HOME > ニュース >

オランウータンはジャングルの「ビートボクサー」 同時に2つの音を出すことができる 最新研究結果

2023/06/28 14:24掲載
メールで知らせる   このエントリーをはてなブックマークに追加  
orangutan  (c) Adriano Lameira and Madeleine Hardus
orangutan (c) Adriano Lameira and Madeleine Hardus
オランウータンはジャングルの「ビートボクサー」で、同時に2つの音を出すことができることが新たな研究で明らかになっています。科学者たちによると、インドネシアとマレーシアの熱帯雨林に生息する野生のオランウータンは、鳥やヒューマン・ビートボクサーのように、2つの別々の音を同時に出すことができるという。

ウォーリック大学の研究チームは、この発見がヒトの発話の進化を解明する手がかりになると考えています。

研究チームは、ボルネオ島とスマトラ島に生息する発声するオランウータンの集団を合計3,800時間観察し、両方の集団が同じ発声の技術を使っていることを発見しました。

同大学のアドリアーノ・ラメイラ助教授はこう説明しています。

「人間は唇、舌、顎を使って子音の無声音を出し、喉頭の声帯を呼気で活性化させて母音の有声音、開放音を出します。オランウータンもまた、両方のタイプの音を出すことができます。

例えば、ボルネオ島に生息する大型のオスのオランウータンは、戦闘的な状況において、2つ音(chompsとgrumbles)を組み合わせて出しますし、スマトラ島のメスのオランウータンは、捕食者の脅威の可能性を他のオランウータンに知らせるために2つ音(kiss squeaksとrolling calls)を出します

オランウータンの2つの集団にて、同時に2つの鳴き声を出すのが観察されたという事実は、これが生物学的現象であることの証拠です」

オランウータンのコミュニケーションは、人間の発話の起源に光を当てるものになるという。研究の共著者のマドレーヌ・ハルダス博士は、こう説明しています。

「人間が有声音と無声音を同時に発することはほとんどありません。例外はビートボックスで、ヒップホップ音楽の複雑なビートを模倣する熟練したヴォーカル・パフォーマンスです。

しかし、人間が解剖学的にビートボックスができるという事実そのものが、その能力がどこから来たのかという疑問を投げかけるのです。その答えは、私たちの祖先の進化の中にあるかもしれないのです」

研究者によると、野生の類人猿の発声コントロールと調整能力は、鳥類の発声能力に焦点が当てられるのに比べ、過小評価されてきたという。

「2つの音を出すこと、まさに鳥の鳴き声は話し言葉に似ていますが、鳥の解剖学的構造は私たちと似ていないので、鳥の鳴き声と人間の話し言葉を結びつけるのは難しいのです」とハルダス博士は説明しています。

学術誌『PNAS Nexus』に発表されたこの研究結果は、人類の音声の発達だけでなく、進化上の祖先の能力を研究する上でも重要な意味を持ち、そもそも人間がどのようにしてビートボックスの技術を生み出し、習得したのかさえ説明できるかもしれないと研究チームは述べています。

ラメイラ助教授は「この発声能力が類人猿のレパートリーの一部であることがわかった以上、進化的なつながりを無視することはできません。進化によって言語が現在のような子音-母音構造に整理される前に、初期の人間の言語がビートボックスのような音に似ていた可能性があります」と述べています。