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音について考えたい人のためのブックガイド『音の本を読もう:音と芸術をめぐるブックガイド』発売

2024/03/11 19:02掲載
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音の本を読もう:音と芸術をめぐるブックガイド
音の本を読もう:音と芸術をめぐるブックガイド
音について考えたい人のためのブックガイド『音の本を読もう:音と芸術をめぐるブックガイド』がナカニシヤ出版から3月29日発売。音と芸術をめぐる本、40冊についての書評、気鋭の論者たちが80冊以上を紹介しながら、サウンド・スタディーズの現在を検討する座談会を収録。
■『音の本を読もう:音と芸術をめぐるブックガイド』
金子智太郎 編

書店発売日:2024/03/29
ISBN:9784779517969
判型・ページ数:A5 ・ 272ページ
定価:2,970円(税込)

<内容>

音と芸術をめぐる新鮮な考えかた、語りかた、聞きかたを見つけるために――
音と芸術をめぐる本、40冊についての書評、気鋭の論者たちが80冊以上を紹介しながら、サウンド・スタディーズの現在を検討する座談会を収録。サウンド・スタディーズとサウンド・アート研究の動向、広がり、そして、その来し方、行く末を一望できる、音について考えたい人のための画期的なブックガイド

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この本は2010年以降に出版された音と芸術をめぐる著作の書評を集め、学術や批評の場でこのテーマが近年どのように語られてきたのかをまとめている。音というだけでは広すぎるので芸術という枠をつけて、編者の私を含めて22名の著者による40本の書評を集めた。〔…〕

この本の章立てはすべての原稿が揃ってから決め〔…〕多くのサウンド・スタディーズ系アンソロジーを参考にした。まず重視したのは、既存の領域のリンクである。音と芸術というテーマを一つの領域と見立て、区分して各章にするのではなく、各章を異なる領域が出会い、比較される場にしようと試みた。〔…〕

前後編に分けた座談会「音の本とサウンド・スタディーズ――音による思考と音をめぐる思考」は、本の紹介という体をとりながら、私自身はこれまで中途半端な接しかたをしてきたサウンド・スタディーズを話題の中心に据えた。〔…〕

音という視点から何かを見つめようとする思考と、音のありかたや広がりと向きあう思考が、いかにずれながら結びつくのか。そもそも両者は異なるのか。さまざまな議論が交わされた座談会で、司会を務めた私にはこうした問題意識が印象に残ったのである。もちろん、この座談会は難解な問いに頭を悩ませるだけでなく、面白い本を無数に紹介しあう楽しい時間でもあった。書評ではあつかえなかった過去の本から未刊行の本まで、学術論文から漫画、図鑑、本の映像化まで、少なくとも80冊以上の書名が並んでいる。

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<目次>

はじめに――この本の成り立ち

座談会 音の本とサウンド・スタディーズ――音による思考と音をめぐる思考【前編】

第1章  アーティキュレイション
なぜこの音があるのか、聴く私はいかに成立するのか

01 近藤譲『線の音楽』
02 サロメ・フォーゲリン『ノイズと沈黙を聴く――サウンド・アートの哲学に向けて』
03 フランソワ・ボネ『言葉と音――音響の群島』
04 ゲイリー・トムリンソン『音楽の百万年――人類の現代性の創発』
05 バーニー・クラウス『野生のオーケストラが聴こえる――サウンドスケープ生態学と音楽の起源』

第2章 口と手と諸感覚
身体の豊かな技法

06 細馬宏通『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか――アニメーションの表現史』
07 ブランドン・ラベル『口の用語辞典――声と口唇幻想の詩学と政治学』
08 ロバート・スコット『ムーンドッグ――6番街のバイキング』
09 キャロル・パッデン、トム・ハンフリーズ『新版「ろう文化」案内』

第3章 フォノグラフィ
音をいかに表現するか

10 アナ・マリア・オチョア・ゴティエ『聴覚性――19世紀コロンビアにおける聴取と知識』
11 キャシー・レーン、アンガス・カーライル『イン・ザ・フィールド――フィールド・レコーディングの芸術』
12 ジョナサン・スターン編『サウンド・スタディーズ・リーダー』
13 浜田淳編『音盤時代の音楽の本の本』

