スティーヴ・ヴァイ(Steve Vai)が「あるビッグバンド」(名前を挙げていない)とレコーディングしていたとき、A&R担当者がピッキング・ハーモニクス(ピンチ・ハーモニクス ※弦をピッキングした直後に親指の側面を弦にあて「キーン」という金属的なハーモニクス音を出す奏法)に特別な違和感を覚えたことがありました。「まるで死にそうなクジラのような音だ」と言い、すべて削除するように言われたことがあるという。それに対してヴァイの反応は・・・。
ヴァイが当時のことをMusicRadarのインタビューの中で語っています。
「一緒にレコーディングしていたビッグバンドのスタジオにA&Rの人が入ってきたとき、ハーモニクスを弾いていた。僕のスタイルの一部だし、ほとんどのギタリストのスタイルの一部だよ。彼は“それは何だ”と言ったので“これはハーモニクスだよ。指でつまんで...”と言った」
しかし、ヴァイが説明をしても、このA&R担当者の心には響かませんでした。
「彼は“いや、それはやめてくれ。まるで死にそうなクジラのような音だ”と言っていた。僕は“これはピンチ・ハーモニックだ!”と言うと、彼は“じゃあ、それを外してくれ”と言っていた。アルバムの全曲に渡っていると話すと、彼は“取り除いてくれ。全部取り除いてくれ”と言っていた」
ヴァイがゲストとして招かれたとき、何が期待されていたのかは不明ですが、彼は卓越したプレイで知られており、ピッキング・ハーモニクスの演奏スタイルもそれほど驚くことではなかったはずですが、A&R担当者はそう言ったそうです。
この依頼をどう受け止めたかと聞かれたヴァイは笑みをこぼしながら「こういうとき、プロのギタリストなら誰でもすることをした」と説明しています。彼は毅然とした態度で、しかし外交的に「“Fuck you!(くたばれ!)”と、まあたくさんの言葉で答えたよ」と笑って答えています。