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ユーリズミックス『Sweet Dreams (Are Made of This)』発売40周年、デイヴ・スチュワートが逸話を語る

2023/01/05 16:58掲載
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Eurythmics / Sweet Dreams (Are Made of This)
Eurythmics / Sweet Dreams (Are Made of This)
ユーリズミックス(Eurythmics)が1983年1月4日にリリースした通算2作目のスタジオ・アルバム『Sweet Dreams (Are Made of This)』。発売40周年を祝して、デイヴ・スチュワート(Dave Stewart)がこのアルバムについての逸話を、米フォーブス誌のインタビューの中で語っています。

タイトル曲「Sweet Dreams (Are Made of This)」について「誰かが“Sweet Dreams、40年だよ”と言うと“すごいな”って思うよ。車に乗ると、なぜか3回に1回はユーリズミックスがラジオから流れてくる。コーヒーショップにいても、40年経ってもずっと流れているんだ。それは人、デュオ、バンドに関係すると思うけど、僕は本当に曲の力だと思っているんだよ。曲は王様、本当に」と話しています。

1981年のデビューアルバム『In the Garden』があまり良い出来ではなかったため、スチュワートとアニー・レノックス(Annie Lennox)は『Sweet Dreams』のアルバム制作において、DIY的なアプローチを採用しました。まず、プロジェクトの資金調達のために銀行から融資を受けました。スチュワートはこう振り返っています。

「アニーは、なんだかちょっとおどおどしていた。僕たちは変な格好だから、銀行も相手にしてくれないだろうと思った。銀行の担当者にとっては、かなり斜め上のことをお願いしようとしていた。こんな机が欲しい、こんな8トラックテープマシンが欲しい、こんなシンセサイザーが欲しい、これが必要だ、あれが必要だ、というようなことを話していた。すると、彼はそれを全部聞いてくれたんだ。彼は“ああ、なるほどね”って感じだったよ」

融資を受けると、デュオはロンドンのチョークヒル地区にある額縁工場の上の倉庫スペースに自分たちの8トラック録音スタジオを設置しました(セッションは後に北ロンドンのチャーチ・スタジオに移る)。ゲスト・ミュージシャンが多数参加した『In the Garden』とは対照的に、『Sweet Dreams』は主にレノックスとスチュワートだけで構成されていました

「ザ・セレクターのベーシスト、アダム・ウィリアムスは、僕らが手に入れるべきもの、そしてそれをどう組み合わせたらいいかを教えてくれた。本当に助かったし、いくつかの曲は共同プロデュースしてくれた」

「全体がどう動くか理解した後は、まるで悪魔のようだった。一晩中起きて、時には一人でいることもあった。額縁工場の上だったから不気味だった...プロデュースとレコーディングの技術に夢中になりすぎて、全く知らない人たちと実験をしていたんだ、バスカーでも誰でもよかった。夜中の2時までそこで奇妙な電子音を作っていたよ」

「寝室でのDIYの始まりだった」と、スチュワートはかつて語っています。「8トラック録音できるものがあって、ドラムマシンは道具として使えるようになり始めていた。僕たちは“2人で何でも作れるんだ”と思った。幸いなことに、アニーと僕はクラシック音楽からR&B、サイケデリック音楽まで、多くの分野をカバーしていた。実験してみたら、面白いものができたんだ」

このような実験から生まれたのがタイトルトラックです。スチュワートは「Sweet Dreams (Are Made of This)」の誕生をこう振り返っています。

「アニーに苛立ちを感じていた時期で、それにカップルとしても別れてしまった時期だったから、憂鬱なムードがあった。アニーは(スタジオの)床に横たわっていて、僕はこの奇妙なドラムコンピューター(MkI Movement Systems MCS)をいじっていた。アダムと僕は、これを作っている人のフロアにいた。当時は他のドラム・コンピューターとは違うものだった。そして、あのドラムのようなビート、ブーン!という音を出すようになった。

最初のドラムは、タムタムのようなもので、バスドラムとほぼ同じ高さにチューニングしたんだけど、それでもあの音が出た。それから、SH-01というモノフォニック・シンセサイザーも演奏した。アニーは飛び上がって別のシンセサイザーを弾き始め、そのスイッチを入れた。二人とも“なんてこった、これはすごい音だ!”と思ったよ。

