英ガーディアン紙によると、英国ではトリビュート・アクトがブームになっているという。同紙はトリビュート・アクトを特集しています。
同紙によると、「年齢を重ねたレジェンドたちが亡くなったり引退したり、またチケットの値段が法外になるにつれ、こうしたトリビュート・アクトがギャップを埋め、結果的に国中の会場を完売させている」のだという。
2011年からティナ・ターナーのトリビュート・アクトとして活動するジャスティン・リドックは「新型コロナの後、誰もチケットに25ポンドも使わないだろうと思っていたけど、ここ2年間の売り上げは過去最高よ」と話しています。リドックは、バックステージで巨大なスーツケースをあさりながら、きらびやかな衣装を選び、「ここには16着のドレスがある。オーダーメイドで作ってもらうからコストもかかるけど、それだけの価値はあるのよ」と話しています。
過去2年間、バンド“U2 2”にボノとして参加しているマイク・ピッカリングは「少なくとも10,000ポンドはボノになりきるために使ったよ。僕の服は彼とまったく同じデザイナーのものなんだ。サングラスだけで、1つ300ポンドもする、10個持ってるよ。高いけど、大好きなんだ。毎晩、自分のヒーローになりきれて本当に幸せ。僕の一部なんだ。ボノはある意味、僕の中にいるんだ。遺伝子の中にあるんだよ。僕は彼と同じ病院で生まれたし、彼によく似ているから、妻とDNA検査をしたんだ。僕の家系にはランキン一族とのつながりがあって、ボノの母親はアイリス・ランキンなんだ。だから、僕は彼と親戚なのかもしれない」
遠い親戚の可能性がある役を演じることについて彼は「とても深いスピリチュアルな体験だ。観客がその人になりきってほしいと望んでいるのだから、自分がその人であることを想像しなければならない。ステージから降りると、みんな写真を撮ろうとする。僕はダブリン訛りで話し、ボノのサインを完璧にマスターした」と話しています。本物のボノは“U2 2”の存在に「光栄だ」と語っているという。
元小学校教諭であるケイト・ブッシュのトリビュート・アクト、マンディ・ワトソンは正反対のアプローチを取るという。
「私は彼女のふりはしない。恥ずかしくて死んでしまうわ。ステージでの私はあくまでもマンディであって、音楽と私の旅について話します。パロディじゃないのよ。ケイトは自分の歌の中にキャラクターを宿していたから、私が何かするとしたら、そのキャラクターになりきることであって、決してケイトにはなりきらないの。ケイト・ブッシュは一人しかいないのよ」
とはいえ、時折ハプニングもあるという。
「日本からはるばるやって来た人がいました。彼は私をケイト・ブッシュだと思ったんだと思います。彼は私にプログラムにサインしてほしいと言ったので“幸せを願って、マンディ”と書きました。彼は、私が書いた私の名前をとても不思議そうに見ていました。彼が私をケイト・ブッシュだと思っているのかどうか、今でもわからないわ」
ザ・スミスのトリビュート・バンド、Frankly, the Smithsでモリッシー役を担当するスティーブン・スタッフォードは昼間は美術の教師をしているという。
「僕はシャイでぎこちなくて不器用だから、モリッシーは僕にぴったりなんだ。他の人の真似をしようなんて考えられない。他の誰かになりきっているなんて不思議だけど、とても自然な感じがする。モリッシーでいるときのほうが、自分らしく感じられるんだ。パロディにはなりたくない。紙一重なんだけどね」
トリビュート・バンドのハッピー・モンデーズでベズを演じているピーター・ストレットンは、フリーキーなダンサーという役柄をすっかり気に入り、偽ベズとしての自伝まで書いているという。「(刑務所に)7日間入ったんだ。7日間ね。罰金の未払いでね」。とはいえ、ストレットンはドラッグをやったことはありません。「みんなこう言うんだ。“ほら、これをちょっと飲めよ”。“いや”と言うと、“君はあまりいいベズじゃないね ”と言われるんだよ」。ハッピー・モンデーズは過去に本物のベズと共演しています。