第4章 音響修辞学
音によって物語る

14 渡辺裕『感性文化論――〈終わり〉と〈はじまり〉の戦後昭和史』
15 アンドリュー・シャルトマン『「スーパーマリオブラザーズ」の音楽革命――近藤浩治の音楽的冒険の技法と背景』
16 『ピピロッティ・リスト――Your Eye Is My Island―あなたの眼はわたしの島―』
17 マシュー・ハーバート『音楽――音による小説』
18 ジェームズ・ブラクストン・ピーターソン『ヒップホップ・アンダーグラウンドとアフリカ系アメリカ文化――表層の下へ』

第5章 電気になった声の世界
ボーカロイドのオラリティとは

19 柴那典『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』
20 増野亜子『声の世界を旅する』
21 ケリム・ヤサール『電気になった声――電話、蓄音機、ラジオがいかに近代日本をかたちづくったのか 1868–1945』
22 ジェイス・クレイトン『アップルート――21世紀の音楽とデジタル文化をめぐる旅』

第6章 螺旋状の視聴覚論
「視聴覚連禱」以後

23 平倉圭『かたちは思考する――芸術制作の分析』
24 長門洋平『映画音響論――溝口健二映画を聴く』
25 ホリー・ロジャース『ギャラリーを鳴り響かせる――ヴィデオとアート–ミュージックの誕生』
26 ジャネット・クレイナック『反復されたナウマン』
27 大友良英『音楽と美術のあいだ』
28 川崎弘二、岡本隆子、小杉武久編『小杉武久 音楽のピクニック』

第7章 音の生政治学
音による管理と解放

29 ティモシー・D・テイラー『資本主義の音――広告、音楽、文化の征服』
30 マイケル・カーワン『ヴァルター・ルットマンと多様性の映画――前衛–広告–近代性』
31 スティーヴ・グッドマン『音の戦争――サウンド、情動、そして恐怖のエコロジー』
32 若尾裕『サステナブル・ミュージック――これからの持続可能な音楽のあり方』

第8章 蒐集と驚異
多種多様な思考の目録

33 ラニ・シン編『ハリー・スミスは語る――音楽/映画/人類学/魔術』
34 スティーヴ・ロデン『…私の痕跡をかき消す風を聴く――ヴァナキュラー・フォノグラフの音楽 1880–1955』
35 裵淵亨『韓国蓄音機レコード文化史』
36 デヴィッド・バーン『音楽のはたらき』

第9章 自由の雑音
実験の政治経済学

37 何東洪、鄭恵華、羅悅全編『造音翻土――戦後台湾のサウンドカルチャーの探究』
38 アンドレイ・スミルノフ『サウンド・イン・Z――20世紀初頭のロシアにおける音の実験と電子音楽』
39 アースラ・ブロック、ミハエル・グラスマイアー編『ブロークン・ミュージック(ファクシミリ版)』
40 ポール・デマリニス『ノイズに埋もれて』

座談会 音の本とサウンド・スタディーズ――音による思考と音をめぐる思考【後編】

結びに代えて――音によって歴史を書き直す

文献一覧
初出一覧

事項索引
人名索引

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<著者紹介>

金子智太郎(かねこ ともたろう)
愛知県立芸術大学美術学部准教授。美学、聴覚文化論。
主著に「1970年代の日本美術における音」『あいだ』(2022年)、“Arrangements of sounds from daily life: Amateur sound-recording contests and audio culture in Japan in the 1960s and 1970s,” in Asian Sound Cultures: Voice, Noice, Sound, Technology (Routledge, 2022) など。
担当:はじめに、座談会、各章解説、02、04、07、08、11、12、15、25、26、29、30、34、38、40 結びに代えて

秋吉康晴(あきよし やすはる)
京都精華大学・関西学院大学・関西大学等非常勤講師。メディア論、音響文化論。
主著に“Living instruments: Circuit-Bending toward a new materialism of technoculture”, Journal of Global Pop Cultures 1 (2022)、「電話は耳の代わりになるか?――身体の代替性をめぐる音響技術史」『音と耳から考える――歴史・身体・テクノロジー』(アルテスパブリッシング、2021年)。
担当:座談会、09

阿部万里江(あべ まりえ)
カリフォルニア大学バークレー校音楽科准教授。エスノミュージコロジー、文化人類学、人文地理学。
主著にResonances of Chindon-ya: Sounding Space and Sociality in Contemporary Japan (Wesleyan University Press, 2018), “Sonic Imaginaries of Okinawa: Daiku Tetsuhiro’s Cosmopolitan ‘Paradise’” in Sound Alignments: Popular Music in Asia’s Cold Wars (Duke University Press, 2021)、『ちんどん屋の響き』(世界思想社、2023年)など。
担当:座談会、10

imdkm(いみぢくも)
フリーライター。
ポップ・ミュージックを中心にレビューやインタビュー、ライナーノーツ等を執筆。著書に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019年)。寄稿に細田成嗣編著『AA――五十年後のアルバート・アイラー』(カンパニー社、2021年)等。
担当:17、22

