タル・ウィルケンフェルド、ジェフ・ベックとその異次元の世界を回想

ジェフ・ベック（Jeff Beck）との共演でも知られるベーシストのタル・ウィルケンフェルド（Tal Wilkenfeld）。ジェフ・ベック・バンド時代をSpinの新しいインタビューの中で振り返り、ジェフ・ベックとその異次元の世界を回想しています。

ウィルケンフェルドは19歳のとき、ニューヨークで飛行機に乗り、英国に行き、ロンドン南東のケント州で行われていたジェフ・ベック・バンドのリハーサルに初めて足を踏み入れました。

「（ベックとの関係は）人と人がつながったときに起こる化学反応のようなものだったと思う。理由も方法も説明できないけど、それが起きた時はわかる。彼とのつながりは、他の誰ともないものだった。いま思うのは、他の誰かとそれを持つことができるのだろうかということです。

彼は間違いなく、本当にパワフルなやり方でバンドを糧にしていた。彼はドラムとベースから音楽的な刺激を受けながら演奏していた。火をつければつけるほど燃える。彼はとてもインタラクティブなプレイヤーだから、それはとても楽しいことだった。

メロディー的にもハーモニー的にも、彼は驚くほど冒険的。彼はギターをただのギターとして扱っているわけではないので限界がない。彼はヴォーカリストとしてアプローチしている。彼は、実はシンガーなのです。それは単にメロディックな意味だけでなく、コンセプチュアルな意味でも。彼はレコーディングを聴くとき、言葉を聴いていた。音楽も聴いていたけど、彼にとっては、シンガーが何を言っているのかというメッセージ、意味が最も重要で、歌詞を第一に考える楽器奏者でありたいと思っていた。

彼は面白い人だった。それは彼が多くの人に見せていた面ではない。彼は公の場ではとても静かな人だったけど、とても親しい人たちとは、信じられないほど、おちゃめで面白い人でした。それが彼のフレッシュさを保っていたのだと思う。彼は音楽に対しても、人生に対しても、何でも笑い飛ばし、冗談を言うような子供のような感性を持っていた。

私は、彼と彼の奥さんのサンドラから、娘のように扱われました。イギリスで少し一緒に暮らし、彼らのアパートに泊まり、料理の仕方を少し教えてもらいました。まるで家族のような雰囲気だった。とてもよくしてもらった。サンドラは本当に素晴らしい人です！　2階でリハーサルをしていると、彼女が入ってきて、“ねえ、みんな、1分くらい前に弾いた2番目のヴァース（※歌のサビに入るまでの導入部分）かな？　えーと、あなたが弾いたサブコード（代理和音）なんだけど、なんだかメロディーの邪魔にならないかな”とか、“ジェフ、あなたのD弦が少しフラットになっているわね”とか言っていた。彼女は耳が良くて、ジェフは彼女の耳が大好きだった。ジェフは彼女の意見を聞くのが大好きだった。ジェフは音楽理論を話さない。9/8だろうが15/16だろうが、彼にとってはどうでもいいことなんです。“それを弾いてくれれば、僕はその上で弾くよ”なのです。

彼の隣には白いストラトが置いてある。彼はそれを手に取ると、まさにジェフ・ベックな音を出す。私のテレでもジェフ・ベックの音がする。以前、フェスティバルでこの古いおもちゃのギターを手に取ったんだけど、その音はジェフ・ベックだった。それをローランドの小さなキューブアンプで鳴らしてもジェフ・ベックの音がする。全ては彼の指と意思の中にあるんです。

彼はとても頭がよくて、信じられないほど直感的で、洞察力があった。彼はあまり多くを語らなかったけど、すべてを感じ取っていた。

私たちのつながり、それは誰かに恋したときのようなものです。なぜその人を好きになったのか、自分でもわからない。合理的に考えて、“ああ、この性格だから、この外見だから、こういうことが好きだから”と言うことはできるけど、それは単なる知性の話です。相性は説明できないものです。ミュージシャンが一緒に演奏するときも、同じことが言えます。それがあるかないかです。

情熱、ユーモア、つながり、弱さなど、あらゆる要素が組み合わさって、あの瞬間を作り上げたのだから、あのような極端な強さになることは二度とないでしょう。あの化学反応は作ることができない。作り出せるものではありません。人間の手に負えない。別世界のものなのです」