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リック・ウェイクマン、キース・エマーソンを語る 幻のコラボコンサート&アルバム等についても

2023/11/26 21:47掲載
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Keith Emerson and Rick Wakeman (Image credit: Future)
Keith Emerson and Rick Wakeman (Image credit: Future)
リック・ウェイクマン(Rick Wakeman)キース・エマーソン(Keith Emerson)を語る。エマーソンのキャリアを振り返るCD20枚組ボックスセット『Variations』の発売にあわせ、英Prog誌の取材に応じたウェイクマンは、エマーソンとの思い出を振り返り、また一緒に演奏する予定だったコンサートやコラボレーション・アルバムの計画などについても話しています。

2人の間には何らかのライバル関係があるに違いないという噂がメディアで流れたこともありました。

「僕たちはいつも、それについてはちょっと奇妙だなと思っていた。僕たちはまったく違うプレイをするし、違う楽器を使うからね。とても仲良くやっていたんだ。

キースが英国に戻ったときはいつも会っていた。(2000年代初め)あるランチのとき、2つ隣のテーブルにいたカップルが聞き耳を立てて、僕たちの会話を聞こうとしていることに気づいた。キースもそれに気づいた。

彼らが食事を終えると、僕たちのテーブルに立ち寄り、その男が“お邪魔して申し訳ありません、あなた方が仲直りして友達になったのを見れて、なんて素晴らしいんだろうと言いたかったんです”と言った。するとキースは“いや、そうじゃないんだ、彼を訴えるからランチをしてるだけなんだよ!”と言ったんだ。男は“えっ、ごめんなさい”と言っていたよ。キースは本当にユーモアのセンスがあって、よく笑ったよ」。

ウェイクマンは、エマーソンがロックのキーボード・プレイヤーを伴奏者という役割から解放してくれたとも語っています。

「ザ・ナイスはオルガン・トリオだったから、みんな彼の大音量に適応できたんだ。キーボードの大きな問題のひとつは、60年代後半から70年代前半のバンドでは、ギタリストの音量が大きすぎて、オルガンやピアノ、エレクトリック・ピアノのソロになると、バンド全体が音量を下げなければならなかったことだった。その後、素晴らしいボブ・モーグ(ロバート・モーグ)が、コンクリートを切り裂くような楽器であるモーグ・シンセサイザーを提供してくれて、キースはそれを見事に使いこなした。

彼は革新者だった。偉大なジャズ・プレイヤーでありながら、ジャズとロックを他の誰よりも融合させることができた。融合は簡単なことではない。“ここでクラシックをやって、ここでジャズをやる”というわけではなく、自然な感じでなければならない。彼はクラシック、ジャズ、ロックに精通していた。彼はそれらすべてを大きな器の中で混ぜ合わせることができる能力を持っていたし、それがすごくうまかった。

彼のピアノ演奏は、モダン・クラシックにジャズを加えたような奇妙なもので、とても独特だった。彼はどんなことにも挑戦したがった。彼はピアノ協奏曲(『Works Volume 1』収録の第1番)を弾いたが、彼は僕に“それはエゴだ”と率直に認めた。それについて議論もした。結論はエゴがないのなら、こんなことはしない方がいい」

エマーソンとウェイクマンが一緒に演奏するという一種のプログレのドリーム・チームについて、ウェイクマンによると、それぞれのマネージャーがそれを実現させないことに熱心だったという。

「キースと僕は、コンサートをどうやるかについて素晴らしい計画を立てていた。暗闇の中で始まり、“Tarkus”か“Fanfare For The Common Man”が始まるけど、ライトが点灯すると、ステージにいるのはキースじゃなくて、僕が演奏している。そして、途中で観客に気づかれないようにちょっと入れ替わりがあって、今度はキースが“King Arthur”を演奏するんだ。すごく楽しい計画だと思ったよ。一緒にやる新しい曲も作ろうとも話した。ライヴのオープニングにぴったりなのをね。まだどこかにメモが残っているはず。何度も打ち合わせをしたんだ」

一緒にアルバムをレコーディングする話もしたという。

「作業のために音楽を交換し合ったので、僕たちに何ができるかをワクワクした。僕たちがアルバムを作るのは簡単だと思った。僕たちのスタイルはあまりにも違うから、誰が何をやっているかなんて一目瞭然だろうから」

彼らはまた、ジョン・ロードと組んでバンドを従えたトリオ・キーボード・ツアーを行うことも計画していました。2011年には、ロイヤル・アルバート・ホールで開催されるサンフラワー・スーパージャム・オールスター・チャリティ・コンサートに3人で出演することが決まっていましたが、エマーソンは神経症が続いており、それがプレーに支障をきたしていたため、演奏を中止となりました。

「彼は電話をかけてきて、“僕にはできない。無理なんだ。みんなをがっかりさせたくない”と言っていた。彼は本当に手と腕で苦しんでいた。キースが英国にいた時、何度か会ったけど、手のことを本当に気にしていた。彼はかなり落ち込んでいた」

ウェイクマンは、エマーソンの音楽の中で特に際立っている一面はなんだと思っているのか?

「まあ、ELPを挙げるしかないだろうね。彼がやったことは非常に巧妙だった。彼はザ・ナイスを新たなステージへと導いた。ザ・ナイスがどれだけ優れていたかを考えると“それを超えられるのか?”と思うけど、彼はそうした。彼はグレッグとカールという2人の完璧な箔を見つけた。彼らは初期のプログレ・ロックで育ったので、さまざまな融合をすべて理解していたし、突然素晴らしいモーグを投入することもできた。音楽は新しい時代に突入し、テクノロジーも新しい時代に突入していた。ELPはまさにそのタイミングで生まれたんだ」

ウェイクマンは最後にこう締めくくっています。

「悲劇的な結末だ。でも素晴らしいのは、キースがたくさんの幸せと音楽も残してくれたことで、それは悲しみを打ち消してくれる。100年後にも発見する人たちがいるだろう」