それからアニーは“Sweet dreams are made of this...”と歌い始めた。15分後に完成したんだけど、真ん中がなかった。その時、僕は“ちょっと待てよ、セクションがあるはずだ”と言った。この曲はディストピア的な曲だから、“Hold your head up, keep your head up”なんて、この世の終わりじゃないみたいな感じで歌ったらどうだろうって言ったんだよ」

『Sweet Dreams』のレコーディング・セッションでは、サム&デイヴ「Wrap It Up」のエレクトロポップ・カヴァー、「Jennifer」、「Love Is a Stranger」も話題になりました。

スチュワートは「Love Is a Stranger」について、「イギリスでは“Sweet Dreams”の前にリリースされた。“Love Is a Stranger”はシンセサイザーのように聞こえるけど、その多くは僕がギターでとても奇妙なペダルを通したもので、とても奇妙な音の混合物なんだ。一つはトレモディロと呼ばれるもので、トレモロに少し似ているけどもっと奇妙なものなんだ」と話しています。

アルバム『Sweet Dreams (Are Made of This)』から最初のシングル3曲「This Is the House」「The Walk」「Love Is a Stranger」はイギリスのチャートで上位に食い込むことはありませんでした。しかし、4枚目のシングルとしてリリースされたタイトル曲は、スチュワート曰く「門戸を開いた」ものでした。

「イギリスはアメリカとは違うんだ。イギリスとアメリカでは、リリースされる時期が違う。“This Is the House”や“Love Is a Stranger”は、すべてイギリスでリリースされ、『Sweet Dreams』へと発展していった。ところがアメリカでは、ラジオのDJが流していたことで“Sweet Dreams”が知らないうちに爆発的にヒットしていたんだ」

「Sweet Dreams (Are Made of This)」の人気は、有名なミュージックビデオによってさらに強固なものになりました。

「どうなってるんだ? 1983年に初めてこの映像を見たとき、視聴者はどう思っただろう」とスチュワートは今日、推測しています。「僕たちは、音楽的な解釈だけでなく、視覚的な解釈についても、自分たちが何をしているのかを理解していた。それが多くの人の注意を引いたんだと思う。“僕たちの曲なので、ビデオ用に演奏しているところを撮影しよう”だけじゃなかった。“とてもシュールな方法で解釈しよう”という感じだったんだ。

そしてMTVがやってきて、彼らのプレイリストに“Sweet Dreams”が入った。突然、どこにでも流れるようになった。アメリカでツアーをすることになったとき、タッチ・ツアーだったと思うけど、どこに行っても“Sweet Dreams”が流れていた」

ユーリズミックスと「Sweet Dreams (Are Made of This)」の出現は、一時アメリカを席巻したイギリスのシンセポップの爆発と重なり、1990年代初頭に解散するまでの間、デュオにとって実り多い時期となりました。

「アルバム『Sweet Dreams』の後、曲が次々と生まれた。“Here Comes the Rain Again”、“Would I Lie to You”、“Missionary Man”、“Thorn in My Side”など、次から次へと曲が生まれた。当時は、3週間かそこらでアルバムを作ったり、ツアーに出たり、あれをやったり、これをやったりと、ても速いスピードで進んでいた」と振り返っています。

2022年11月、再結成したユーリズミックスはロックの殿堂入りを果たしました。ロサンゼルスでの殿堂入り式典で、「Would I Lie to You」、「Missionary Man」、「Sweet Dreams」のメドレーを披露しました。スチュワートはその経験について語っています。

「素晴らしかった。アニーはスコットランド人、僕はイギリス北東部出身だから、このイベントがどれほど大規模なものになるのか、最初はわからなかった。バックステージは、まるで巨大なお祭りのようだった。みんなとても仲良くやっていた。アニーと僕は、とても楽しい時間を過ごした。リハーサルも本番もすべて順調に進んだ。アニーはエネルギーの塊で、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたし、バンドも素晴らしかった。僕たちの間には電気が通っているような感じで、アニーと僕は充電された。そのような夜であったため、誰もが素晴らしい気分になっていた。尊敬する仲間たちが自分のことを話してくれて、しかも何年も前から知っている人たちだから、自分が経験してきたことを全部知ってくれている、そんな素晴らしい夜だったよ」