ドリーム・アカデミー(The Dream Academy)の全音源を収録したCD7枚組ボックスセット『Religion, Revolution & Railways』が海外で2月23日に発売されます。レア音源や未発表音源も含んだこのボックスセットにあわせて、シンガー/ギタリスト/ソングライターの
ニック・レアード=クルーズ(Nick Laird-Clowes)がSuperDeluxeEditionのインタビューに応じています。
「(ボックスセットは)いろいろあって、全部で1年くらいかかった。40年も経った今でも、自分の作品を気に入ってくれる人がいて、それがいまだに聴かれ続けているというのは素晴らしいことだよ。だから、真剣に取り組みたかった。僕たちは3枚のアルバムの制作にとても苦労した。マスタリングなど、すべてに細心の注意を払った。だからボックス・セットも、(リリース元の)チェリー・レッドに“出したいなら、僕も参加しなければならない”と言ったら、ぜひ参加してほしいと言ってくれたんだ。
じつは(もともと)チェリー・レッドと契約したかったんだけど、デモを全部送って断られたんだよ。でも今はこれでいい。
(ボックスセットには)ワクワクしているよ。ずっとボックスセットが欲しかったんだ。2014年、ライノは2枚組のベスト盤は出したけど、ボックスセットは出さなかった。
とにかく大仕事だった。今は、すべてのクレジットが正しいので、今後リリースされるどの作品にも戻ることができる。当時関わっていた人たち全員のクレジットを入れたいよ。
(ワーナー・ブラザースのアーカイブから貴重な資料を探し出したの?)
そうだね。僕は自分たちの作品を完全に把握したい人なんだ。最初の頃のデモのカセットテープを全部持っている。かなりのものがどこにあるかは知っていましたけど、ワーナー・ブラザーズのアーカイブに何があるかは知らなかった。いつからか、アーカイブはテープからデジタル化されるようになったんだけど、デジタル化が十分でないものもあったから、他のソースを探さなければならなかったんだ。
(アーカイブの中で忘れていたものや、発見したレアな音源はありましたか?)
“The Last Day of the War”と“These Walls”だね。“These Walls”は、“The Edge of Forever”と“Test Tape No.3”と並んで、ギルバート(ゲイブリエル)と僕が最初に書いた曲のひとつだと思う。
“Doubleminded”のデモもあるんだけど、これはファースト・アルバムでは使わずに取っておいた曲で、セカンド・アルバムで使ったんだ。この曲は(ヒュー)パジャムが見事にプロデュースしてくれたけど、デモはデヴィッド・ギルモアのスタジオで、彼の兄弟のマークがエンジニアリングを担当して作った。Bサイドに使った曲もあれば、発売されなかった曲もあるよ。それらはボックスセットに入っている。できるだけ素晴らしい音にするために、3回もマスタリングしたんだ。
今では、Spotifyで素晴らしいサウンドを聴くためには、マスタリングしなければならないという感覚があるけど、僕はそれを21世紀のもののように聴かせたくはない。それはその時代に作られた音楽であり、僕たちが作りたいと思っていた通りのサウンドでありたいんだ。それは大変な作業だった。ニック・ドレイクの曲を聴くなら、低音を強調した音はいらない。元のままの音を聴きたいんだ」
ニック・レアード=クルーズはドリーム・アカデミーの代表曲のひとつ、「Life In A Northern Town」の誕生についても話しています。
「(この曲はニック・ドレイクについて書かれた曲だと思われていますが、そうではありませんよね?でも、彼に捧げたんですよね?)
この曲は僕たちの最初のシングルで、僕たちはそれぞれ影響を受けた大好きな人に捧げたんだ。
(アフリカ風のチャントを使った曲を書きたかったんですよね?)
そうだね。僕たちはいつも曲を書いていた。週に3回は、僕が住んでいた場所から数マイル離れたサウスゲートにあるギルバートの家に行っていた。その日も彼に会いに行った。僕らはキッチンに座っていて、あるアイデアを思いついた。僕たちは隣に行き、ギルバートは2、3弦のギターを弾いて、僕がギターでアルペジオを練習するのを手伝ってくれた。それから彼はギターの上で指を動かして、それがアフリカのコーラスのようなものだった。
その夜、家に帰ると両親は寝ていた。僕は音を消してテレビの前に座り、カセット・プレーヤーとギターとハッシュ・パイプを持っていた。ハッシュ・パイプを吸いながら、その日にやったことを録音したカセットを聴き、僕は自由に歌詞を作り始めた。でもアフリカのコーラスが思い出せなかったから、(以前に在籍したバンド)ザ・アクトにいたときにやったことを付け加えたんだ。
翌朝、出来上がったものを聴いて“これはいい、もう一節やろう” と思って、3つ書いた。それをギルバートとケイト(セント・ジョン)のところに持って行ったんだけど、彼女(ケイト)に会ったのはその2日前だった。彼女が最初にやってくれたことのひとつが、僕たちと一緒にこの曲を演奏することだった。すると突然開けて、このサウンドと雰囲気になった。まったく別の世界だった。でもコーラスはなくて、チャントだけだった。
ポール・サイモンとは数年前にニューヨークで会ったことがあった。僕とガールフレンドは、彼と彼のマネージャーと一緒に夕食に行った。彼は僕に何の仕事をしているのかと尋ねたので、僕はシンガーソングライターだと答えた。彼は“そうなの? 本当? 明日うちに来て、何か聴かせてくれないか?”と言ったので、彼のところに行って、ザ・アクトのアルバムを聴いてもらった。彼は良い曲だが、ヒットすることはないだろうと言った。僕は“あなたは間違っていると思う!”と言ったが、彼は“僕は間違っていない!と言っていた。
その次は、彼がロンドンに来たときに電話がかかってきて、彼に会いに行った。彼は新しいアルバム『Hearts and Bones』を、ちゃんとした弦もなかったアコースティック・ギターで聴かせてくれた。僕は彼に“Ah-hey-ma-ma-ma”のパートが入った“Life In A Northern Town”を聴いてもらった。
彼は僕を車で家まで送ってくれて、その曲の名前をどうするか聞いてきた。彼は“Ah-hey-ma-ma-ma-ma”という名前だったら、レコード屋で何と頼んだらいいか誰もわからないだろと言ったので、僕は“The Morning Lasted All Day”という曲だと言ったんだけど、彼は“いや、いや…”と言った。僕はいろいろなものを書き込んだ青いノートを持っていたから、“Life In A Northern Town”はどうかと言った。そしたら彼は“いいタイトルだね”と言ったんだよ。
それでスタジオに入り、デヴィッド・ギルモアと一緒に作ったミックスの上で、“Life In A Northern Town”と歌い始め、アドリブもいくつか入れた。完成させるまでに何段階もあったんだ。
