東欧演歌の地政学 ポップフォークが〈国民〉を創る〉
冷戦後に東ヨーロッパ各国で進んだ自由経済への体制転換。一気に流れこんだ西側のポップ・ミュージックが、土着の音楽と結びついて民俗的大衆音楽「東欧演歌」が誕生した。現地の文化状況に精通する気鋭の研究者が集結し、国際ニュースからは伝わってこない大衆の真実を〈うた〉から読み解く。書籍『東欧演歌の地政学 ポップフォークが〈国民〉を創る〉』がアルテスパブリッシングから4月28日発売
■『東欧演歌の地政学 ポップフォークが〈国民〉を創る〉』
伊東信宏 編
定価:本体2700円[税別]
送料:国内無料
四六判・並製 | 356頁
発売日 : 2023年4月28日
ISBN 978-4-86559-272-6 C1073
ジャンル : ワールドミュージック
装丁:福田和雄(FUKUDA DESIGN)
<内容>
聴け、民衆の魂の鼓動(ビート)を!
気鋭の研究者たちが〈うた〉から読み解く大衆の真実。
冷戦終結後、東欧諸国の自由化を映し出す民俗的大衆音楽、
それが「東欧演歌」だ!
ターボフォーク(セルビア、スロヴェニア)
チャルガ(ブルガリア)
マネレ(ルーマニア)
新作曲民謡(旧ユーゴスラヴィア)
アラベスク(トルコ)
ラビズ(アルメニア)
リプシ(東ドイツ)……
これら東欧各国で流行している民俗的大衆音楽( それを筆者は「東欧演歌」と名付けた)は、当時東欧各国が体験しつつあった社会主義から自由経済へという現代最大の社会変革をみごとに映し出している。ここでは高価な車ときらびやかな宝石、最新のモードと奔放な性が歌われながら、その一方でそんな新しい生活への戸惑いや疑いも同時に表明される。音楽はオリエントとオクシデントの間で揺れ動く。新たに流入した欧米のポップ・ミュージックが模倣される一方で、ただのイミテーションでは済まずに突如「民俗的」な響きが噴出する。
──伊東信宏/本書「はじめに」より
セルビア、ブルガリア、ルーマニア、旧ユーゴ諸国、
トルコ、東ドイツ、スロヴェニア、アルメニア──
冷戦後に東ヨーロッパ各国で進んだ自由経済への体制転換。
一気に流れこんだ西側のポップ・ミュージックが
土着の音楽と結びついて民俗的大衆音楽が誕生した。
現地の文化状況に精通する気鋭の研究者が集結し、国際ニュースからは伝わってこない大衆の真実を〈うた〉から読み解く!
ためし読みはこちらから▼
https://hanmoto9.tameshiyo.me/9784865592726◎執筆者(掲載順)
伊東信宏(いとう・のぶひろ / 大阪大学中之島芸術センター長、人文学研究科教授)
イヴァ・ネニッチ(Ива Ненић / ベオグラード芸術大学講師)
上畑史(うえはた・ふみ / 人間文化研究機構人間文化研究創発センター研究員)
ステラ・ジブコヴァ(Стела Живкова / ソフィア大学助教授)
新免光比呂(しんめん・みつひろ / 国立民族学博物館教授)
岩谷彩子(いわたに・あやこ / 京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
輪島裕介(わじま・ゆうすけ / 大阪大学大学院人文学研究科教授)
奥彩子(おく・あやこ / 共立女子大学文芸学部教授)
濱崎友絵(はまざき・ともえ / 信州大学人文学部准教授)
高岡智子(たかおか・ともこ / 龍谷大学社会学部准教授)
齋藤桂(さいとう・けい / 京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター専任講師)
クララ・フルヴァティン(Klara Hrvatin / リュブリアナ大学助手)
阪井葉子(さかい・ようこ / 元大阪大学大学院文学研究科助教、故人)
木村颯(きむら・そう / 大阪大学大学院文学研究科文化表現論専攻博士前期課程修了)
<CONTENTS>
はじめに(伊東信宏)
●序論
南東欧におけるポップフォーク──共同と交換の歴史を概観する
イヴァ・ネニッチ
伊東信宏+上畑史 訳
第1部 東欧演歌のハードコア
●第1章
セルビアのターボフォーク──「オリエンタルなヴェルヴェット」は何色(なにいろ)か
上畑史
●第2章
ブルガリアのチャルガ──アイデンティティ、変革、グローバライゼイション
一五年後の補足──ブルガリアのポップフォークがひらいた新しいページ
ステラ・ジブコヴァ
伊東信宏 訳・構成
●第3章
西欧化のジレンマとマネレ──ゆらぐルーマニア人のアイデンティティ
新免光比呂
●第4章
マネレ、あるいは界面としてのジプシー音楽
岩谷彩子
●対論
ポップフォークは演歌なのか──あるいは日本大衆音楽の東欧演歌化のために
輪島裕介
第2部 東欧演歌の源流へ
●第5章
麗し(レーパ)のブレナのはるかな旅──ユーゴスラヴィアの歌姫
奥彩子
●第6章
「アジュ」を歌え──トルコにおけるアラベスクの誕生と展開
濱崎友絵
●第7章
東ドイツ・ロック前夜のダンス音楽「リプシ」──戦後ドイツ大衆音楽の水脈をたどる
高岡智子
●コラム1
森への誘い──フォーク・メタルにみる民族/民俗
齋藤桂
第3部 東欧演歌の周縁へ
●第8章
薄明の流星──スロヴェニアのターボフォーク、その勃興と没落
クララ・フルヴァティン
伊東信宏 訳・構成
●第9章
東ドイツのフォーク・リヴァイヴァル運動
阪井葉子
●コラム2
アルメニアのシルショ──右傾化するアルメニアのポップフォーク
木村颯
初出一覧
プレイリスト
参考文献
人名索引
執筆者一覧
<プロフィール>
伊東信宏(いとう・のぶひろ)
1960年京都市生まれ。大阪大学大学院文学研究科教授、中之島芸術センター長。専門は、東欧の音楽史、民俗音楽研究など。大阪大学文学部、同大学院修了。リスト音楽大学(ハンガリー)研究員、大阪教育大学助教授などを経て現職。著書に『バルトーク』(中公新書、1997)、『中東欧音楽の回路 ロマ・クレズマー・20世紀の前衛』(岩波書店、2009、サントリー学芸賞)、『東欧音楽綺譚』(音楽之友社、2018)、『東欧音楽夜話』(同、2021)、編著に『ピアノはいつピアノになったか?』(大阪大学出版会、2007)、訳書に『バルトーク音楽論選』(太田峰夫と共訳、ちくま学芸文庫、2019)、『月下の犯罪』(S.バッチャーニ著、講談社選書メチエ、2019)ほかがある。