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ポール・サイモン『Graceland』のサウンドの核のひとつフレットレスベース、バキティ・クマロが当時を振り返る

2023/05/15 18:13掲載
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Paul Simon / Graceland
Paul Simon / Graceland
ポール・サイモン(Paul Simon)の名盤『Graceland』(1986年)のサウンドの核のひとつである、南アフリカのベーシスト、バキティ・クマロ(Bakithi Kumalo)によるフレットレスベース。クマロは、このアルバムについて、Bass Player誌のインタビューの中で振り返っています。

クマロは当時、南アフリカで、地元の整備士の手伝いをしながら音楽の仕事をしていました。ある日、スタジオに招待されました。

「スタジオに行ってみたら、まるで保育園のようだった。たくさんのミュージシャンがいて、中には子供を連れてきている人もいた。ポールは床に座って子供たちと遊んでいて、その後、僕に自己紹介をした。“こんにちは、ポール・サイモンです。あなたの作品が大好きです”とね。僕は“僕の作品が好きなの?”と思ったよ。

それから彼はTau Ea Matsekhaの“Hapete”を流して、“この曲のベーシストはあなたですか?”と尋ねてきたので、僕は“そうだよ”と答えた。彼は“おお!大好きなんだよ。このグルーヴでやってみよう”と言っていた。それで、ジャムが始めって、いろいろと変えていったのが、(後に)“The Boy in The Bubble”になったんだよ」

このセッションの時、クマロはまだ作業着姿でした。

「(スタジオに)入ったとき、油まみれの手に破れたズボン、靴からつま先が出ているような格好だった。ポールは僕にベースケースが欲しいかどうか聞き、そして“もう一本ベースが必要か?”と聞いてきた。僕は“もちろん!”と答えると、彼は誰かを楽器屋に行かせて、僕のためにフェンダーを買ってくれた。そのベースはジンバブエで行った『Graceland』のライヴでも弾いたんだけど、信じられないような音がしたよ。でも、南アフリカで盗まれてしまった。

ポールは僕が演奏したもの全てをを気に入ってくれた。彼のエンジニアであるロイ・ハリーは、僕のサウンドを認め、僕のベースにリバーブをかけ、それを世に知らしめた功績は大きい。僕のフレットレスサウンドは彼のおかげなんだ。

ポールは実際にはあまりベースが好きではない。その感触を気に入っているけど、ベースはあまり好きではないんだ。彼はギターやホーンが好きで、キーボードもあまり好きではない。彼はいつもベースを指示するので、僕は彼が望むものを与えなければならない。彼は歌っているときに耳元で低音が鳴りすぎるのは嫌なんだ。彼は物語を語っていて、自分の言っていることを一言一句聞いてもらいたいんだよ」