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イエス/ソフト・マシーン/モリー・ハチェット オリジナルメンバー不在で活動を続けるバンドを英紙が特集 バンドの炎を守り続けている理由は?

2023/08/05 20:32掲載
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Yes (Image credit: Gottlieb Brothers)
Yes (Image credit: Gottlieb Brothers)
イエス(Yes)ソフト・マシーン(Soft Machine)モリー・ハチェット(Molly Hatchet)。オリジナル・メンバー不在で活動を続けるバンドを英ガーディアン紙が特集しています。バンドの炎を守り続けている理由をメンバーに尋ねています。

イエスの現在のラインナップには、1970年代のアルバムに参加したスティーヴ・ハウがいます。が、その時代の他のメンバーがいないことが問題だと言う批評家はまだいます。

「僕たちはそれに耐えなければならなかった。一番いいのは、反撃することではなく、本当にいい演奏をすること、つまり自分の音楽の力で彼らを見返せばいい。否定的な意見もあるだろうが、強硬派もいるけれど、彼らの多くは僕たちのところに戻ってくる」

ハウをフィーチャーしたイエスだけでなく、“イエス・フィーチャリング・ジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン”という別の元メンバーが同じ音楽を演奏していた時期もありました。「僕たちが断固たる反対をしたのはそれが初めてだった」とハウは振り返り、ジョン・アンダーソンがイエスからいなくなったことで、問題が生じたことはあるのか?と尋ねられたハウは「ジョンと同じような声を出すシンガーを求めたことはなかった。でもね、(今のラインナップは)『Close to the Edge』を正しいキーで演奏できた最初のグループなんだ。以前は高すぎると判断されていたからね」と話しています。

ソフト・マシーンに2015年に加入したセオ・トラヴィスは、正当性について、ソフト・マシーンの現メンバーは、バンドが生まれたカンタベリーのエクスペリメンタル・ミュージック・シーンとのつながりに根ざしていると話しています。ベーシストのフレッド・ベイカーは、カンタベリー・ロックのバンド、イン・カフーツに在籍していたし、トラヴィス自身はゴングで10年間演奏していました。トラヴィスは、表現の自由を軸とするソフト・マシーンやゴングなどは、固定されたラインナップを持つことにこだわりはなかったと説明しています。

モリー・ハチェットは1987年に加入したボビー・イングラムを中心に活動しており、イングラムはモリー・ハチェットという名前の権利の所有者でもあります。「俺はオリジナル・メンバーの誰よりも長くバンドにいる。俺には在籍期間がある。辞めたことがない、ファンに背を向けたことがないと言えるのは俺だけだ。俺はこのバンドを存続させるために努力したんだ」

オリジナル・メンバーの脱退や死後も活動を続けるバンドは、音楽的な問題だけでなく、法的な問題にも対処しなければなりません。モリー・ハチェットを続けるために、イングラムはまず名前のライセンスを取得し、その後、バンドの当時のマネジメントから権利を買い取る必要がありました。

「ライセンスを買うのにいくらかかった? 全身の細胞が犠牲になったよ。それだけの費用がかかったんだ。金額を言うつもりはない。俺だけではなく、このバンドのメンバー全員にオファーがあったし、バンドのメンバー以外にもオファーがあった。モリー・ハチェットを買いたいという日本の投資家にもオファーがあった。俺はそんな(未来を)見ることができなかった。俺はモリー・ハチェットをそのままにしておきたかった。モリー・ハチェットというバンドをばらばらにしてしまいたくなかった。それは確かだ。何人かの足止めをしたよ」

では、そもそも演奏したこともないような古い曲を演奏することで、ミュージシャンたちは何を得るのでしょうか?

ソフト・マシーンのトラヴィスにとってそれは、過去のメンバーが作り上げた伝統の中で、ソフト・マシーンが作曲とレコーディングを続けるのは、息づく音楽を作り続けるチャンスなのだという。

「ソフト・マシーンの歴史の各章は、ほとんど別のバンドのようなものだけど、この糸がそれを貫いている。僕自身は、芸術的に野心的で前向きでありながら、同時にこの素晴らしい歴史を尊重し続けたいと思っている。新しいアルバムでは、もともとファースト・アルバムに収録されていたJoy of a Toyを取り入れたんだけど、もう一度、違う方法で見てみると、やはり本物だと思うんだ」

モリー・ハチェットのイングラムにとっては、そうでなければ忘れられてしまうかもしれないものを保存しつつ、新しい音楽を作ることなのだという。

「45年前の古い曲のベスト・ヒット・カヴァー・バンドにならないように、伝統と精神を守り続けることが重要なんだ。俺たちはカヴァー・バンドをやっているんじゃない。それは、俺たちが受け継ぐレガシーのほんの一部に過ぎない。その一方で、俺たちは新しい道を切り開き、次世代のバンドを創り上げている。それが重要なんだ。俺は妻を何年も前に亡くした。子供もいない。俺の子供たちが誰かわかるかい? このバンドのメンバー全員とクルーだ。俺は彼らのビッグダディなんだよ」