車に轢かれて重傷を負った
トーキング・ヘッズ(Talking Heads)の大ファンである男性。家族が死を覚悟するほどだった彼が病院で目覚めた時、ヘッズのメンバー4人が『ストップ・メイキング・センス』4Kレストア版のプレミア上映のために21年ぶりに再結集することを知る。「行きたい」。このイベントに参加することが、彼の回復の原動力となる。男性がこの映画を観ることを切望していることを知った医師や看護師らが彼を応援し、そして、当日観ることができたという。カナダの新聞グローブ・アンド・メールが特集しています。
男性の名前はテッド・クルチッキー(53歳)。彼は路面電車から降りた数秒後に車に轢かれ、肋骨を4本、両手を骨折し、首の椎骨に3本のひびが入り、頭部に深い傷を負って脳震盪を起こし、記憶の一部を喪失したという。妻は、連絡を受けて現場についたとき、「彼は死んだと思いました」と回想しています。
病院で意識が戻ったとき、トーキング・ヘッズが21年ぶりに再結集することを知ったクルチッキーは妻に「チケットを買ってきてよ」と言ったという。妻は上映会のチケットをなんとか手に入れました。
クルチッキーはチケットを手に居ましたが、この時点で、このイベントに参加できる保証はありませんでした。彼は14歳のときにこの映画を観て恋に落ちたという。さまざまな劇場で、すでに80回以上この映画を観ていましたが、今回のイベントに参加することが、彼の回復の原動力となりました。
「理学療法士に、立ってみたい?と言われたとき、立ってみたいと答えました。早く立てば立つほど、この映画に行ける可能性が高くなると思ったんです」とクルチッキーは振り返っています。
クルチッキーは病院で『ストップ・メイキング・センス』の魅力を何度も語っていたため、医師や看護師、その他のスタッフ全員が、この映画のこと、そして彼がこの映画を観ることを切望していることを知るようになりました。「病院中が彼を応援していました」と彼の妻は言っています。
カルガリーを拠点とする音楽セラピストのジェニファー・ブキャナンは「適切な時に適切な曲を聴くことで、笑顔になったり、泣いたり、踊ったりすることができ、トラウマを抱えた精神を癒すことさえできます」「私たちの脳は、ポジティブな身体的刺激を感じるのと同じように、ポジティブな感情的刺激に反応します。自分にとって重要な音楽に浸っているときほど、脳の多くの領域を活性化させる活動は他にありません」と同紙に話しています。
『ストップ・メイキング・センス』プレミア上映の1時間前、クルチッキーは病院から一日外出許可をもらい、イベントに参加しました。上映中、観客の多くはライヴのように音楽に合わせて踊っていたそうで、クルチッキーも心の中で踊ったという。
クルチッキーは現在も完全に回復したわけではありませんが、11月には『ストップ・メイキング・センス』の上映に十数回参加することができたそうです。