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自分が在籍時に書いたヒット曲を現メンバーによる“偽”バンドが演奏しているのに憤慨する音楽家 “諸刃の剣”的な異例の措置を取る【ゲス・フー】

2024/04/14 21:43掲載
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Burton Cummings - Michael Ochs Archives, Getty Images
Burton Cummings - Michael Ochs Archives, Getty Images
自分が過去にそのバンドに在籍して書いたヒット曲を、その頃とは何も関係のない現メンバーによるバンドが演奏していることに憤慨するミュージシャン。演奏を阻止するための新たな策として、自分がロイヤリティを受け取ることができなくなるものの、ライヴ会場で楽曲を演奏することを事実上不可能にするという、“諸刃の剣”的な異例の措置を取っています。

2023年10月、ゲス・フー(The Guess Who)のクラシック・ラインナップ時代のメンバーであるランディ・バックマン(Randy Bachman)バートン・カミングス(Burton Cummings)は、現在ツアーでゲス・フー名義を使用しているバンドに対して訴訟を起こしました。2人はゲス・フー名義を使用しているバンドを“バンドの名前を使ってツアーやレコーディングをしている雇われミュージシャンのカヴァー・バンド”と呼び、また、2人がまだバンドで演奏しているかのようにファンを騙していると主張。2人は2,000万ドル以上の損害賠償を求めています。

訴訟はまだ継続中ですが、カミングスは現在のゲス・フーがコンサートで演奏するのを阻止するため、自分の曲に関する特定の権利契約を解除することを選択しました。

その内訳は次のようなものです。

全米のほぼすべてのコンサート会場は、一般にPROと呼ばれる演奏権団体と契約を結んでいます。これらの団体は、楽曲が演奏されるたびに、作曲家に代わってロイヤリティを徴収しています。カミングスは自分の楽曲に関する契約を終了させることで、現在のゲス・フーがPROと提携した会場で楽曲を演奏することを事実上不可能にしました。

カミングスは米ローリング・ストーン誌の取材に応じて、こう話しています。

「偽バンドを止めるためなら何でもする。彼らは(バックマンと私の)人生の物語を持ち出して、自分たちのものであるかのように装っている。彼らはこれらの曲を作った人たちではないし、彼らが作ったように振る舞うべきではない。これは、このカヴァー・バンドがライヴをするのを止めるのではなく、私が書いた曲を演奏するのを止めるだけだ。もしこの曲を偽ゲス・フーが演奏すれば、彼らはそのたびに訴えられるだろう」

同誌によると、ゲス・フーをブッキングした会場も、バンドが適切なライセンスなしにカミングスの楽曲を演奏し続けることを決めた場合、法的な影響を受ける可能性があるという。すでにゲス・フーの次の5公演は、カミングスの行動によりキャンセルされています。

この動きはゲス・フーを抑圧していますが、カミングス自身にも大きなリスクをもたらしています。PROとの契約を解除することで、ソングライターは自分の作品のロイヤリティを受け取ることができなくなります。PROは、ライヴ・パフォーマンスに加え、ラジオ、テレビ、コマーシャル、その他の公共スペースで演奏された楽曲の使用料も徴収しています。そのため、カミングスの行為は収入の自殺行為に等しいものであり、PROとの契約が解除されたことで、彼はこれらの楽曲から収入を得ることができなくなっています。

カミングス自身も自分の決断にはリスクがあることを認識しており、「確かに私はいくらかのお金を失うことになるが、私たちは何が価値あるものかを見つけるつもりなんだ。この偽のバンドをこれ以上続けさせるつもりはない。私はいくらかお金を失うだろうが、......それらの曲がなければ名前に価値はない。彼らはどうするんだ? ゲス・フーとして演奏するが、“Share the Land”も“American Woman”も“These Eyes”も演奏できない。誰も来ないだろうね」「彼らがしてきたことは間違っていて、何年もの間、誰もそれに対して何もしなかった。しかし、私たちは今やっている。これはいくつかの前例を作るかもしれない。現実ではない他の行為もあるから」と同誌に話しています。