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ザ・キンクスのデイヴ・デイヴィス 70年代初期の2枚の名盤からお気に入りの14曲を解説

2023/03/15 18:39掲載
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The Kinks / Muswell Hillbillies / Everybody's in Show-Biz
The Kinks / Muswell Hillbillies / Everybody's in Show-Biz
ザ・キンクス(The Kinks)デイヴ・デイヴィス(Dave Davies)は、1971年アルバム『Muswell Hillbillies』と72年アルバム『Everybody's in Show-Biz(邦題:この世はすべてショー・ビジネス)』の中から、お気に入りの14曲を解説しています。2作品を収めた50周年記念デラックス・ボックスセットの発売にあわせて、Guitar Worldg企画しています。

●20th Century Man

「レイ(デイヴィス)の曲の中で一番好きな曲の一つ。このアルバムだけでなく、全てのアルバムでも重要な曲で、現在でも通用する。とても鋭敏なトラックで、素晴らしいフィーリングを持っている。これに参加できたのは光栄だった。僕たちは“さて、どうなるんだろう”というような思わせぶりなムードを出すために、楽器をもっと控えめにしようと思っていた。そこで、スライドギターが役に立った。それによって雰囲気が大きく変わった。

『Muswell Hillbillies』の全曲に共通することだけど、スライドを多用した理由のひとつは、ノスタルジックではなく、不思議な感覚を呼び起こすから。スライドは不思議な感覚を与えてくれた」



●Skin and Bone

「キンクスらしい曲だよね。僕たちは、音楽の中にユーモアを保つようにするのが好きだった。面白いことに、今のように人々がジムで本格的にワークアウトする前のことを歌っている。みんなジムにはあまり行かなかった。だから、ダンスがメインだったんだ。ダンスをして運動する。コーラスが面白いんだ」



●Complicated Life

「何をするにしても、人生は複雑だ、ということを思い起こさせる。何が起こるかわからないと思い悩む感じを出すために、スライドを使った。僕のお気に入りの曲の1つで、シンプルでもある。時には、頑張りすぎてしまうよりも、シンプルな構成のほうが、より多くのことを伝えられることがあるんだ」



●Here Come the People in Grey

「“They're Coming to Take Me Away, Ha-Ha!”というコメディートラックを思い出しますよ(ナポレオン14世というアーティストが1966年に発表)。ヴォーカル・パートを作っているときに、そのことが頭をよぎったんだけど、あの曲には素晴らしい部分がいくつもあるんだ。

冒頭のエレキギターが支えていて、ドラムが入るところが好き。本当に良いリズムを刻む...最後のほうでスピードアップするところがある。ほんとにかっこいいよね」



●Holloway Jail

「これらの曲の登場人物は、実はすべて実在の人物をモデルにしている。(ロンドンの)ホロウェイの近くは、僕の家族の出身地。カレドニアン・ロードというエリアがある。キングスクロス方面に続く道で、2つの刑務所のそばを通るんだ。ペントンビル刑務所とホロウェイ刑務所。これは、僕たちが成長した当時の社会を反映している。

オープンピッキングとスライドを駆使して、カントリースタイル、いわゆるカントリーヴァイブを演奏することができた。ギターは何本か使った。テレキャスターはDチューニング、ストラトキャスターは1954年製の古いストラトだった。そのギターは何年も持っていたけど、もう持っていないと思う。そのギターが大好きだった。スライド・ワークの多くは、僕のマーティンDで行われた」



●Muswell Hillbilly

「アメリカーナやカントリーミュージックへの愛と好意は、僕が大家族だったからで、『南太平洋』や『オクラホマ』などの素晴らしい映画もそうだし、アメリカからの影響を受けて育った。

僕たちは成長する過程で、アメリカからたくさんの影響を受け、ギターを学んだ。カントリーのようなアメリカ音楽の影響がほとんどだった。ハンク・ウィリアムスは、スライドとフィドルを使った素晴らしいバンドを持っていた。なんて素晴らしいバンドなんだ。僕たちは幸運にも、素晴らしい音楽の影響を受けることができたんだよ」



●Traveling with My Band

「これはレイの (ツアーへの) トリビュート。好きだよ。素敵だし、自画自賛だ」



●Here Comes Yet Another Day

「面白い曲だよね。旅をしているときに起こることと非常によく似ている。このアルバムの多くは旅に出た時のことを歌っているからね。ある日はマイアミ、次の日はサンフランシスコ、そしてシカゴ、ニューヨークと、毎日新しい場所で目を覚ますんだ。面白い曲だよ」



●Unreal Reality

「旅に出ているというのは、非現実的な現実なんだ。夢の中で生きているような、でも現実なんだ。ツアーをしているだけで、非現実的な現実を味わうことができる。毎日違う場所にいて、ちょっとした悪夢のようなこともある」



●Sitting in My Hotel

「ツアーに戻り、毎日、パーティーやライヴに出る。家に戻って数時間眠ると、またツアーが始まる。ツアーの厳しさ。毎日違うけど、同じだよ」



●Motorway

「これもまたツアーに関するもう一つの素晴らしい見解。何が起こっているのかについての不気味な観察。それは本当に、本当に良いことだと思う」



●You Don’t Know My Name

「71年から72年の初めにかけて、僕は精神的につらい時期を過ごしていた。そのツアーの終盤に差し掛かった頃、それが頂点に達した。精神的にも、スピリチュアルティ的にも、感情的にも、ある意味、不自由を感じていた。精神衛生上も最悪だった。それから、自分自身の人生について、内面的な観察をしていた。

ときどき、とてもクレイジーだと感じることがある。飛行機や電車に乗りながら、あちこち駆けずり回っている。自分の正気を疑うことさえある。これは僕なのだろうか? 僕の名前を知っている人はいるのだろうか? 僕は誰なんだろう? 奇妙で素晴らしい、しかしクレイジーな世界だ」



●Supersonic Rocket Ship

「この曲には素晴らしい楽観主義があるから、特別な愛着がある。また、皮肉も効いている。その両方と、現実と機能不全を見事に融合させたものであり、同時に希望でもある」



●Celluloid Heroes

「今までで一番好きな曲のひとつ、すべてにおいて。歌詞の整理を始めたばかりの頃を覚えている。映画スターの名前と手形がスターに刻まれているというのは、とても素晴らしいアイデアで、とても感動した。舗装されたコンクリートの上に、偉大なスターたちが不滅の存在感を放っている。

面白いことに、この曲のお気に入りのヴァージョンは、アルバムに収録されていないライヴ・ヴァージョンで、前面にスタンダードなギターソロがある。うまくいけば、後日リリースするかもしれない。その時は主にマーティンを使ったんだけど、シンプルなんだよね。シンプルで効果的なんだ」