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ボブ・ディラン『Time Out Of Mind』の起源をプロデューサーのダニエル・ラノワ語る 「Beckをどう思う?彼が作るようなアルバムを作りたいんだ」

2023/01/25 17:54掲載
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Bob Dylan / Time Out of Mind
Bob Dylan / Time Out of Mind
ボブ・ディラン(Bob Dylan)の90年代の名盤『Time Out Of Mind』(1997年)。その起源をプロデューサーのダニエル・ラノワ(Daniel Lanois)が英MOJO誌で語る。ラノワによると、ディランに最初インスピレーションを与えたのは、Beckの『Odelay』でした。最終的には失敗に終わったものの、当初は曲の断片を作り、後から「ビースティ・ボーイズやBeckのように」完全な曲に仕上げるというアイデアに取り組んでいたという。

英MOJO誌は『Time Out Of Mind』の制作過程を紹介する最新号の特集の抜粋を、同誌のサイトで公開しています。

1996年の初秋、プロデューサーのダニエル・ラノワとエンジニアのマーク・ハワードが、ホテルの部屋でボブ・ディランとミーティングした際、ディランはこう話したという。

「Beckという子をどう思う? 彼が作るようなアルバムを作りたいんだ」

その年の6月、Beckは『Odelay』をリリースしていました。ヒップホップのループやポップなメロディを用いたこの作品は、過去を再利用し、過去を振り返りながら前進する斬新な方法でした。

ラノワは、ニューヨーク出身のトニー・マングリアンと共同プロデュースしたアルバム『Fever In Fever Out』で、ルシャス・ジャクソンと最近仕事をしていたので、この方法についても経験がありました。

ホテルでの打ち合わせの際、ディランはブルースとR&Bの代表的なアーティスト、チャーリー・パットン、リトル・ウィリー・ジョン、リトル・ウォルター、スリム・ハーポの曲をリストアップして渡していました。

このリストアップされた曲と、Beckについての話を聞いて、ラノワはあるアイデアを思いつきました。曲の断片を作り、後から「ビースティ・ボーイズやBeckのように」完全な曲に仕上げるという考えでした。

ラノワは、ルシャス・ジャクソンで一緒に仕事をしたトニー・マングリアンの古いスタジオに行き、ラノワとマングリアンはディランのプレイリストに合わせてドラムを叩き、マングリアンのローランド・サンプラーで一番良い8小節か16小節を取り出す作業を行います。

その後、マングリアンがドラムを叩き、ラノワがベース、ディランがピアノとギターを演奏して作業を進めますが、ディランはBeckの哲学や完成された作品を気に入っていたとしても、彼自身はそのプロセスを楽しまないことをラノワたちは知りました。マングリアンは「彼は10分も座ってループが曲の形になるのを待つのは嫌だった」と笑いながら振り返り、「彼はただ演奏したかっただけなんだよ」と付け加えています。

抜粋は「結局、ディランはやらなかった」で終わっています。

『Time Out Of Mind』のレコーディングは最終的に、多くのミュージシャンに同時に演奏させる方法が取られ、6人のギタリスト(ディラン自身も含む)が参加したのに加え、11曲中6曲でジム・ケルトナーとブライアン・ブレイドのツイン・ドラムがフィーチャーされています。