(でも多くのレコード会社がこの曲を断った)
(ラフ・トレードの)ジェフ・トラヴィスは、他のみんなと一緒にこの曲を断ったんだけど、彼はこの曲を持ってアメリカに行って、いくつかのレコード会社に聴かせたんだ。戻ってきたとき、彼はソニーとワーナー・ブラザーズがこの曲をとても気に入ったと言って、それからすべてが始まったんだ。ニューヨークに行き、僕たちはアメリカ人と契約した。ワーナー・ブラザースは世界最大のインディーズ会社みたいなものだった。彼らは僕たちと3枚のアルバムで契約し、“最初のアルバムでヒット曲を作ろうとするな”と言っていた。
“Life In A Northern Town”は僕たちの人生を変えた。ワーナー・ブラザースがそれを聴いて、それを手に入れた。嬉しかったよ。アート的なところから生まれたものだと理解してくれたのだからね。僕たちはヒット・シングルを作ろうとしていたわけではない、それは確かだ。
(全英シングルチャートで15位、全米シングルチャートで7位を記録した)
ビルボードによると、その週に最も再生された曲で、本来なら1位になるはずだったんだけど、何かがそれを止めたんだ。アメリカはそういうものなんだよ。
行く先々で耳にした。空港でも......度肝を抜かれたし、僕らの時代はMTVの誕生と重なっていた。素晴らしかったよ」
■『Religion, Revolution & Railways』
DISC ONE
The Dream Academy
1 Life In a Northern Town
2 The Edge of Forever
3 (Johnny) New Light
4 In Places on The Run
5 This World
6 Bound To Be
7 Moving On
8 The Love Parade
9 The Party
10 One Dream
DISC TWO
Remembrance Days
1 Indian Summer
2 The Lesson of Love
3 Humdrum
4 Power To Believe
5 Hampstead Girl
6 Here
7 In The Hands of Love
8 Ballad In 4/4
9 Doubleminded
10 Everybody’s Gotta Learn Sometime
11 In Exile (For Rodrigo Rojas)
DISC THREE
A Different Kind of Weather
1 Love
2 Mercy Killing
3 Lucy September
4 Gaby Says
5 Waterloo
6 Twelve-Eight Angel
7 St. Valentine’s Day
8 It’ll Never Happen Again
9 Forest Fire
10 Lowlands
11 Not For Second Prize
DISC FOUR
1 The Love Parade (Remix) – US Single
2 Please Please Please Let Me Get What I Want – Single
3 Girl In a Million (For Edie Sedgwick) – B-Side
4 In Places on The Run – Edit
5 In The Heart – Japanese Single
6 The Chosen Few
7 Indian Summer – Single Version
8 Hampstead Girl – B/V Mix
9 Sunrising
10 The Demonstration – B-Side
11 The Last Day of The War (Pt 1) – Unreleased
12 The Last Day of The War
DISC FIVE
1 The Day It Rained Forever – Unreleased
2 Poised On the Edge of Forever
– B-Side
3 Test Tape No.3 – B-Side
4 Bound To Be – Demo
5 Things We Said Today – B-Side
6 Doubleminded – Demo – Unreleased
7 These Walls – Unreleased
8 The Party – Acoustic Version 9 Living In a War
10 Immaculate Heartache – B- Side
11 House Of Heartbreak – Unreleased
DISC SIX
1 Please Please Please Let Me Get What I Want – Instrumental
2 The Love Parade – Instrumental
3 Humdrum – Instrumental – Unreleased
4 Power To Believe – Instrumental
5 Hampstead Girl – Instrumental – Unreleased 6 Here – Instrumental – Unreleased
7 In The Hands of Love – B/V Mix – Unreleased
8 Ballad in 4/4 – Instrumental – Unreleased
9 Doubleminded – Instrumental – Unreleased
10 Everybody’s Gotta Learn Sometime – Instrumental – Unreleased
11 In Exile (for Rodrigo Rojas) – Instrumental – Unreleased
12 The Demonstration – Instrumental – Unreleased
13 In Suspendium – B-Side
DISC SEVEN
1 Life In a Northern Town – Extended
2 The Love Parade – 12 Mix
3 Indian Summer – Extended Version
4 Angel Of Mercy – 12/8 Mix
5 Mordechai Vanunu – B-Side
6 Love (Is Seven) – B-Side
7 Love – Dreamstrumental
8 Love – Dream House
9 Love – Love Is 12
10 Love – Whales in Love
11 Love – Hare Krishna Mix
12 Heaven – Pts 1 /2 – Unreleased