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Mobile Fidelity Sound Lab 「オール・アナログ」レコードにデジタル技術を使用したことをめぐる集団訴訟 裁判所が和解案を承認

2023/05/12 15:19掲載
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vinyl pressing plant - Photo by Adam Berry/Getty Images
vinyl pressing plant - Photo by Adam Berry/Getty Images
2022年、リイシュー・レーベルのモービル・フィデリティ・サウンド・ラボ(Mobile Fidelity Sound Lab/MoFi)が「オール・アナログ」と謳うレコードの一部にデジタル技術を使用していたことが明るみに出て、米国では同社を相手取った集団訴訟が起こされました。今年2月には、MoFiが原告との間で、最大2500万ドルに達する和解に達したと報じられましたが、原告の一部がこの取引に異議を唱えていました。5月9日、この訴訟を担当する連邦裁判官は、この和解案は適切であると承認したことを、米BillboardやPitchforkなどが報じています。

この論争は、2022年夏、米レコード店のオーナーであるマイク・エスポジートがYouTubeで疑惑を伝える映像を公開したことで表面化しました。この告発はすぐに確認され、翌月にはワシントン・ポスト紙が特集し、同社が2011年からDirect Stream Digital(DSD)技術を使用していると報じました。

同社はすぐに正式に謝罪しました。MoFiの社長であるJim Davisは当時、「曖昧な表現を使い、誤った物語を広めることを許し、お客様がMobile Fidelity Sound Labブランドに寄せる好意と信頼を当然のものとしたことを謝罪します。今後は、当社のオーディオ製品の出所について100%透明性を確保する方針です」と述べていました。

この謝罪は、長年、オリジナルマスターテープのみから供給されると信じて高額なレコードを集めていたレコードコレクターの怒りを鎮めることはほとんどできませんでした。

今回の集団訴訟では、2011年からDSD技術を密かに使用しながら「完全アナログ録音」としてプレミアム価格を設定していたことが不正行為であると訴えています。

この訴訟では、MoFiの「オリジナル・マスター・レコーディング」と「ウルトラディスク・ワンステップ」というラベルが付いたレコードに焦点が当てられています。これらの製造工程はアナログのみであるとされていたので、デジタル処理を取り入れたレコードよりも本質的に希少性が高いため、買い手たちは、高額でも買っていたと主張しています。

集団訴訟の中で、原告らは、MoFiの隠れた行為がレコードの価値を著しく低下させたと主張しました。裁判所に提出した訴状にはこう書かれていました。

「MoFiはこの事実を公表せず、またレコードがDSDを使用しているという事実を反映する表示に変更することもありませんでした。それどころか、MoFiはこの事実を消費者から意図的に隠していたのです。

オリジナルの録音テープは古くなるため、限られた数のアナログレコードしか生産できません。被告が純粋なアナログではなくデジタルマスタリングプロセスをレコードに使用し始めたとき、レコードはもはや限られた数量ではなく、スタジオ録音に近いものでもないため、本質的に価値の低いレコードを製造しました。それにもかかわらず、高い価格を請求したのです」

今年2月、米ビルボード誌は、MoFiが原告との間で、最大2500万ドルに達する和解に達したと報じましたが、原告の一部は、和解の条件が不十分であり、同社の弁護士が「不十分で談合的な和解を裁判所を通して行おうとしている」と主張し、異議を唱えていました。

この和解案では、MoFiはすべての顧客に対して、購入した商品を返品して全額返金するか、アルバムを手元に残したまま、5%の現金または10%のクレジットによる返金を行うこと、の2つの選択肢を提示しました。

5月9日、この訴訟を担当する連邦裁判官は、この和解案は適切であり、談合的のものであるという主張を退けました。裁判官は「修正和解契約は、連邦民事訴訟規則に従って公正かつ適切であり、合理的である」と説明しています。この和解の最終審問は10月に予定されています。