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英HMVの業績を回復させた現オーナー 経営権を手にしてからの5年間と今後、そしてレコードとCDの成長と今後について語る

2024/02/15 13:20掲載
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HMV reopens on London’s Oxford Street after four-year absence
HMV reopens on London’s Oxford Street after four-year absence
5年前の2019年に、事実上の経営破綻に陥っていた英国のHMVを買収して、業績を回復させた現オーナーのダグ・パットマン。英ミュージック・ウィーク誌の新しいインタビューの中で、HMVの経営権を手にしてからの5年間と今後、そしてアナログレコードとCDの成長と今後、ストリーミングとの共存について話しています。

ダグ・パットマンはカナダでトイザらスを所有し、HMVやカナダのサンライズ・レコード、Foppといったレコード・チェーン店も経営しています。HMVは現在、英国内に100店舗以上を展開しており、2023年の総売上高は増加し、CDの売上高は十数年ぶりに増加したという。2023年11月には、HMVが1921年に最初の店を構えた英ロンドンのオックスフォード・ストリートにHMVが4年ぶりに戻ってきています。

Q:HMVの救済に乗り出してからのこの5年間をどのように振り返っていますか?

「面白いことだよ。私たちが買わなければ、清算は起こるべくして起こっていた。結局のところ、誰もそれをやりたがらなかった。このような状況になったのは幸運だったと思う。私はカナダ、アメリカ、イギリスでレコード・チェーン店を経営していますが、いつも独立系(のレコードショップ)からは厳しいことを言われます。私はいつも同じことを言っています。HMVがなければ、カナダのサンライズがなければ、商品を生産する選択肢が少ないということを。だから、私たちはビジネスを成長させるために存在しているのです。(フィジカル商品を)大量に買ってくれる人が必要なのです。私たちにとっては、本当にうまくいっている。ちょうどいいタイミングだった。レコードは本当に成長した。私がHMVを買収した当時は、正直なところ、HMVはレコードにそれほど力を入れていなかった。乗り遅れていた。でも、今はデータや市場シェアを見ればわかるように、HMVはレコード市場において大きな存在になっています」

Q:2023年のレコード業界の業績と今年の見通しは?

「私たちは2023年も成長を遂げました。私たちは間違なくイギリスでのレコードの主要な販売者です。市場シェアは非常に高い。当面はレコードの成長が続くと見ています。多くのアーティストが別エディションをリリースしており、別エディションをすべて手に入れたいと思う人もいます。業界は私たちに対して(限定ヴァイナル・エディションで)非常に協力的で、それは素晴らしいことです。業界は、健全で繁栄しているHMVがビジネス全体にとって本当に良いことだと理解してくれていると思います。私は、HMVが長期的に存続するよう尽力しています。レーベルや業界全体とのパートナーシップは素晴らしいものです」

Q:レコード業界にとってプレッシャーはありますか?

「私たちのビジネスで言えば、今、業界にとって最大の逆風は価格設定です。生活費の危機があり、食料品の価格は異常です。ですので、これらの市場環境はどうしようもないものなのです。それがどうなるかです。しかし、間違いなく厳しい時代になるかもしれないことに備えてチームを準備しておくことは重要なことだと思います。逆風に直面する可能性があることは確かで、そうなれば、レコードが私たちの成長をもたらすという私たちの軌道も変わってくるでしょう」

Q:CDも回復力を見せていますが、2023年の業績はいかがでしたか?

「私は(2019年以前は)HMVを所有していませんでしたが、10年か15年ぶりに成長が見られた年だっだと思います。CDの成長は久しぶりで、エキサイティングなことです。価格帯は本当に素晴らしい。繰り返しになりますが、あるアーティストに本当に熱中しているとき、そのアーティストがやっていることすべてを買いたくなるものなのです」

Q:CDフォーマットは今、レーベルやアーティストから愛されているのでしょうか?

「フィジカル全体は、消滅するという考えから、実際にビジネスの本当に重要な一部となっています。ストリーミングほど大きなものでしょうか?もちろんそうではありません。そうなるのか?いいえ、でも、非常に価値のあるものであることに変わりはありません。結局のところ、何かの成長を目の当たりにすれば、それに投資したくなるものです。今では予想よりも少しうまくいっていると見られているので、少しずつ投資が増えています。CDにはまだ多くのスペースを設けていますし、新店舗でもCD専用のスペースがたくさんあります。ですから、私たちの立場からは、これからもCDを続けていくつもりです。私たちはCDの衰退に手を貸すつもりはありません、私たちは、それを見続けたいし、うまくやり続けたい」

Q:多くのリリースがデジタル・ファーストになっている中で、HMVはストリーミングと共存する方法を学んだのでしょうか?

「私は常に、期限内に納品するようプッシュするつもりです。また、(アーティストなどに入る)お金の問題から、フィジカル・ファーストがより理にかなっているという議論もまだあると思います。でも、これが世界の現状なのです。一時期はダウンロードが主流でしたが、今はストリーミングが主流です。私からの視点では、私たちにとってはあまり変わりません。顧客は変わってきていますが、しかし、二重の顧客が存在することも分かってきました。ストリーミングをしながらも、アルバムを買いに来てくれるお客さんがいます。そう考えると、ダウンロードの方がお金がかかるので、実はストリーミングの方がデジタル(ダウンロード)よりも我々にとって良かったと思います。ストリーミングの方が安いので、理論的には、もし誰かがフィジカル・アルバムとストリーミングの両方を持ちたければ、ストリーミングの方が安いということになる。私はストリーミングの利便性が好きです。家ではストリーミングでいい場合が多いですが、アルバムをかけるのは本当にいいものですよ」

Q:2024年のHMVと音楽業界の関係をどう表現しますか?

「レーベル各社は私やHMVにとても協力的で、本当に大事なときにそばにいてくれました。私が新しいビジネスをするときはいつも“あなたはオーナーと一緒に仕事をしている” "とみんなに言っています。もしあなたが私からコミットメントを得たとしても、それはアマゾンからコミットメントを得るようなものではありません。アマゾンでは人が常に変わり、購買チームが変わります。

購入当初、私たちはどうしてもレーベル(の協力)が必要だったのですが、今でもとても協力的です。お互いに協力し合える、とても良い関係です。全体的には超満足していますが、もちろん、より多くの独占販売や、より多くの先行商品、より多くのアーティストとの契約を望んでいます。自分のビジネスに役立つものはすべて欲しいものです。でも、このビジネスにおいてレーベルほど良いパートナーはいません」

Q:HMVはイギリス各地の新人アーティストや地元アーティストのインストア・ストアを数多く手がけていますが、HMVがコミュニティのハブであることは重要ですか?

「ええ、レーベルにとっても、私たちにとっても良いことです。アーティストにとってもいいし、HMVの顧客にとってもいい。人々はトレンドセッターであることと、最初に何かを発見することを好みます。今まで聞いたことのないようなアーティストを連れてくることは重要なことだと思います。音楽というのは、究極的には発見なんです」