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スティーリー・ダン『Gaucho』収録予定だった幻の曲「The Second Arrangement」 発見された音源が一般公開

2023/06/25 21:27掲載(Last Update:2023/06/26 17:22)
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Steely Dan / Gaucho
Steely Dan / Gaucho
スティーリー・ダン(Steely Dan)は1980年のアルバム『Gaucho』に「The Second Arrangement」という楽曲を収録する予定でしたが、ほぼ完成させた後、当時のスタジオ技術者が誤ってマスター・テープを消去してしまい、再度録り直しを試みたものの満足のいく仕上がりとならず、結果、「The Second Arrangement」はお蔵入りとなっていました。

このアルバムの制作中にスティーリー・ダンと一緒に働いていたエンジニアのロジャー・ニコルズ(2011年4月死去)は、消去される数日前、カセットテープにこの曲のラフ・ミックスを録音していました。

ニコルズの娘シムシーとアシュリーは2020年、パンデミックによるロックダウンで退屈する中、父親の遺品を本格的に調べ始めます。そして、この失われた曲「The Second Arrangement」に関連したカセットテープを発見し、娘たちはSNSでこれについて報告しました。

それから3年。ついにこのテープの音源が一般公開されました。

このカセットテープに録音されていたのは約20分で、「The Second Arrangement」、「Second Arrangement」のオールインストゥルメンタル・ヴァージョン、そして、やがて『Gaucho』の「Third World Man」となり、「The Second Arrangement」の消去後の欠落を埋めた「Were You Blind That Day」のミックスが収録されていました。

娘たちはSNSで報告した後のファンの反応に驚いたという。

「テープがこんなに大騒ぎになるとは思ってもみなかった。スティーリー・ダンのファンから追いかけられるようになった。私の投稿の下に『インディ・ジョーンズと聖杯』のGIFもあった。私は“どうしよう”と感じだった。みんながテープを聴きたがっていることに興奮したけど、間違ったことはしたくなかった。カシオのラジカセを買ってきて、テープをポンと入れるなんてしたくなかった」

娘たちは父親の40年前のテープが、再生ボタンを押したとたんに分解してしまうほど劣化しているのではないかと心配しました。テープが劣化する前に再生できるチャンスは一度しかないと思い、プロにその作業を依頼できる日まで彼女たちは待ちました。

2021年9月、娘たちはロサンゼルスのスタジオ、ユナイテッド・レコーディングを訪れ、レコーディング&アーカイブ・エンジニアのビル・スミスに助けを求めました。そしてこのテープの中身を安全に聴くことか可能となり、またその後、娘は「The Second Arrangement」のDATテープも発見し、最終的に2023年3月にそのテープをデジタル・トランスファーを行い、そして、今回一般公開されました。

音源は娘シムシーのYouTubeチャンネル、そしてサイト「The Expanding Dan」にて公開されています。

スティーリー・ダンは「The Second Arrangement」をライヴで演奏したことがありますが、それは2011年にビーコン・シアターで行われたレアリティ・ナイトでの一度きりでした。この曲に入る前に、ドナルド・フェイゲンはこう語っていました。「再構築しようとしたんだけど、やり直す勇気がなかったんだ」。

発見されたカセットテープは間もなくオークションにかけられます。娘たちは父親のドキュメンタリーを制作する予定で、オークションによって、カセットやDATのデジタル・トランスファーに費やした資金を回収し、ドキュメンタリーのための資金も集めたいとも考えています。

以下はカセットテープ



以下はDATテープ



■「The Expanding Dan」
https://expandingdan.substack.com/