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聴力が低下し始めると、転倒のリスクが高まるが、補聴器がそのリスクを減らす可能性があるという。最近の研究結果。
研究によると、軽度の難聴を持つ高齢者の転倒のリスクは2倍以上だという。米国では65歳以上の人の怪我による死亡原因のトップは転倒です。
今夏にJournal of the American Geriatrics Society誌にて発表された研究によると、補聴器によって聴力を回復させることが、特に補聴器を継続的に装用している場合に、転倒を予防する可能性があることが分かったという。
コロラド州UCHealthの聴覚学者兼研究者であり、この研究の筆頭著者であるローラ・カンポスは「補聴器を装用している人は、装用していない人に比べて、有病率が有意に低いことがわかりました。彼らは転倒が少なかったのです」と説明しています。
研究の一環として、研究者たちは、難聴者約300人を対象に補聴器の使用状況を調査し、過去の転倒歴を尋ねました。研究者らはまた、めまいを引き起こす可能性のある薬の使用など、転倒リスクに影響する可能性のある要因も考慮しました。
調査の結果、全体として、補聴器を装用している人は、装用していない人に比べて転倒する確率が約50%低く、また、補聴器を1日4時間以上装用している人では、その減少幅はさらに大きかったそうです。継続的な補聴器使用者は転倒する確率がさらに低く、最大65%であったという。
カンポスは、難聴と転倒の関係を説明する一つの理論として、人間は聴覚を使って周囲の状況を感知していると説明し、「人間はエコロケーションができるのです」と話しています。エコロケーション(反響定位)は、動物が自ら発した音が何かにぶつかって反射してきた音を受信して対象物までの位置を知ることです。
「目を閉じれば、壁や周りの物に反響する音から、自分が大きな講堂にいるのか、小さなクローゼットにいるのかを感じ取ることができます。そのためには、高い周波数を聞き取れなければなりません。ですから、聴力を回復させることが役に立つというのは理にかなっています」
また、難聴者は会話をまとめるのに苦労します。聞き取れなかった単語を補うために、言語的な知識や文脈の手がかりに頼ることが多いのです。「これはより多くのリソースを使うことになり、負担になり、その結果、周囲の環境をナビゲートするための認知リソースが少なくなる」と彼女は言っています。そのため、手遅れになるまで段差や転倒の危険性に気づかないのかもしれないとのこと。
また転倒の危険性が、平衡感覚に重要な内耳の前庭機能の衰えと関連している可能性もあるという。
カンポスは「この根本的なメカニズムを理解するためには、まだまだやるべきことがあります」と言っていますが、補聴器が役に立っている患者を見ると、「嬉しくなる」とも言っています。