ラッシュ(Rush)の
ゲディー・リー(Geddy Lee)は、
ニール・パート(Neil Peart)が引退を決意したときのミーティングを回想。「僕たちがした最もつらい話し合いだった」と振り返っています。12月3日にイリノイ州シカゴのオーディトリウム劇場で行われた著書『My Effin’ Life』のトーク・イベントより
「僕たちがこれまでで最もつらい話し合いをしたのは、 (ニールが) 引退を決意したときだったと思う。
アレックス(ライフソン)が大変な手術を受けたばかりだった。公には話していないけれど、最後の数回のツアーの間、アレックスは腸の問題をいくつも抱えていたし、関節炎もひどかった。それは彼の手や演奏能力に本当に影響を及ぼしていた。だから彼は治療を求め、とても大変な手術を受けたんだ。2014年のことだった。
ニールが突然、“ミーティングをしよう”と言い出した。僕たちは“わかった。いつ?”と言うと、彼は“来週”と言った。僕たちは“レルキスト(アレックスの愛称)は手術をしたばかりなんだよ”と言ったけど、彼はその時であることにこだわっていた。それは彼らしくなかった。だから、彼が何か考えているのはわかった。
それで、いつも食事をしていたレストランで会った、マネージャーも一緒だった。彼は、基本的にもうツアーはしたくないと言った。“君たちがツアーを計画しているのは知っているけど、僕は家で新しい家族の面倒を見ないといけないんだ”と言っていた。彼は1997年に娘を亡くして地獄を味わっていた。その10ヵ月後には妻を亡くしていた。彼の本『Ghost Rider』を読めばわかるように、彼はそれから放浪の旅に出た。彼は地獄を経験した。誰もそんな目に遭うべきじゃない。彼は演奏することへの愛を再発見し、2002年に僕たちのもとに戻ってきた。それからの間、彼は素晴らしいパートナーであり、素晴らしい演奏を披露してくれた。彼はドラム・スタイル全体を一新した。多くの意欲が彼の人生に戻ってきた。でも今、彼は“もう限界だ”と言っている。それはつらい会話だった。
彼はアレックスを見て“アレックス、どう思う?”と言った。アルは前の週に手術を受けたばかりで落ち着かない様子だった。彼は“ニール、聞いてくれ。俺の問題で、あと何回ツアーがやれるかわからない。でも、もう1回はやりたいんだ”と言った。彼は僕を見て“ファック”と言っていた。ニールはそれについて何も答えられなかった。
彼は“このミーティングをする前に考えたことがある。それはアレックスはツアーをやりたいと強く望むかどうかだった。彼はイエスと言うだろうと思った”と言っていた。そしてアレックスはそう答えた。彼はその答えに満足しなかった。彼はホテルに戻り、しばらくして僕に送ってきたEメールにはこう書かれていた。“あの日、自分の部屋で600回はファックと言ったに違いない”。続けて、“今は違う見解なんだ。引退というより、諦めたんだ。ツアーをやることを諦め、最高のツアーにすることを諦めたんだ”と書かれていた。それで終わり。それが最後の話し合いだった」