米国のエンターテイメントデータを収集・解析するLuminate(旧:Nielsen Music)によると、米国では2022年、アルバムのカセットテープが前年比28%増の44万本販売されました。2015年の販売本数は8万1000本でしたので、7年間で443%増加したことになります。
業界では一時的なブームだと考える人もいるようですが、市場の多くはインディーズバンドがライヴ会場などで販売しているものであり、その数はLuminateでカウントされないことが多いため、カセットビジネスはLuminateの数字が示すよりも強力だという。米ビルボード誌の特集で、トロントを拠点に、カセットやアナログレコードなどの製造・プレスを行うduplication.caの共同経営者兼社長のグレッグ・フレナーが話しています。
duplication.caは大手レーベルからの注文もあって年間100万本を出荷しているという。フレナーは「今では、一部のレーベルにとっては日常的な活動になりつつあります。着実に増えています」と話しています。
しかし、カセット市場は、予想外の需要のため、カセットの生産が追いつかなくなる可能性もあるという。この分野で働く人々は、現在の需要は2000年代半ばのアナログレコード市場に似ていると言っています。
ニューヨークのアパートでレーベル、テープヘッドシティを運営するチャーリー・カプランは「厳しいですね。ディストリビューターは、カセット用の準備が整っているわけではない。限界がある。限られたものなんだ。カセットテープ(業界)はレコードのように整理されていない。もう少し寄せ集め的なものなんだよ」と話しています。
マイ・モーニング・ジャケットなどのカセットを販売しているナッシュビルのディストリビューター、Soundlyのステファニー・フダチェク社長によると、カセットの価格は、バイヤーがどれだけ凝ったり芸術性を追求するかによって、1本3ドルから7ドル程度になるそうです。顧客は、ライナーノーツや写真を印刷した「Jカード」を加えたり、最近のスターたちのように色違いのプラスチックを使ったりすることができます。
フダチェックは、最近のブームの理由は、サプライチェーンの問題でレコードの納期が遅くなったことだと言っています。「モノがあるだけでカッコいいから」と彼女は付け加えています。
ロサンゼルスのインディーズレーベルLeaving Recordsの創設者であるマシュー・マックイーンはこう話しています。
「今でも目新しいニッチなアイテムです。カセットテープを複製するサービスは、最小ロットが50本からなので、いろいろな実験ができます。アーティストやレーベルにとっては、とっつきやすい入門編なんです」「今でもよく聞かれます。“なぜテープを作るの?屋根裏にたくさんあるけど......”と。でも、コスト的に手が届きやすいんです。それに、音質と自分らしさを加えることができるのが気に入っています」