキュー」を立ち上げました。

2人は過去6ヶ月間、様々なスタジオの保管庫やその他の所蔵品を調査した結果、魅力的な音源を数多く発見したという。その中には、未発表のジミ・ヘンドリックスのジャムセッション、ビリー・ホリデイの知られざるテープ、シカゴ・ブルースの歴史的な音源の宝庫、デヴィッド・ボウイ、R.E.M.、イギー・ポップを含むアーティストのプロフェッショナルなコンサート録音の大規模なコレクションなどが含まれているという。ホワイトは「これは氷山の一角にすぎないように感じます」と語っています。

ホワイトがこのプロジェクトに引き込まれたのは、もうひとつの歴史的な発見でした。バディ・ホリーの元プロデューサーの遺品からテープ・アーカイブの査定を依頼されたホワイトは、ホリーの20枚以上の第一世代マスターを発見しました。ホリーの作品群は2008年のユニバーサル・スタジオ火災で焼失したとされる録音のひとつでしたが、今回の発見は、すべてが火災で失われたわけではないことを示す大きなものでした。「バディのマスターのすべてではありませんが、彼の作品の大きな塊であり、状況を考えれば重要なことです。これはすべて、何年もクローゼットの中で眠っていたものです」とホワイトは話しています。

1950年代から2000年代初頭にかけてのアナログ・レコーディングの最盛期に営業していたスタジオのほとんどすべてに、アーティストやレーベルが残したテープを保管する専用のロッカーや金庫室、部屋がありました。

歴史的には、完成したアルバム・マスター(1/4インチのテープ・リールに収められ、そこから商業用コピーが製造される)が最も価値のある資産と考えられていました。マルチトラック(レコーディングの各要素を収めた、重くて扱いにくい2インチのテープリール)は通常、セッション後に回収され、レーベルに届けられます。しかし、必然的にごく一部のテープはスタジオの敷地内に保管され、アーティストやレコード会社から完全に忘れ去られることもよくありました。

サンセット・サウンドのオーナーであるポール・カマラタは、マスター・テープ・レスキューに依頼する前は、彼の2階のスペース全体がこのようなテープで床から天井まで埋まるのを見ていたという。ハリー・ジェイムズからTOTOまで、最後に数えただけで1, 500本以上のテープがあったという。最近は、レコード会社がやってきては「金鉱を見つけようと私たちのアーカイブを探し回った」という。彼は「それは自分の車を40年間整備工場に預けておいて、ある日突然引き取りに来るようなものだよ」と話しています。

■「マスター・テープ・レスキュー」によって、これまでに発見された“失われた”音源

Jimi Hendrix
The Who
Buddy Holly
Warren Zevon
Matthew Sweet
Stevie Nicks/Joe Walsh
Hank Snow
Marianne Faithful
Concrete Blonde
Rocket From the Crypt
Elvin Bishop
Chemical People
The Chambers Bros
Thelonius Monster
Neil Giraldo
など

■「マスター・テープ・レスキュー」公式サイト
https://www.mastertaperescue.com/