Bobby Gillespie Shane MacGowan
ザ・ポーグス(The Pogues)の
シェイン・マガウアン(Shane MacGowan)と、
プライマル・スクリーム(Primal Scream)の
ボビー・ギレスピー(Bobby Gillespie)は“ケルティック・ソウル・ブラザー”と呼び合う「魂の兄弟」でした。マガウアンの訃報を受け、ギレスピーは長文の追悼文を、英ガーディアン紙に寄稿しています。
「シェイン・マガウアンと初めて会ったのは、ザ・ポーグスの栄光の日々からずっと後の1990年代後半だった。彼は街中の様々なイベントやライヴで、いつもパートナーのヴィクトリア・メアリー・クラークと一緒にいて、誰にも邪魔されずに座っていた。ダークなカリスマ性を発していたが、俺には彼が疲れていて悲しそうに見えた。たとえ好意的な人や取り巻きに囲まれていても、彼の頭上には、憂鬱と孤独の雲が漂っているように見えた。
ある夜、俺は近づいて自己紹介をし、そのまま意気投合した。簡単なことだった。彼は穏やかな心の持ち主で、実際、俺が想像していたのとはまったく違って、とてもシャイだった。俺は(ザ・ポーグス以前に在籍していたバンド)The Nipsの“Gabrielle”の頃から彼を尊敬していた。それが彼の最初のバンドだったが、ザ・ポーグスの曲は別次元だった。俺は彼のソングライターとしての才能にいつも畏敬の念を抱いていた。彼の曲は、社会から疎外され、抑圧され、虐げられた人々の物語であり、とても文学的だった。普通の労働者や女性、そして彼らの日々の闘いへの共感と同情に満ちていたし、ジャンキーや酔っぱらいのことも忘れていなかった。
彼のアイドル、ルー・リードのように、彼の曲は現代的なストリートの言葉と伝統的な詩的センスがミックスされていた。彼に才能があるのは明らかだった。俺のお気に入りは、美しいバラードの“A Pair of Brown Eyes”、“A Rainy Night in Soho”、“The Old Main Drag”、“Fairytale of New York”。どれも忘れがたい映像、ドラマ、思いやりに満ちた完璧な小さな映画だ。泣けると同時に、反抗の握りこぶしを突き上げるような曲なんだ。
“Transmetropolitan”、“The Sick Bed of Cuchulainn”、“Sally MacLennane”、“Streams of Whiskey”、“Boys From the County Hell”など、彼の騒々しい曲はすべて、狂おしいほどのユーモアと恍惚とした喜びに満ちた、豊かに生きた人生を謳歌するものばかりだった。酔っぱらって大暴れしたくなるような曲ばかりだ。トム・ウェイツはかつて、ザ・ポーグスの演奏は“上陸休暇中の船乗り”のようだと言っていたが、それは完璧な観察である。
彼は褒められることを快く思わなかった。2000年の夏に俺の家で行ったパーティーで、俺が彼のことを現代音楽界の最高の作詞家だと断言し、ニック・ケイヴもモリッシーもマーク・E・スミスも誰も彼に近づけなかったと言ったとき、シェーンから“競争じゃない!”と言い返された。教訓になった。
彼は俺のバンド、プライマル・スクリームの近くにいるときはいつも、楽屋の隅に静かに座って騒がなかった。バックステージの雰囲気を楽しみながら、楽しく過ごしていた。グラスゴーで行われたプライマル・スクリームのライヴの後、彼が立ち上がって“Rocks”や“Loaded”、ハートブレイカーズの“Born to Lose”のカヴァーを一緒に歌ったとき、2人でジョークを言い合って笑い合ったのを覚えている。彼のヴォーカルがバンドを引っ張り、この曲の歌詞に入り込んだ。歌っているときの彼は自然で、パンクのパワーと本能的な感情をすべて備えていた。真のロックンローラーであり、最高のケルティック・ソウル・ブラザーだった。“俺たちはゲール人だ!”。彼はそう宣言したことがある。グラスゴー、ダブリン、ロンドンと、何年にもわたって様々な場所で俺たちと一緒に歌ってくれて、俺たちは光栄に思っていた。俺たちは彼が大好きだった。彼が俺たちのバンドを愛してくれたことは、俺たちにとって大きな意味があったんだ。
彼との最後の思い出は、9月に入院中の彼を見舞ったときのことだ。彼はとても具合が悪く、その姿を見て動揺した。やせ細って弱々しく、頬骨が浮き出ていた。細くて太い銀髪を後ろに流した彼は、ハンサムで妙に美しく見えた。透き通るような肌、鋭い眼光、鋭い知性は健在だった。
またその日、俺はシェインとヴィクトリアの愛を見た。シェインは、病院の看護婦との小さないざこざで取り乱し、怯えたような目をしていた。ヴィクトリアは、幼い男の子にするように彼の手を握り、彼の額にキスをして、すべて大丈夫だと言っていた。彼にはその安心感が必要だった。こんなに深く愛し合っている二人の親密な瞬間を見て、俺は少し恥ずかしくなったと同時に、その瞬間に立ち会えた自分が恵まれていることに気づいた。俺のことは二人の目には映っていなかった。二人は愛で結ばれていた。とても美しい光景だった。
ヴィクトリアは彼の支えだった。彼の守護天使だ。ロックンロールで地獄の門をくぐったようなイメージの下に、呪われた詩人の役割を果たしたシェインは古き良きロマンチストだった。彼は人々の精神の美しさと欠点を見抜き、彼らを称え、彼らの苦悩に同調した。詩人でありソングライターである彼は、おそらく多くのことを感じ、多くのことを見ていたのだろう。そしておそらく、それが酒とドラッグの原因だったのだろう。彼は自分の人生を生き抜くために自分を麻痺させなければならなかった。彼の偉大な曲は、俺たちが人生を乗り越えるのを助けるために存在している。ありがとう、シェイン。音楽と楽しい時間をありがとう。神があなたの美しいゲール人の魂を休ませますように」