大西穣(おおにし じょう)
翻訳家、音楽批評。
主な訳書にジョン・ケージ『作曲家の告白』(アルテスパブリッシング、2019年)、ジェローム・スピケ『ナディア・ブーランジェ』(彩流社、2015年)、主な著作に共著『AA――五十年後のアルバート・アイラー』(カンパニー社、2021年)、「小澤征爾の世界と「ふれる」」『図書』(2022年)、「レイ・ハラカミと「うた」」『ユリイカ』(2021年)など。
担当:03

葛西周(かさい あまね)
京都芸術大学芸術学部専任講師。音楽学。
主な共著(分担執筆)に『クリティカル・ワード ポピュラー音楽――〈聴く〉を広げる・更新する』(フィルムアート社、2023年)、『音と耳から考える――歴史・身体・テクノロジー』(アルテスパブリッシング、2021年)、『移動するメディアとプロパガンダ――日中戦争期から戦後にかけての大衆芸術』(勉誠出版、2020年)など。
担当:座談会、24

後藤護(ごとう まもる)
暗黒批評。
『黒人音楽史 奇想の宇宙』(中央公論新社、2022年)で第一回音楽本大賞「個人賞」を受賞。その他の著書に『ゴシック・カルチャー入門』(Pヴァイン、2019年)、近刊に『悪魔のいる漫画史(仮)』(blueprint、2023年)。
担当:18、33

佐久間義貴(さくま よしたか)
編集者。音楽・音響論。
主な論考に「反響・パースペクティヴ・深さ――振動するジャームッシュの風景」『ヱクリヲ』(2017年)、「亡霊たちの唱歌――神代映画の〈声〉を聴く」『ヱクリヲ』(2016年)など。
担当:23

千葉乙彦(ちば おとひこ)
出版社勤務。映画/ポピュラー音楽批評。
主な執筆に「MVエフェクティズム」『エクリヲ』(2019年)、「相米映画を聴く」『早稲田大学大学院 文学研究科紀要』(概要掲載、2017年)。
担当:36


辻本香子(つじもと きょうこ)
国立民族学博物館外来研究員、大阪芸術大学・大阪公立大学等非常勤講師。民族音楽学、文化人類学、サウンドスケープ研究。
主な論文に「都市のサウンドスケープと芸能の音――香港・九龍半島における中国龍舞の習得と実践を事例として」河合洋尚編『景観人類学――身体・政治・マテリアリティ』(時潮社、2016年)、「芸能になる・スポーツになる――中国龍舞の音をめぐる価値の変容について」『音と耳から考える――歴史・身体・テクノロジー』(アルテスパブリッシング、2021年)など。
担当:20

dj sniff
ターンテーブリスト、キュレーター。
演奏家としてこれまでにREWIRE(2015年、ハーグ)、「Sam Francis in Japan」展(2023年、ロスアンゼルス)などへの招聘。主な録音作品は『EP』(PSI、2010年)、『ダウトミュージックを斬る』(ダウトミュージック、2014年)、『平行的玉音軌』(Discrepant、2022年)など。インスタレーション作品を「液態之愛」展(台北當代藝術館MOCA、2021年)、「崩塌記憶之宮」展(臺灣當代文化實驗場C-LAB、2023年)、台北雙年展「小世界」(臺北市立美術館TFAM、2023年)で発表。主な音楽イベントのキュレーションはアジアン・ミーティング・フェスティバル(日本、シンガポール、台湾他、2015–19年)、Beuys on/off Sounds of Eurasia(東京ドイツ文化会館OAGホール、2021年)、ex-DJ(臺北市立美術館TFAM、2023年)など。
担当:39

長門洋平(ながと ようへい)
立教大学現代心理学部助教。映画研究、聴覚文化論。
主著に『映画音響論――溝口健二映画を聴く』(みすず書房、2014年)、共著に『日活ロマンポルノ――性の美学と政治学』(水声社、2023年)など。
担当:14

中村将武(なかむら しょうぶ)
東京大学大学院博士課程在籍。美学、聴覚文化論、ポピュラー音楽研究。
主な論文に「忠実性の美学に向けて――音楽の録音における高忠実性と低忠実性の多様性と共通性」『美学』(2023年)、「hyperpopの音響とそのフォーマット」『ユリイカ』(2022年)。
担当:21(訳)

