レディオヘッド(Radiohead)の
トム・ヨーク(Thom Yorke)は、
トム・ウェイツ(Tom Waits)の1985年アルバム『Rain Dogs』が大好き。同作のリマスター再発にあわせ、このアルバムの魅力を語っています。英ガーディアン紙の企画より
「『Rain Dogs』が発売されたとき、僕は17歳だったと思う。カセットを買って、(ジャケットの)母親に抱擁された変な男を見て、これは一体何なんだろうと思った。そのカセットには、僕には理解できない魔力があって...僕はどんどん吸い込まれていき、潜在意識の奥深くに入り込んでいった。
ウォークマンで聴きながら眠りにつき、朝起きると頭の中でオートリピートされていたのを覚えている。どの曲も、歌詞にも楽器にもさまざまなキャラクターが登場し、数分間だけ宇宙全体が僕の前に姿を現し、どうやってそこにたどり着いたのかわからないまま、ブロックの反対側の端に追いやられてしまうような、僕にはほとんど理解できない謎めいた、サーカスのような落ちぶれたアメリカを舞台にしたショートムービーだった。
どの歌詞も、誰もが書くことを夢見るような、非常に巧みな韻を踏んでいた。とても美しく舌からこぼれ落ちるが、決して簡単には譲らず、物語の半分を独り占めしている。ウェイツは、1985年に本物であろうとする何よりも、はるかに本物に感じられるダークさとユーモアを持ったキャラクターを演じていた。しかし、何よりも僕の心を捉えたのは、各曲を聴いていると、トム・ウェイツが歌っている隣に立っているような感覚を覚えたことだった。マイクの置き方とか、何かがある。ミュージシャンたちが、まるで彼らがそれを理解したばかりのようなエネルギーと自発性をもって、スクラッチし、吹き、叩き(あの奇妙なギター・ラインも!)、この世界を存在させるのをすぐそばで感じることができた。
このアルバムは、僕の人生の中で何度も何度も繰り返し聴いてきた。僕の子供たちは成長したが、僕にとっては飽きることのないものだった。この新しいマスタリングは、まるでリリースされたばかりであるかのように、すべての感情を今に戻してくれた」