日本のジャズ喫茶を北アイルランドの写真家が記録した、ジャズ喫茶のビジュアルクロニクル本『Tokyo Jazz Joints』。ドイツのアートブック系出版社Kehrer Verlagから発売された本書を、英ガーディアン紙が特集。掲載写真の一部を公開しています。
『Tokyo Jazz Joints』は、北アイルランドの写真家フィリップ・アーニールが、日本に長期滞在しているアメリカの放送作家ジェームス・キャッチポールと共同で行ったドキュメンタリー写真プロジェクトです。
2人は特集でこう述べています。
フィリップ・アーニール:
「『Tokyo Jazz Joints』は、日本、写真、ジャズ、そして友情と、私の人生において大きな影響を受けたものが交差するところから始まったラブストーリーです。陳腐な表現かもしれませんが、このプロジェクトは本当に愛の結晶です。1997年に実家を出て日本で働き始めたとき、私は母に“1年後には帰ってくるよ”と約束しました。それから20年後、私はついに日本を離れましたが、日本が私から離れることは決してありません。
ジェームス・キャッチポールと初めて話をしたのは2014年の終わり頃でした。それまでは、東京のクラブナイトで何度か雑談をしたり、奇妙なメールを交換したりしていました。渋谷のバーで、酒を飲みながら音楽を聴きながら、私は彼に、日本で暮らす中で、すでに行ったことがあってよく知っている多くのジャズ喫茶やバーを再訪するアイデアを提案しました。私の意図は、この国の音楽の風景からそれらが永遠に消えてしまう前に、写真家としてそれらを記録することでした」
「それぞれの喫茶には個性や雰囲気があります。たいていジェームスと僕は客としてそこに座り、飲み物を注文して店主と会話をします。僕たちが何をやっているのか、なぜやっているのかを説明することもあれば、しないこともありました。日本語を話す2人の寝ぼけた外国人が人里離れた場所にある自分の店に入ってきたことに、店主が困惑することもよくありました」
ジェームス・キャッチポール:
「東京のジャズ・スポット、新宿にある6席のカウンター・バーには、僕のとても大切な老ジャズ・バーのオーナーが2,500枚以上のハード・バップとソウル・ジャズのアルバムを置いていた。彼は、若い人たちがこの音楽を聴くことができないことを嘆いていた。“ジェームスさん、グルーヴがあるならボリュームを上げなきゃダメだよ。音量を下げろと言う奴は信用するな”と言われたのを今でも覚えているよ。
日本のジャズ・ジョイントはライブラリーであり、ある種の寺院だ。お酒を飲みながら音楽談義に花を咲かせたり、マル・ウォルドロンのアルバム全曲を聴きながらボーッとしたりできる共同スポットなんだ。
日本のジャズ・ジョイントは、音楽、オーディオ・システム、レコード収集、お酒、社交、共通の趣味、そして人間性への愛に満ちている。狭い場所、暗い場所など、困難な条件下で、フィリップはこれらの写真に日本のジャズへの愛を視覚的にとらえた。僕たちがこのプロジェクトに8年以上を費やした理由は、世界中のひねくれたジャズ・ヘッズでさえも驚かせ、興奮させることができるサブカルチャーを見せるためなんです」
■特集ページ
https://www.theguardian.com/artanddesign/gallery/2023/oct/05/one-kissa-is-all-it-takes-tokyos-finest-jazz-haunts-in-pictures