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「母親が歌う子守唄の魔法」を科学者が語る

2023/06/04 19:50掲載
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Artwork Omaira Vaquero|CC
Artwork Omaira Vaquero|CC
「母親が歌う子守唄の魔法」を科学者が語る。幼児のお昼寝時間にクラシック音楽を流すと入眠が35%早くなるが、乳児にモーツァルトか母親の子守唄を聴かせた場合は、子守唄の方が乳児の心を癒すという。また乳児がまったく馴染みない言語の子守唄でもリラックスするという。「子守唄のDNAのようなものには、赤ちゃんを落ち着かせる効果がある」らしいが、しかし、見知らぬ人が乳児に歌ったとしても、おそらく同じ効果はないという。米国の公共ラジオ局NPRが特集しています。

マイアミ大学医学部小児科の研究者であるティファニー・フィールドは大学の保育園で昼寝をする幼児と未就学児を調査しました。先生たちは昼寝の始まりにクラシック音楽を流しました。「幼児の場合、入眠が35%早くなりました。未就学児の場合も入眠が19%早くなりました」と説明しています。

またフィールドはこれとは別に、新生児集中治療室(NICU)にいる乳児を対象に行われた、モーツァルトを聴いた乳児、母親の子守唄を聴いた乳児、そして音楽を全く聴かなかった乳児を比較した調査も行いました。「その結果、母親の子守唄の方が、乳児の心を癒すことがわかったのです。子供たちは、よく眠るようになり、心拍数や呼吸数が落ち着き、哺乳がよくなるという効果も多く見られました」と説明しています。

オークランド大学で音楽心理学を研究しているサム・メアの研究チームは、乳児に聞き慣れない言語の歌を聞かせる調査をしました。いくつかの曲は子守歌で、いくつかの曲は子守歌ではありませんでした。乳児たちはどの曲もかなりリラックスできたそうですが、「子守唄を聴かせると、たとえそれがまったく馴染みがなく、赤ちゃんが理解できる言語でなくても、赤ちゃんはよりリラックスしました。子守唄のDNAのようなものには、赤ちゃんを落ち着かせる効果があるのです」と説明しています。

メアは「しかし、それですべてが説明できるわけではありません。もし見知らぬ人がやってきて、あなたの子供に歌い始めたとしても、おそらく同じ効果はないでしょう」と指摘しています。彼は、親が子供に歌うときの行動や行為もまた、役割を果たしているのではないかと考えています。

「赤ちゃんが動揺しているときに子守唄を歌うということは、(母親が)他のことをやっているわけではなく、それだけをやっているのだと赤ちゃんにはわかるのです。赤ちゃんは、あなたが本当に自分のことを気にかけていて、リアルタイムで感情に反応していることがわかるのです」

赤ちゃんが子守唄に特によく反応するという事実は、今後の長期的な研究のヒントになるとメアは言います。「このことを知った親が、実際に子守唄を歌う時間を増やすと、赤ちゃんがなだめやすくなり、親も冷静になり、親であることにストレスを感じなくなるなど、さまざまな効果が期待できます」

乳児に歌うことが、親の自信を高めるのに役立つという証拠はいくつかあるようです。イギリスの約400人の母親を対象にしたある研究では、毎日赤ちゃんに歌いかけることは、産後うつが少なく、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)や自尊心が高いことと関連していることがわかりました。また、別の研究では、グループで90分間子どもに歌を歌った母親は、話したり遊んだりするが歌わない母親よりも、乳児に親しみを感じていたそうです。

子守唄は、母子ともに魔法のような効果があるようです。