西村紗知(にしむら さち)
批評家。
主著に『女は見えない』(筑摩書房、2023年)、
主な論考に「椎名林檎における母性の問題」『すばる』(2021年)、「お笑いの批評的方法論あるいはニッポンの社長について」『文學界』(2022年)など。
担当:01

原塁(はら るい)
京都芸術大学非常勤講師。専門は歴史的音楽学、表象文化論。
領域横断的実践に関心をもち批評活動を行う。
主著に『武満徹のピアノ音楽』(アルテスパブリッシング、2022年)、主な論文に「肉体とエレクトロニクスの邂逅──佐藤聰明《リタニア》における一九七〇年代初頭の実践との紐帯」『表象』 (2022年)など。
担当:31、32

日高良祐(ひだか りょうすけ)
京都女子大学現代社会学部講師。専門はメディア研究、ポピュラー音楽研究。
編著に『シティ・ポップ文化論』(フィルムアート社、2024年)、『クリティカル・ワード ポピュラー音楽――〈聴く〉を広げる・更新する』(フィルムアート社、2023年)、分担執筆に『ポストメディア・セオリーズ――メディア研究の新展開』(ミネルヴァ書房、2021年)、『技術と文化のメディア論』(ナカニシヤ出版、2021年)など。
担当:19

檜山真有(ひやま まある)
キュレーター。
キュレーションした主な展覧会に田中藍衣個展「リバース ストリング」(越後妻有里山現代美術館 MonET、新潟、2024年)、雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」(BUG、東京、2023年)、「谷原菜摘子の北加賀屋奇譚」(クリエイティブセンター大阪、大阪、2023年)など。
担当:16

北條知子(ほうじょう ともこ)
アーティスト。
主な活動に作曲家個展「Music From Japan Festival 2021」(スカンディナビア・ハウス、ニューヨーク、2021)、個展「声をひそめて」(TOKAS本郷、東京、2019年)、個展「Unfin-ished Descriptions」(Hundred Years Gallery、ロンドン、2018年)、共著に『アフターミュージッキング――実践する音楽』(東京藝術大学出版会、2017年)など。
担当:28

細田成嗣(ほそだ なるし)
ライター/音楽批評。
編著に『AA――五十年後のアルバート・アイラー』(カンパニー社、2021年)、主な論考に「即興音楽の新しい波――触れてみるための、あるいは考えはじめるためのディスク・ガイド」『エレキング』(2017年)、「来たるべき「非在の音」に向けて――特殊音楽考、アジアン・ミーティング・フェスティバルでの体験から」『アジアン・ミーティング・フェスティバル』(2018年)など。
担当:13、27

マーティン・デヴィッド・スミス
(Martyn David Smith)
シェフィールド大学東アジア研究所准教授。東アジア現代文化論。
著書にMass Media, Consumerism and National Identity in Postwar Japan(Bloomsbury, 2018)。論文に“The ‘hedonistic revolution of everyday life’: Men’s magazines, consumerism and the Japanese salaryman in the 1960s” in East Asian Journal of Popular Culture(2022). “The hell of modern sound: A history of urban noise in modern Japan” in Asian Sound Cultures: Voice, Noise, Sound, Technology (Routledge, 2022)など。
担当:21

松房子(まつ ふさこ)
TAKU FURUKAWA ARCHIVE運営。COLLABORATIVE CATALOGING JAPANに「アニメーションのための音楽――クリヨウジと秋山邦晴」(2021年)を寄稿。共著に『アニエス・ヴァルダ――愛と記憶のシネアスト』(neoneo編集室、2021年)。
担当:06

柳沢英輔(やなぎさわ えいすけ)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科特任助教。音文化研究、音響民族誌。
主著に『ベトナムの大地にゴングが響く』(灯光舎、2019年)、『フィールド・レコーディング入門――響きのなかで世界と出会う』(フィルムアート社、2022年)など。
担当:05

山内文登(やまうち ふみたか)
国立台湾大学音楽学研究所教授。東アジア近代音楽史、帝国・植民地研究(朝鮮・台湾)、聴覚文化論。
共編著にPhonographic Modernity: The Gramophone Industry and Music Genres in East and Southeast Asia (University of Illinois Press, 2024, forthcoming)、論文に“Contemplating East Asian music history in regional and global contexts: On modernity, nationalism, and colonialism,” in Decentering Music Modernity: Perspectives on East Asian and European Music History(Transcript, 2019)など。
担当:座談会、35、37