40年以上前に録音された
マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の未発表音源が大量に発掘される。が、そこには所有権をめぐる争いがあると英BBCが報じています。
マーヴィン・ゲイは1981年にベルギーのオーステンデに移り住み、そこでコカイン中毒から立ち直り、後に大ヒット曲のひとつ「Sexual Healing」をレコーディングしました。
マーヴィンは一時期、ベルギーのミュージシャン、Charles Dumolinの家に住んでいました。ステージ衣装、ノート、未聴のカセットテープのコレクションは、現在、Dumolinの家族の手にあります。Charles Dumolinは2019年に亡くなっています。
これらコレクションの所有権を主張するDumolin家のビジネス・パートナーであるベルギーの弁護士Alex Trappeniersは、英BBCの独占取材に応じ、法的な立場を説明しています。
「それらは42年前にベルギーに残されたもので、家族のものです。マーヴィンはそれを彼らに渡し、“好きにしろ”と言って、二度と戻ってこなかった。それが重要なんです」
BBCはAlexの許可を得て、未聴のカセットテープ・コレクションの中から、マーヴィンがリハーサルをしている様子を短時間聴いています。そこには、彼とバック・ミュージシャンが複雑なハーモニーを奏でており、そしてマーヴィンが自虐的にこう言っていたという。「テープレコーダーは入っていたか?もう2度とできるかどうかわからないぞ」。
Alexは、このカセットテープ・コレクションについて、こう説明を続けています。
「マーヴィンが歌い始めて新しいインストゥルメンタルが始まるたびに、それに番号をつけました。30本のテープを全部聴き終わった時点で、66曲の新曲のデモがありました。そのうちのいくつかは完成していて、同時期に作られたものだから“Sexual Healing”と同じくらい良いものもあります」
BBCは、このアーカイブが本物であることに疑いの余地はないと断言しています。
BBCは、当時のマーヴィン・ゲイの生活のあらゆる側面を明らかにする資料も確認しました。中には、タイプされたコンサートの進行指示書、レコード会社への怒りの手紙、新曲の歌詞の下書き、プライベートな思いが詰まったノートなどがありました。またBBCはマーヴィン・ゲイの服や衣装の棚も確認し、その中には彼がツアーで着ていた紛れもない赤いスーツもありました。
BBCによると、ベルギーには変わった法律があり、どのような財産であれ、たとえ盗んだものであっても、30年経てば完全に自分のものになると定められているという。しかし、これは知的財産には適用されません。
そのため、Dumolinの家族は、音源が録音された物理的なテープ自体の所有者になる可能性はありますが、音源自体を利用する権利はありません。
それに対して、米国のマーヴィン・ゲイの相続人たちは、理論上は音源を利用する権利はありますが、テープ自体の所有者ではないため、音源にアクセスする手段がない、ということになる可能性があります。
Alexは、何らかの妥協が必要だと考えています。
「マーヴィンの家族、(デュモリンの相続人の)手にあるコレクション、双方にメリットがあると思う。 私たちが手を取り合って、マーク・ロンソンやブルーノ・マーズのような適切な人たちを世界中で見つければ....私は提案をするためにここにいるのではなく、OK、これを聴いて次のアルバムを作ろう、と言うためにいるのです」
BBCはマーヴィンの家族に取材を申し込みました。マーヴィン・ゲイの3人の子供のうち2人の弁護士は、このベルギーのコレクションの存在を知っています。交渉が続く可能性はありますが、まだ始まっていません。
書類、衣装、録音物のコレクションはマーヴィンの家族のものであり、単純に彼らに引き渡されるべきだと考える人もいるかとは思いますが、Alexは、法的な状況はそれほど単純ではなく、彼とDumolinの家族は、「道義的には (マーヴィンの) 家族と一緒に仕事をしたい」ものの、コレクション全体を他の人に売却する権利があると主張しています。